炎の男の実録檄白手記!~俺の備忘録~Vol.16
俺のスカウトのやり方はどこまでいっても我流だった。
かつて出会い系でやっていた事、キャバ嬢の送り迎えのバイトで培った事、それが全てだったんだ。
俺は出会い系で頑張っている時から以下の事をモットーにしてた。
○女性を見かけで差別しない。
○女性の話をじっくりと聞く。
○女性の素性や性格、連絡先などの情報をこまめにメモする。
○メモを整理整頓してデータ化しファイルで管理する。
スカウトを始めた頃はひたすら女の子の話を聞いていた。それをメモしまとめたアラケンファイルは、必然的に女の子の情報で溢れる事になる。このファイルがスカウトの素人だった俺をトップクラスのスカウトマンにしてくれたといっても過言じゃない。
事務所に入って教えられた事なんてない。
もともとスカウトには定石なんかないんだよね。最終的には女性をスカウトするのが仕事だから我流もオッケーなんだ。
もちろん、業界の常識というかシキタリみたいなものは教えられた。新宿もスカウトの「狩り場」は細分化されていて、好き勝手にどの場所でも女の子に声かけていいわけではないんだ。ホラ、それぞれに縄張りみたいなものはあってそれを無視してのスカウトは許されないんだよね。
あそこの歩道橋はどこそこの管轄、その下の道路はどこそこって決まっている。
例えば高級クラブのナンバーワンに推薦出来そうなマブイ女性が事務所の管轄の歩道を通りかかるとする。声をかけようとしたら事務所の管轄外である歩道橋に上がっていった。そしたらもう手も足も出なくなるわけよ。
縄張りを無視して下手に深追いしたらとんでもない事になる。スカウトマン事務所同士の全面戦争になる可能性もあるわけだからそこは慎重にやんないといけない。
さすがに我流の俺でも他人の縄張りを荒らすことはなかったね。その辺りは昔からデリケートに考える性分だったからね。
先輩のKに意地悪されながらも地道に頑張った俺は、気が付くとKに次ぐスカウト実績をあげていた。事務所のボスからも覚えがめでたくなる。今から思うと、面白くなかっただろうねKは。
実績勝負の業界だから、売上トップクラスの俺は事務所からは特別扱いされたよ。自由出勤にしてもらったしね。事務所がスカウトマンを管理するのは、サボったりお金を誤魔化したりする危険性があるからだと思う。
俺は事務所と交わした約束は全て守ったからね。売上の何%を上納するわけだけど、それを誤魔化す奴も多かった。女の子を紹介した店からの礼金とかは領収書をきらない場合もあるし、事務所としては把握しずらいんだよね。
多少ズルしてもバレないからついつい悪い事してしまう。その点、俺はきっちりと払うべきお金は払っていたし。
子分を沢山持ってるKと違って、俺はいつも孤軍奮闘で頑張っていた。
それがひょんな事からアラケン軍団を結成することになったんだ。
俺が結果を残したからだと思うけど、事務所も俺タイプのスカウトマンを何人か採用するようになった。
アニメとか映画とか好きそうなオタクみたいな奴をね。
でも、そんな奴等が俺みたいな実績をあげれるはずもなくなんとなく事務所の厄介者になっていたんだ。
ある時、そんな厄介者をまとめてクビにしようとしたんだね。
事務所に掛け合って、そういうおんぼろ連中を預かることになった。
「お前が責任持つんだったら好きにしろ」
いわゆるアラケン軍団の誕生だよ。
軍団誕生の噂を聞いて、半ば押し売り的に仲間になる奴も出てきた。
気がついたら40人くらいの子分がいた。スカウトの能力が極端に低い奴ばかりだよ。稼ぎも少ないから俺の部屋に住まわせたりもしたよ。
俺は、このアラケン軍団でスカウトのトップに登りつめようと誓った。
Kのチームには負けたくなかったんだ。
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