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怖かった初めてのサウジアラビアでの出来事とかみ合わない会話

"中東を好きになったのは何故だろう”のテーマから ちょっと離れて。

”中東って怖い”と漠然と思っている日本人は多いようですが、実際、怖かった話。しかし、これは 1点を除いて、日本で起こっても同様に怖いという話です。加えて、中東は怖くありません。と付け加えておきたい。

初めてのサウジアラビア出張は、これまで中東担当をしていた元上司との二人旅でした。厳格なサウジアラビア。一度は出張をあきらめかけたほど、女性の私が、且つ、扱い商品も女性色が強いわけでもなく、商用ビザをとるのは大変でした。
行く準備だけで大変
行くこと自体が大変 
これを何とか乗り越えて入国したサウジアラビア。

あるお客様が、初めてのサウジを歓迎して、最初の2日間をプチ旅行に当ててくれました。(もちろん、この計画は元上司には内緒にしてました)

お客様の家族、奥さんと当時の末っ子の男の子、私たち日本人二名で 旅先
に向かいました。
砂漠の中の舗装された道。 並行する道はかすかにしか見えない。
時速200キロで走る車。前も後ろも車は見かけません。

途中の観光は、休憩を含め、かすかに緑が見える場所、つまり水が湧き出ている。ラクダとジプシーの出会い。ぽつんと立つ建物も、何かよくわからない。影がないので、車のバンを開けて、車中でサンドイッチと珈琲です。
かすかに見える緑(草)と、つとそびえたつ1本花を、珍しがって、お客様は、息子と一緒に写真を撮っていました。

物にあふれた自分の生活を見直せと言われているような世界です。これをいくつか感じつつ、18時過ぎには 宿泊ホテルに到着しました。

ホテルといっても、日本でいうコテージのようなもので、1階しかありません。Vの字に部屋が配置されたそのホテルのロビーでは、制服を着た、痩せた人たちが10名弱、レセプションと話したり、外と中を往来。
疲れを癒したい私たちは、夕食を共にする時間を決め、各部屋へ入りました。女性の私は、お客様家族と、男である元上司の部屋から遠く離れた、一番端の部屋、Vの先っちょです。
部屋はつつましく、ライトを灯すものの 目を凝らさないと見づらい程度の明るさで、窓は小さく、外を見ると、立てかけられた枯れ木と夜の闇で 殆ど何もみえませんでした。暗さに慣れていない目でテレビのリモコンを探し、オンにしても、アラビア語の番組だけしかありません。

夕食を終え、つと、お客様が 神妙な面持ちで話始めたのが、恐怖の始まりです。
”近くで事件があり、2人が殺された”。
ロビーで見た制服の人たちは、地元警察であり、犯人を捕まえるべく、様子を見にきていたのと、宿泊客を含め、ホテルの従業員も、外に出るなという指示を伝えに来ていたのだと 元上司と私は知らされました。

想像してください。砂漠で身を隠す処はないわけで、ホテルの建物自体が目立ちます。そして、夜です。
こういう場合、逃げている犯人がホテルに紛れるのは確立として低いものの、恐怖で動揺が始まった私は、”いや、その裏をかいて、ホテルに来るかもしれない” とか、”追い詰められた場所がこの近くならホテルに入りこみ、人質を取るかもしれない” とか、、想像満載になりました。

制服の人たちが警察だと認識できなかったのは、痩せこけている事以外に、パトカーを見かけなかったせいでした。想像ですが、パトカーがライトやサイレンをつければ、広い砂漠で目立ち、簡単に犯人に見つけられて、逃げられます。

お客様の話は、私たちを気遣って言葉少なく、最低限の事を伝えようとしたのですが、私は疑問を持ちました。
”どうやって、警察が、殺人を発見したのだろう。この広い砂漠で”。
すると 元上司も同じだったようで、お客様に尋ね始めました。

”何があったの?”
”砂漠でキャンプをしていた。”
砂漠でキャンプをする事と事件が結びつかない私たち。

”キャンプは砂漠でしちゃいけないわけでもないよね?
我々も昼間車を停めて手作りサンドイッチを食べたし”

”キャンプはいいけど、夜、暗くなったら中に入れと言われていた”
あ~、少し合点が。

夜にキャンプをするなと言われていた事は、お客様にはポイントではなかったようです。言われていたことを守っていれば事件は起こらなかったとも限らないわけで。。。しかしかみ合わない。

すると、
”何か喧嘩になって、刺されたようだ。二人も亡くなったようだ。”
夜でなくても、キャンプをしていて、現地の人と喧嘩になれば、こうなる と言いたかったのでしょうか。 

事件の顛末は 少しわかってきたけど、疑問は消えません。
刺されて亡くなったなら、なおさら、警察はいつ気づいたのだろう。
刺された方が 助けを求めて偶然誰かと会えたのだろうか。。。
元上司も どのように聞けば 思う回答が返ってくるのか 迷いながら、
”被害者は、携帯で警察を呼べたんだな?” と想像を働かせて聞きました。

”他の人たちが逃げて、警察に通報したんだ”
あ~~~ そういう事!つまり キャンプで刺された二名以外にもメンバーがいたということでした。

中東ではかみ合わない会話がビジネスでも よくあります。
なんで、 「それ」と「これ」が結びつくんだろう? と。
ひも解くには、想像を働かせて質問するのが早いというのは、長年中近東諸国とお付き合いをした学びの1つです。

夕食を終え、それぞれの部屋に戻りましたが、私は動揺が大きくなり、恐怖に代わりました。
日本にいる上司に電話をし、怖いですと訴えました。
上司は、”元上司の部屋に行くことしか言えない” と。
この当時、上司は、中東を全く知らなかったので、そんな事をすれば、どうなるのか考えていなかったようです。
姦通罪で牢獄です。
これほどの事で、、と思われる方もおられると思うので記しますと、翌日、元上司と私が夫婦ではないと知ったお客様の奥さんは、叫び声をあげ、驚愕しておられました。 これまでの同国では、結婚した女性と独身の男性が一緒に外でお茶をしても姦通罪。アラブ人女性が何かのひょうしで転び、それを親切に他人の男性が助けようと手を出せば、女性の夫や身内に殴りかかられる可能性があり、文句も言えない。 という事情です。

私は、一人でいることを決め、携帯2台を身近に置きました。先ほどの窓。外から中を見られないように 部屋のライトを消し、ベッドに横になるしかありませんでした。服は着替えず、入浴もしませんでした。

夜中12時過ぎ、一番怖い思いにかられたのは、携帯電話のアンテナが、2台とも消えたことです。犯人の逃亡を補助できないようにするため、地区一帯の通信電波が切られていました。

怖い思いは、人それぞれ違うと思いますが、翌日名所観光場所で、お客様が手配したボディーガード2名の車と落ちあい、半日を過ごしました。
ボディーガードがつくなんて。 このボディーガードは地元警察と異なり、体のがっしりした、背の高いイケメンたち。

そして帰路につく、砂漠の中の一本道に入り、お客様はボディーガードとの連絡を最後に、言われた道を突っ走ることにしたようです。
当時は分かりませんでしたが、サウジアラビアの色んな側面が分かる2日だったと思います。 

怖い思いだけではなく、名所は素晴らしい物でした。
あの風景は いつでも目の前に浮かびます。















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