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【映画】Mモニカ・ベルッチ

Mで語りたい人がもうひとり。
イタリアの宝石と呼ばれる俳優さんです。
その美しさから作品が選ばれるというほど。彼女しかできない役どころの作品をご紹介いたします。



「アレックス」

プライベートでもパートナーであるヴァンサン・カッセルとの共演も話題になった本作。

irreversibleという原題は不可逆的、取り戻せないという意味を示しますが、映画の始まりはエンドクレジット。通常登ってゆくクレジットが逆さまにスクリーンを降りてきます。そしてやがてぐにゃりと曲がり、重力さえ失っていくかのように方向感覚を奪われ不安を抱かせる冒頭シーン。
そして一連の出来事が収束した後の様子から物語は始まります。
意識不明で救急車に乗せられるマルキュスとパトカーに乗れられる呆然したピエール、2人の男の姿です。
何が起こったのか。私たちは時を遡りながらその事件の全貌を知ってゆくことになります。

シーンは時を逆行しながらぶつ切りに映し出されます。
怒り狂うマルキュスが親友のピエールを連れて誰かを探しています。一人の男を見つけ出すため手がかりを集め、レクタムというゲイバーでその男を突き止めます。復讐なんてよせ、ピエールが激昂しているマルキュスに訴えています。

次のシーンではマルキュスが瀕死の状態でタンカで運ばれていく恋人のアレックスの姿を目撃します。

そして時は遡り続けます。
調子に乗ってはしゃぐマルキュスに呆れ、アレックスは一緒に出かけたパーティーから抜けようとしています。
彼女を送れとピエールに言われますがアレックスは無視、マルキュスは彼女をひとりで帰してしまいます。

パーティー帰りの薄いドレス姿でアレックスは地下道を歩いて大道路を渡ろうとします。そこで悲劇が起こるのです。

衝撃的で非情な暴力のシーンを乗り越え、バクバクした心臓としかめた顔で頑張って見続けると、その後に続くシーンはピエールを含めたマルキュスとアレックス、絆の深さが伺える楽しそうな3人の様子。

軽くて調子に乗りやすいマルキュスと真面目で堅いピエール。マルキュスに呆れながらも大好きで愛しく思うアレックスの様子が伝わってきます。
3人で戯れ合うような恋愛やセックス談義。楽しげで衝撃が薄れて違う映画を見ているような気持ちにもなってきます。

穏やかに何事もなく平和な中で愛し合い、これから訪れる未来を期待させるようなシーンのラストですが、私たちはもうすでにそれから起こる悲劇を知っています。どうしようも取り返しのつかない悲しい結末。
時は無情で理不尽な暴力によって全てを破壊する。
冒頭で娘を犯して捕まったという、ゲイバーの上階に住む太った親父の言葉がすべてを表しているのです。

ちなみにこの親父は本監督ギャスパー・ノエの「カルネ」という作品の主人公です。ファンにはたまらない導入シーンとなっています。

9分間のレイプと暴行シーンに臨んだモニカ・ベルッチ。
並外れた激しさに賛否両論ある作品ですが、最後まで見るとその意義を強く感じさせます。

取り扱い厳重注意な作品ですが、チャレンジャーのあなたはぜひ。頑張った先には感動が🥲。。





「マレーナ」

名匠ジョゼッペ・トルナトーレ監督作品ですが。
「ニューシネマパラダイス」「海の上のピアニスト」など有名ですが、こちらも隠れた?名作です。

主人公はレナート。12歳の少年です。
第二次世界大戦の戦禍でイタリアのシチリア島を舞台にレナートの初恋が描かれます。

町中で評判の美貌を持つマレーナにレナートは恋をします。戦地に赴く夫を待ち焦がれながら日々を過ごすマレーナ。男たちからは羨望の的、女たちからは嫉妬の標的であったマレーナの身の上はある時一変してしまいます。夫が戦死したという知らせがやってきたのです。

未亡人になったマレーナを男たちが我先に手を掛けようと狙い、あらぬ不倫疑惑や言いがかりをかけられる始末。
彼女を弁護した小太りの醜い弁護士と婚約するが裏切られ、戦時中の貧しさに困りマレーナは髪を切り娼婦になってしまいます。

娼婦仲間と公然と客を取るようになったマレーナ。その転落を見守り続けていたのはレナートでした。
恋に憧れ初めての気持ちと性の芽生えに翻弄され、マレーナへの妄想と悲しさで苦しみながらも遠くから見守るしかできないレナート。憧れのあまりマレーナの家をそっと訪ねては木に登って窓から覗いたり。そこで知るのはマレーナの夫への愛と生活への苦しさでした。
娼婦となってからも大人の世界で傷付けられていくマレーナを、レナートは見守るしかできませんでした。

そして第二次世界大戦は終わりを告げ、ムッソリーニのファシスト党の政権は終焉を迎えます。
ファシストは弾圧され、ドイツ兵も相手としていたマレーナにも向けられます。
女たちはその嫉妬を、マレーナの髪を切り服を剥ぎ、集団で殴り蹴ってリンチを加えマレーナを辱めます。あまりの酷さにも目を覆うこともできないレナート。
マレーナは身を隠し逃げるように町を出ていくのです。

マレーナが町を去った後、死んだと知らされていた夫のニノが片腕を失った姿で島に戻ってきます。訃報は誤った情報でニノは生きていたのです。しかし、ニノとマレーナが住んだ家は流浪者が住み着いておりマレーナの姿もありません。一体どうなっているのかとニノが誰に聞こうと、マレーナの行方は誰も知りません。娼婦にまで身を落としたマレーナのことを人々は嘲りニノは途方に暮れます。

その様子にいたたまれずどうしていいものか考えあぐねてレナートはニノに手紙を渡します。
「あなたの奥さんの真実を知るのは僕だけです。マレーナさんはあなただけを愛しています。」
そして町を去る時彼女が乗った電車の行先を教えてあげるのでした。

ニノはマレーナを探しにゆき、島に連れ帰ります。ニノに寄り添い質素な服と短い黒髪の彼女は町の中でも馴染んで見える姿です。島の人々もマレーナに声を掛けその人生を受け入れようとします。
買い物帰りのマレーナがふと躓き、落としてしまったオレンジを拾い上げてマレーナに渡します。その時そっとレナートはマレーナの手に触れ、初めて声を掛けるのです。
「お幸せに、マレーナさん」

その頃のレナートにはガールフレンドもできました。短パンしか履けなかった少年期を経て青年の身なりになっていました。

マレーナに恋をした少年のレナートはなんとか自分に気づいてもらおうと何枚も何枚も手紙を書いては渡せずにいました。初めて書いて伝えたのはニノへの手紙であり、再び島に戻ったマレーナと初めて言葉を交わしたのはレナートの初恋が終わった瞬間なのでした。
何度見ても胸が詰まるラストシーンです。

エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしく、シチリアの石畳の町の景色も楽しめる作品です。


立っているだけでその美しさが際立つ女優さんですが、ここまで体を張ってしまうモニカ・ベルッチはすごい役者さんだと思います。

51歳でボンドガールも務めた彼女。
最近は娘さんもモデルとして活躍しているそうで超美女だそうです(๑・̑◡・̑๑)すてき。

これからも注目したい役者さんです。

お読みくださり、ありがとうございました!

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