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アグリクロスの挑戦 雑草ついばむアイガモの姿が「農商工連携」の象徴~荒玉note改訂

  この記事は2021年3月にnoteに提稿した記事です。マガジン「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」にも収録されています。アイガモロボットも姿かたちを変えて、ようやく市販されています。ジャンボタニシの捕獲ロボットにも期待しています。

 田植えが終わった田んぼのなかをアイガモが泳ぎながら雑草を食べていく。除草剤を使わずに、安全なコメをつくるアイガモ農法が注目されたことがありました。あまり普及していないのは、手間とコストがかかるためです。農家はアイガモが逃げないように柵を作ったり、餌を与えたりしなければなりませんから。
 そんなアイガモの役割を果たす水田用小型除草ロボットに出会ったのは、2012年1月でした。岐阜県情報技術研究所(当時)が岡山県の農機具メーカーと協力して開発し、実証実験を始めていることを記事にしまいた。形はキャタピラーで動く高さ50センチほどの筐体です。自動運転またはラジコンで操作して、稲の間の土をかき混ぜて、雑草を退治する仕組みでした。
 アイガモロボットを思い出したきっかけは、3月4、5日に名古屋市で開かれた「アグリクロス」(名古屋商工会議所主催)の展示会でした。「農商工連携」をテーマに、約40社が出展していました。ロボットや情報通信技術を活用したスマート農業や省力化、生産の効率化の提案が目を引きました。
 例えばトヨタ自動車の「豊作計画」は、米作の田植えや稲刈りなどの作業を目に見えるデータにして、作業工程を効率よく示していくITツールです。以前取材したときよりも、年々、カイゼンされていくのがトヨタらしいところです。ほかにも、ドローンや自動走行のトラクターなど省力化に役立つ提案が目白押しでした。
 農業機械は様々な作物に対応しています。トラクターや田植機はもちろん、ネギを収穫したり、ニンジンを掘り起こしたり、ギンナンを洗浄したり。実に多彩な作業に対応した手作り感のある機械が多いのです。
 2020年10月に開かれたアグリクロスのセミナーで、埼玉県の白ネギを生産する株式会社社長の話を伺いました。ネギ畑の除草は、やっかいだそうです。機械があっても、雑草は種類も大きさも硬さも千差万別で、ネギとの識別が難しいようです。株元の除草はどうしても手作業になると話していました。スマート農業といっても、なかなか道は険しいものがあります。
 最近、微笑ましい記事を読みました。「ジャンボタニシの罠」が岐阜県関市の発明展で市長賞を受賞した(東海農政局「食・農ぴっくあっぷ」2月号)というものです。考案したのは小学5年生です。外来種のジャンボタニシがイネを食い荒らし、農薬も使いたくないので困っているという農家の声を聞いて、プラスチック製の植木鉢に穴を開けて、入り口から入ったジャンボタニシが植木鉢の底に落ちる仕掛けです。結果は1回に30匹以上捕獲できたそうです。
 これです。農家の困りごとを解決する。農薬をできるだけ使わず、消費者に安全な農作物を届ける。次世代のアイガモロボットには、アイガモの好物のジャンボタニシも捕獲してほしいものです。
(2021年3月19日) 

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