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「チャラ男はモテる」の嘘

チャラ男。
ちょっと古い言い方をすると、遊び人。
甘い言葉で女の子を気分よくさせるのが、とても上手です。
甘い言葉だけでなく、ちょっとエッチなことを言って場の雰囲気を盛り上げるのも上手です。

この記事の中の、同窓会シーンに登場するT君。
彼はイケメンではありませんが、典型的なチャラ男君。小学生の頃から、中年になった今も変わりません。

実は、この同窓会の時。
彼は私に向かって「きれいになったな」と言ったあと、こう言いました。
「ね、もう少し下向いて」
その時、私は少し胸元がゆるめのブラウスを着ていたんです。思わず動揺した私に向かって、T君。
「ちょっと嬉しいでしょ? こういうこと言われると」
ああ、いつもこの手で女の子を口説いてるんだなと。

そして、こちらに登場する仕事仲間の片桐さん。

彼も「君のこと、こういう目で見てるよ」的な、ちょっとエッチな発言が得意です。還暦に近い、年上の女性に対してもサラリと性的な話題を振ります。
そのあと、彼がこう言ったのも覚えています。
「女の人は、何歳になっても女性として見られた方が嬉しいんだよ」

そう、彼らチャラ男はわかっているんです。女性の多くが「女性として見られる」のを喜んでいることを。少なくとも、悪い気はしていないことを。

「可愛いね」
「キレイだね」
「スタイルいいね」

女性は基本的に、こうして褒められることが大好きです。もちろん、私も好きですよ。
結果的に、褒め上手で女性をドキッとさせることが上手なチャラ男は、女性の影が絶えません。
だけど、これってモテているのでしょうか? 違いますよね。

「女性を口説くのが上手い」

ただ、それだけなのです。
こういうチャラ男の手口に引っかかるのは、同じようなタイプの女性ばかり。

・お手軽な女(同類のチャラ子)
・モテない女性(チヤホヤされることに慣れていない)
・若くて短絡的な女の子(押しに弱い)
・典型的なダメンズウォーカー(言わずもがな)

確かに、若い頃はチャラい男、悪い男がカッコよく見えたような気がします。
だけど、年をとるとわかってきます。チャラ男はモテているようで、実はたいしてモテていないのだということ。
実際、彼らは男性としての魅力に欠けるのです。ワンパターンだから。

男性は女性のギャップに弱いといいますよね。「昼は淑女、夜は娼婦」とは、よく言ったもの。
これ、実は男性だけではありません。女性にも同じことが言えるのです。

チャラ男がいくら下ネタを連発しても、エロい男がエロいことを言っているだけ。なんの意外性もありませんし、なんの想像力も掻き立てられません。
だけど、日頃エロいことなんて全然考えていなさそうな男性が、ふとした拍子に見せる男の顔。これに、女性は弱いのです。
少なくとも、私は弱い。

最近、こんなことがありました。
1年ほど前から一緒に仕事をしている、私より8歳年下の佐伯さん。男同士で雑談している姿は時々見かけるものの、基本は黙々と仕事をするタイプ。
後輩には厳しく、先輩や上司にはとても礼儀正しい、真面目な人です。
私はごくたまに仕事の話をするくらいですが、
「こんなことお願いしてすみません」
「ありがとうございました、大変だったでしょ?」
と、とても丁寧。悪く言えば、他人行事。
私に向かって下ネタを吐く人に対しては、相手が年長者であろうと、
「それセクハラです」
と、ビシッと制止する、防波堤のような役割も担っています。
若くて可愛らしい女性が「佐伯さんって素敵ですよね~」と愛想を振りまいても淡々としているし、

(この人は女性に興味がないのだろうか?)

というくらい、男の顔を見せないのです。

先日、佐伯さんの会社の懇親会に参加した時のことです。
話の流れで、社内の別のプロジェクトの担当者から「朝霧さんに、うちの仕事もお願いしたい」という声がかかったこと。しかし、佐伯さんと上司のFさんの判断で、その話は勝手に断ってしまったと聞かされました。

「その担当者がウチのオフィスに来た時に朝霧さんを見かけたらしくて、ウチもあの子に手伝ってほしいって言いだしたんだ。
でも、なんて言うか、向こうのオフィスの雰囲気はウチとは違って、朝霧さんにとっては、あまり気分のいい環境じゃないだろうと思うんだ」

と、言葉を選びながら説明するFさん。言わんとすることは、なんとなくわかります。
すると、佐伯さんが私の目をじっと見ながら、ひとこと。

「ぼく、朝霧さんのこと大好きなんです。だから、守ってあげたいんです」

……。

佐伯さんの発した言葉を理解した瞬間、久々にアドレナリン大放出。

日頃、まったく女性に(=私にも)興味なさそうな佐伯さんからの、まさかの「大好き」発言。
年下の男性からの「大好き」という可愛い言葉のチョイスと、「守ってあげたい」という男らしい言葉のチョイス。このギャップ。
しかも、ひと足先に帰る私を店の外まで見送ってくれて「朝霧さん、今日は来てくれてありがとうございました!」と、本当に嬉しそうに笑った佐伯さんが、もう可愛くて。
それまでは、単なる「仕事仲間の佐伯さん」だったのが、一瞬にして「年下の男の子」(by キャンディーズ)。

だけど、翌週。仕事場で会った佐伯さんは、いつもどおりの「仕事仲間の佐伯さん」でした。このギャップ。もうしばらくは、「年下の男の子」を引きずりそうです。
チャラ男に同じこと言われても、きっと「ああ、そうですか。それはどうもありがとう」で終わりなんですけどね。

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