北マケドニアNATO加盟の場合、予想される欧州安全保障への影響

今回は、長年バルカン半島南西部における不安定要因の重要な一つであった北マケドニアとギリシアとの間の「名称問題」がひとまず解決したことにより、北マケドニアのNATO入りの可能性が見てきた、この点について、加盟が欧州安全保障にもたらす影響について、加盟のメリット・デメリット双方を検討しつつ書いてみたいと思います。

1.予想以上の成果を上げた名称問題解決
2.北マケドニアNATO加盟の場合、メリットについて考察
3.北マケドニアNATO加盟の場合のデメリット。ロシアとセルビアの策謀

1.予想以上の成果を上げた名称問題解決

ギリシアの議会でマケドニアとの名称問題を解決するプレスパ合意の実現に必要な批准が完了したことによって、マケドニア独立以来、マケドニア側が最初の国旗に古代マケドニア王国の紋章ヴェルギナの星がデザインされていると批判されて国旗のデザインを変更した後も長々と続いていた名称問題はひとまず解決し、マケドニアは今後「北マケドニア」の名で(それまでは「旧ユーゴスラヴィア共和国マケドニア」、英語略称FYROMという奇妙極まりない名で呼ばれていた)ギリシアから反対されることもなく晴れて国際的に認められることとなった。「北マケドニア」も奇妙な名前であるが、ともあれ名称に「マケドニア」が入ることをギリシアが認めたということは、この問題を当初から見てきた筆者の様な人間にとっては驚くべき譲歩であった。ギリシア側がこの名称を認めなかった背景には、古代マケドニア王国の記憶のみならず、現在もギリシア、ブルガリア、アルバニアに分割されている他のマケドニア地域を再統合しようという動きに繋がると警戒していたからである。ここまで関係改善のための両国政府の努力が、双方の国内で(予想されたように)強力な反対にあったにもかかわらず、最後の関門を突破するまで進められたということは、素直に称賛したい。

さて、この名称問題解決により、北マケドニアのNATO入りのゴールが輪郭をはっきりさせてきた。この点について、仮に北マケドニアがNATO入りした場合に予想される欧州安全保障の将来について、そのメリット、デメリット双方を検討しつつ、その展望について書いてみたい。

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