見出し画像

JA豊橋の冬瓜は珠玉の逸品~荒玉note改訂

 この記事は2021年7月にnoteに提稿した記事です。社会背景などは当時のままです。マガジン「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」にも収録されています。
 

ブランド名は「豊橋なんぶとうがん」

 つややかに光る緑色です。抱えるとずっしりと重い冬瓜(とうがん)は、光の当たり方によっては、瑪瑙(めのう)のように輝いて見えます。
 愛知県豊橋市では今、トウガンの出荷が本格化しています。豊橋農業協同組合(JA豊橋)が7月下旬、今年のトウガンの作柄などについてJAグループ愛知記者会(名古屋市)に出向いて説明してくれました。トウガンは冬の瓜と書きますが、実は夏からが旬です。ビタミンCが豊富で、猛暑を乗り切るにはおすすめの食べ物です。
 JA豊橋営農指導課の金井優策さんによると、豊橋市内では35年前の1987年に「南部琉球冬瓜同好会」が発足し、現在25人が12ヘクタールで年間950トン栽培しているそうです。ハウスとトンネル露地栽培の方法で、色やつや、形など外観にこだわり、ていねいに育てています。
 ブランド名は「豊橋なんぶとうがん」。
スーパー店頭では、一玉を切り分けて白い断面を見せて販売されていますが、皮の色合いも美しいので、料亭や中華料理店では半分に切って飾りを施し、器として使われることもあります。
 収穫は9月までですが、その後は倉庫に寝かして出荷していくので、11月まで市場に並びます。ただ、金井さんは「いつ食べても美味しいですが、しいて味の旬と言えば6月から9月が最もみずみずしい」と言います。
 実際、生で食べさせてもらいましたが、シャキシャキとしていてました。サラダにもお勧めだそうです。
 トウガンはインド、南アジアが原産で、日本には5世紀頃に伝来したといわれています。別名を「かもうり」「トウガ」といい、平安時代の書物「本草和名」にも載っています。
 愛知県には明治時代から栽培されてきた「早生とうがん」があります。白い斑の入ったトウガンですが、あいちの伝統野菜になっています。豊橋で栽培するトウガンは、「琉球とうがん」です。沖縄から種子を取り寄せて栽培を始めています。JA豊橋の南部琉球冬瓜同好会では、トウガンの球体が直接地面に触れないように緩衝材を敷き、玉を定期的に転がして色むらができないように手をかけているそうです。緩衝材には、土に返る生分解プラスチックを使い、環境への配慮もしています。
 愛知県のトウガンの収穫量は、沖縄県に次ぐ全国第2位です。「とうがん汁」というのは、愛知県内で食べられてきた郷土料理だそうです。トウガンを鶏肉、しいたけと一緒にあんをかけた料理です。夏は冷やして食べると食が進みます。
 トウガンは95%が水分で、さらにビタミンCやカリウムなどのミネラルも含まれていますから、夏にもってこいです。
 JA豊橋のホームページで「JA豊橋冬瓜」を検索すると、トウガンを使ったメニューを紹介しています。「とうがんサラダ」や「「とうがんの夏スイーツ」などあります。金井さんは特に、麻婆ナスならぬ「麻婆とうがん」を勧めてくれました。早速、生産者がこだわった美しい皮ごと麻婆豆腐に入れて食べてみると、シャキシャキとして良い食感でした。
 感染症で料亭やホテル向けの需要は減っていますが、巣ごもり需要でスーパーなど量販店向けが堅調です。
 冬瓜は、ほかの瓜類がなくなる冬まで保存できることから名付けられたといわれています。感染症がどこまで続くのか分かりませんが、せめてトウガンのビタミンCで抵抗力を高めて、猛暑を乗り切りたいものです。
(2021年7月31日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?