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「目が合う」のは好意の証?

「あの人、いつもこっち見てるの」
「しょっちゅう目が合うのよね」
小学生から大人に至るまで、こういう発言をする女性というのは一定数いるものです。
話の流れとして、聞かされる側は「あなたに気があるんじゃないの?」と言わざるを得ませんが、本当にそうなのでしょうか?

男性も女性も、好きな人のことは当然見ます。
見ますが、見られている側は意外と気が付かないものです。

昨年11月、こちらの雪乃さんともうひとり同年代のゆかりさんという女性と3人で女子会をしました。

宴もたけなわという頃、私たちの話をさえぎるように雪乃さんがテーブルへ身を乗り出し、声をひそめてこう言いました。

「ねぇ、そっちの席の人、朝霧さんかゆかりさんの知り合いじゃない?」

雪乃さんが指さすのは、私たちの隣の席。しかし、間に衝立があるので知り合いかどうかなんてわかるはずがありません。

「さあ……?」
「衝立で見えないし」

と、私とゆかりさん。

「さっきから、黒い革ジャン着た人が何回もトイレに行くの。そのときにすごくこっち見てくるから、知り合いなのかと思って」

説明すると、その日は私と雪乃さんが壁際に座り、その向かいにゆかりさんが座っていました。
隣の席の人たちがトイレに行くときは、まずゆかりさんの後ろを通り、そのあと私たちの席の横を通ります。
しかし、いくら雪乃さんに「何回もトイレに行く」と言われても、私とゆかりさんは「?」。自分たちの話に集中していたので、誰かがここを通ったことすら覚えていません。
そして、それから10分か20分ほどたった頃。

「あの人!」

雪乃さんが小声で言って、私の袖を引っ張ります。
ゆかりさんの背後を通る、革ジャン男性の顔を確認します。
彼が私たちの横を通るとき、ゆかりさんもチラッと横目で彼の顔を確認します。

「ね、知り合いじゃない!?」
「いや、知らない」
「私も知らない」
「えー!だって、さきから何回もトイレ行くし、そのたびにこっち見てるんだよ」

おそらく彼は、ただお酒を飲んでトイレが近くなっていただけなのでしょう。
隣の席は男性ばかりだったようなので、女性3人のこちらの席がちょっと気になったというのは、もしかするとあるかもしれません。
もうひとつ可能性としては、雪乃さんがあまりにもチラチラ自分の方を見るので、彼の方こそ「知り合いだろうか?」「なぜこっちを見るんだろう」と気にしていたということも考えられます。

つまり、「やたら目が合う」「こちらを見ている」と思う人は、ただ自分の方が見ているにすぎないのです。自意識過剰なんですね。
自分が相手の方を見ていなければ、どれだけ相手から見られていても気付かないものです。
昔よく家族で出かけていた頃は、私がひとりで先を歩いていると、夫や子どもたちから「今の人、お母さんのことすごい見てたよ」と言われたものです。
相手は男性だったり、女性だったり。どういう理由で見ていたのかはわかりませんが、自分で「見られている」と思ったことは一度もありませんでした。

そして、「オレ、いつも朝霧さんのこと見てるから!」と自ら暴露した、こちらの吉本さん。

この頃、私はもともと肩甲骨のあたりまであった髪の毛を、半年かけて少しずつ肩の辺りまで短くしていたところでした。
本当に少しずつ切っていったので、私の髪の毛が短くなっていることには誰も気付きません。吉本さんだけでした。
この吉本さんと別の職場で再会したときにも、前髪と毛先を少し切った直後に、
「あれ…? 髪切った?」
と声をかけられました。
彼と一緒にいた男性がチラッと私の方を見たあと「よく見てるな」と言うと、吉本さんは「いつも見てるからな」と、ちょっと照れながら。

多分、本当にいつも見ていたんだと思います。私のことを。
それでも、私は「見られていた」自覚は皆無でした。
ただ、ふと気付くと彼が視線の先にいて、こちらを見ていたということは何度かありました。
だけど、目が合うと必ず挨拶してくれたり、声をかけてくれたりするので、「目が合う」とか「見られている」という意識はなかったんですね。
そもそも、彼のように気持ちが前面に出るタイプは、見ていることを隠そうともしないし、とにかくわかりやすいため、「目が合う」以外にも好意を計る物差しはいろいろあるわけです。

それでは、好意を隠すタイプの男性や、まだあなたとあまり親しくない男性の場合はどうでしょうか?
もちろん、好意のある相手を密かに見ているのは間違いありませんが、こういったタイプは気持ちを悟られたくないという思いが強いため、バレないようにこっそり盗み見ます。
だから、一度や二度うっかり目が合ってしまうことはあっても「あの人、いつもこっち見てる…」というほど頻繁に目が合うことは、まずないのです。

私も、好きな人のことはどうしても見てしまいますが、それで目が合ったという経験はほとんどありません。
目が合うほどジーッと見るときは「あの人、知り合いの〇〇さんに似てる」と思って、つい目を離せなくなったときくらいですね。

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