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190522 はやぶさ2記者会見記 その1

はやぶさ2は、16日に低高度運用を中止した。中止理由は当日中には発表されず、僕はnoteでその原因を考察した記事を書いた。

この考察は、あくまでも考察で、「運用を中止したのは、たぶんこんな理由ではないか」ということを書いただけ。今回の記者会見で、その理由も明かされるのではと、期待して臨んだ。

その期待通り、今回の記者会見では、まず、16日の低高度運用が中止された理由が明らかにされた。中止の原因は、推測の通り、レーザー高度計(LIDAR)の不具合だった。

なぜ、LIDARに不具合が起きたのか。実は、今回、LIDARには新しい設定が加えられていた。それは、「高度50mに来たら、受信機の感度を落とす」という指令だ。今回は、その切り替えをした際にノイズが発生したために、正確な高度測定ができなかった。LIDARは高度の測定結果をはやぶさ2の中央制御系に伝えるのだが、一瞬、高度6kmと伝えてしまったために、中央制御系は異常を感じ取り、運用中止の判断をしたのだ。

LIDARは、レーザー光線を使ってはやぶさ2とリュウグウの間の距離を測る装置。はやぶさ2から発射されたレーザー光線が、リュウグウの表面で反射され戻ってくるまでの時間を測定することで、距離を測るしくみになっている。つまり、距離の測定には、レーザー光線の往復時間が正確に測れていれば問題ない。

それでは、なぜ、わざわざ感度を下げる必要があったのだろうか。LIDARは、反射光の戻る時間によって距離を測定すると同時に、反射光の強度も測定している。この強度のデータをうまく処理をすると、リュウグウの表面の性質を知ることができるらしいのだが、そのあたりの話は別の機会にまとめたい。

通常、LIDARの感度は自動的に調整されているのだが、2月に実施された1回目のタッチダウンのときに、急にレーザーの反射光の強度が高くなったそうだ。なぜ、そうなったかというと、レーザー光線がターゲットマーカーに直接、当たったからからというのだ。当然、これは予想外の出来事。プロジェクトマネージャーの津田雄一さんは、「当初は、以下に精度がよくても、そういう確率は低いだろうと思っていましたが、ターゲットマーカーにあたった形跡があるので、念のために受信感度をあえて下げる操作をおこないました」と説明する。

1回目のタッチダウンのときには、ターゲットマーカーによってレーザーの反射光の強度が上がったのが高度の高い場所だったので、あまり大きな影響はなかったが、2回目のタッチダウンのときに、低高度で同じようなことが起きてしまうと、はやぶさ2が混乱してしまう恐れもある。それを避けるために、今回、高度50mでLIDARの受信機の感度を落とす操作を入れて、低高度運用を実施したのだ。

ただ、今回の低高度運用では、この変更が裏目に出た。高度を下げながら、感度の切り替えをしたところ、はやぶさ2が一瞬、高度6kmと間違える事態になってしまったということだ。LIDARによる距離(高度)測定は、レーザー光線が返ってくるまでの時間を測定すれば事足りるが、強度からも距離の測定をやろうと思えばできる。リュウグウに近づけば、反射光の強度は強くなるので、受信機の感度を弱めたことが、はやぶさ2自身がうまく認識していなければ、レーザーの反射光の強度が弱くなったことで、高度が高くなったと誤認識したとしても、不思議ではない。

運用チームでは、どのような手順で感度を切り替えたら、高度の誤認識を起こさないかという手順を確認したと言っていたので、今後は、同じ理由での運用中止はなくなるだろう。

まだ、記者会見の話は続くのだが、かなりの量を書いてしまったので、まずはここまでにして、続きは次のnoteに書くことにする。

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