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マナー講師という「キャラクター」

 『チコちゃんに叱られる!』はほぼ毎週観てるが、この炎上した回は見逃していた。気が付けばSNSで炎上しており、さらには他局への出演もあってか話がどんどん大きくなった結果、件のマナー講師・平林都さんもすっかり話題の人になっていた。

 台本通り、とはいうものの……それを「なんてことはない」と言い切れる肝っ玉の強さは良いのか悪いのか、である。とはいえ、そのような「毒舌マナー講師」というキャラを堂々と演じられるからこそ平林さんは各種媒体で活動できているので、逆に
「台本通りにやっただけ。自分は本来あんなキャラではありません」
 と放送局側に全ての責任を押し付けないのは良いと捉えるべきだろう。台本=メディアが求めているキャラやイメージに自らを重ね、たとえ炎上しようとそのイメージに乗っかれた平林さんは、タレント性も持ち合わせた成功者なのかもしれない。

 ただ、台本通りに叱られる役だった女性スタッフの立場はどうなるのか? 彼女は平林さんのように「そういうキャラ」を完璧に作れていない、すなわち素人だ。スタッフまでそんなキャラを演じる必要があるとは、造る側も大変である。もっともそんな台本や構成にしてしまうのも問題だが。

 加えて、今回の炎上は平林さんの毒舌キャラ以前に「聴いたこともないマナー」が披露されてしまった点も大きかっただろう。

 「いただきます」という、どうってことない至極普通のマナーが否定されたような印象を与えたのは悪手だった。これも平林さんの考えなのか、全て台本だったのか……

 ここの部分には以前あった「江戸しぐさ」騒動を思い出す。雨の日ではすれ違いざまにお互い道を譲る「傘かしげ)等々の古くから伝わる「マナー」が紹介され、ACの広告にもなった……ものの、
「長らく古典落語を演じているが、そんなの聞いたこともない」
と噺家さん達から疑問視され、最終的に捏造だと判明したあの話だ。やがて捏造だと分かってもなお「マナーが啓蒙されるならいいじゃないか」と擁護する声はあったが、そうではない。もともと存在しないモノを「一般には知られてないが、これが本来の正しい作法です」とハッタリかましたことへの批判はどうやっても避けられないのである。
 
 それにしてもこの「頂戴いたします」はどこからやってきたのか。もっとも、誰の意図か分かった途端、結局はその「誰か」が叩かれて終わる。しかしそんな状況に陥りそうでも「どうってことない」と言えるのだから、やはり大した方である。

 良いとされるマナーの伝播と、メディアが求めているマナー講師というキャラクター。自分にはメディアが「マナーの伝播」を面白がっているようにしか見えない。なので、またこの手の話が出てきた際は、下手に騒がず用心しながら観たほうがよさそうだ。
 なおかつ、それが平林さんだった場合
「またこんな案件になったのか、大変だなぁ……」
 と受け止める方がいいのだろう。

 そんな平林さんと一緒に生きたままエビを食べる動画。よく見ると、殻をむく時に小指を立ててますね……というかコーヒーを飲む時のように、自然と立ってしまうのでしょうね。マナー云々と言いつつも、その辺は普通の方なのだなと思えたのでした。

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