【速報】マクロンのNATO脳死発言

フランスのマクロン大統領の「NATOは脳死状態だ」との発言を巡り、筆者のTwitterでフォローしている欧州の安全保障クラスタが騒然となっています。多くはマクロンの(こうしたヴィジョンに基づく)外交姿勢が欧州安全保障に重大な悪影響を及ぼすのではないかと懸念しています。米国が欧州から完全に出ていくのが確定していない段階でこうした外交政策をとるのは実際にNATOの安全保障システムに重大な悪影響を及ぼす可能性があります。単なる発言ではなく、マクロンはこのようなヴィジョンに基づき実際に外交政策を行ってきた。北マケドニア、アルバニアのEU入り加盟交渉の見送り、対露宥和など今まで仏が取ってきた外交政策がこうしたヴィジョンに基づくものならば、今後欧州内部での安全保障政策を巡る対立が起きる可能性があります。とりわけ、現状維持を基本政策とし外交を行っているドイツとの協調関係が損なわれる可能性がある。

さらに、これはより重要なのですが、仏主導による西欧諸国のみで欧州安全保障政策を行った場合、欧州東部に位置してロシアの脅威に敏感になっている小国群を有効に守るための軍事プレゼンスが必要になりますが、これが可能であるのか。可能でない場合、最悪ロシアとの宥和と並行してこれら諸国の「切り捨て」を行う可能性はないのか。

米国の欧州撤退が現実のものにならず現状のまま欧州に関与し続ける場合でも仏のこの姿勢は問題となります。例えばポーランド、バルト三国は米国のプレゼンスを非常に重視していますが、マクロンのこうした独自政策はこうした安全保障システムに悪影響を及ぼす可能性が出てくるでしょう。筆者のTwitterのTLの欧州安全保障クラスタでもこうしたことを懸念する声が上がっています。

米国が出ていかなくとも仏が独自政策をもって既存の欧州安全保障システムに悪影響を及ぼすのであれば、以上の様なことから欧州東部に位置する小国群はそれぞれ生き残りをかけた政策を模索せざるを得ません。北欧・バルト三国・ポーランドは独自の安全保障機構を構築する可能性がある(実際北欧・バルト・V4の外交的枠組みはあります)。ハンガリーはよりロシア、中国、トルコに接近し(今現在トルコ大統領がハンガリーを訪問中です)、NATO加盟国でもEUの一員でもないセルビアはもさらにこれら諸国に接近するでしょう。セルビアとロシアは合同軍事演習を終えたばかりで、かつS-400などロシア製の兵器導入に前向きです。EU加盟交渉からはじかれた北マケドニアは内政のレベルから動乱が生じる可能性があります。マケドニア問題は南部バルカンの主要な地政学的問題であり、今までに周辺諸国を巻き込んだ大規模な武力紛争を起こしている。

今回は速報ということで短いですが、筆者は東欧、北欧と言った欧州の辺縁地域から欧州安全保障を観察しているスタンスであり、しばらくは今後どう変動していくのかのシミュレーションをしてみたいと思っています。お付き合いいただけると幸いです。

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