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変わる農業広報~荒玉note改訂

 この記事は2021年8月にnoteに提稿した記事です。マガジン「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」にも収録されています。内容はコロナ禍のものですが、記録として再録します。写真は2023年10月31日に名古屋市内のJAグループ愛知ビルで展示中の広報誌の入賞作品。

 巣ごもり需要もあって、家庭で野菜など農産品への関心が高まっているようです。新聞も最近、旬の野菜や果物、花などの収穫風景を掲載する頻度が高くなっています。
 新聞業界では、夏は記事が乏しくなる「夏枯れ」と言われています。逆に農業の現場は季節感にあふれ、紙面映えの良い素材があふれています。もちろん、読者の関心が高いことも理由です。
 7月末に愛知県農業協同組合中央会(JA愛知中央会)が主催する「愛知県JA広報コンクール」の審査を担当しました。今年で5回目ですが、年々レベルが上がっていると感じています。
 審査は5部門あります。ひとつは「JA組合員向けの広報誌の部」です。愛知県内の20JAのうち、16JAから応募がありました。
 毎回評価が高いのは、あいち中央(安城市など)、あいち豊田(豊田市など)です。
 たとえば、あいち中央の「ACT」(2020年8月号)では、「多様化するお米の栽培」を特集し、代かきを行わない直まき栽培が増えている現状を紹介しています。
 JAあいち豊田の「グリーンボイス」(2021年6月号)は、五輪にタイミングを合わせて「オリンピアンの食生活」を取り上げました。豊田市役所に勤務するシドニーオリンピック競泳女子メンバーの一人にインタビューして、世界に挑んだ日本食の素晴らしさを紹介しています。
 各JAの広報誌とも生産者にスポットを当てた企画があり、農業現場のやりがいが伝わってきます。組合員向けではありますが、農業に関心がある消費者にも役立つ内容でした。。一部JAを除いてウェブからPDFの紙面を読むことができます。
 このほか、支店だよりやイベントなど「地域密着型広報活動の部」、「ウェブメディア活用の部」、トップ広報や広報戦略、マスコミ対応など全体の広報力を示す「総合の部」でも、それぞれ特色があり、審査員を悩ませました。総合の部の最優秀賞にはJAあいち中央が選ばれました。(詳細は7月30日の日本農業新聞に掲載)
 ここ最近、企業が広報部門をPR会社に委託するケースが目につきます。専門家ならではのノウハウもありますが、自社で広報活動をしている企業には、やはり大きなメリットがあります。広報担当者はもちろん、全社員が自社商品に関心を持ち、組織の縦割りの弊害を正していける可能性があるからです。
 JAには専属の広報担当者がほとんどいないため、全員が広報担当者の意識を持つ必要があります。農協を利用する生産者はもちろんのこと、産直店を利用する消費者まで視野を広げて業務を進めていかなければ、農業全体の「稼ぐ力」が上向いてこないからです。
 あるJAでは特産品のリリースを出したところ、マスコミ10社が取材してくれたそうです。取材を受けたことで、1000万円を超える広告効果があったと分析していました。メディアで発信されることで、ブランドイメージが高まり、出荷が増え、農家の所得向上にもつながっていきます。
 こうしたコスト意識、広報発信による「稼ぐ力」を示していくことは、広報がJAの創造的自己改革を進めるうえで重要な戦略部門だということを教えてくれます。
 ほかのJAはマスメディア13社に毎月、旬の農産物の収穫など1か月の予定をファクスで送信しています。また、ウェブを活用してに地域の農業応援団づくりに力を入れるJAも増えてきました。
 紙面やウェブはおしゃれに。一方で広報誌を1軒ずつ職員が配っりながら話を聞く、顔の見える地道な広報活動も続いています。
 審査をしながら、「農業広報はいまが旬」と感じていました。
(2021年8月3日)

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