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第65回中部財界人新春サロン~2024年の課題と見えてきたもの

 初春に中部財界人が今年の課題や新事業を語る生放送番組「第65回中部財界人新春サロン」。今年もCBCテレビが名古屋市内のホテルから中継しました。
 番組案内には、「アフターコロナを生き抜く中部財界の『本気t』が見える1時間生放送!」とありました。(写真はCBCテレビ提供)
 ■出席者は8団体・企業のトップ
 出席者は五十音順で次のみなさん。
 J.フロントリテイリング 好本達也 社長
 中部経済連合会      水野明久 会長 
 東海旅客鉄道       丹羽俊介 社長 (初)
 名古屋商工会議所     嶋尾正  会頭
 名古屋鉄道        高﨑裕樹 社長
 日本銀行名古屋支店    廣島鉄也 支店長(初)
 日本ガイシ        小林茂  社長
 三菱UFJ銀行      高原一郎 副頭取(初)

 ■足下の景気は回復基調
 コロナ前と比べた景況です。
 JR東海は「東海道新幹線と在来線は9割程度までお客様が戻ってきています」(丹羽社長)。
 松坂屋名古屋店を運営するJ.フロントリテイリングは「2022年度にはもう2019年度の数字を超えてきています」(好本社長)。
 中小企業が会員の大半を占める名古屋商工会議所は「人流が内外共に大きく改善し、その結果、飲食・ホテル・旅館などサービス業が元気を取り戻しております」(嶋尾会頭)。
 日銀は「これまでのところ米国の個人消費は堅調で、当地からの輸出の増加にもつながっています」(廣島支店長)と分析しています。
 ■2024年経済の課題
 もちろん手放しでは喜べません。
 出席者からは、ウクライナなど不透明な国際情勢、昨春闘に続く賃上げを継続できるかどうか、そして人材不足への対応など懸念材料が指摘されました。
 なかでも地域経済を支える中小企業の賃上げに注目が集まります。嶋尾会頭は「実質賃金はまだマイナス。賃金と物価の好循環がスタートできる年にできれば」と期待を込めます。「原材料価格、エネルギー価格などに加えて、人件費も加えた取引価格の適正化に向けて、いまこそ中小企業は取引価格の適正化に向けて行動をはじめて欲しい」とエールを送ります。
 中部経済連合会の水野会長は人手不足対策について、「デジタル化の推進、外国人労働者の受け入れ拡大、リモートワークの促進、若手人材の育成など多角的なアプローチで対応していくことが重要だ」と言います。
  ■能登半島地震で改めて防災の重要性
 元日の発災、それも震度7。能登半島地震は南海トラフ巨大地震への備えを意識させた激震でした。
 新春サロンでは、地域の防災や国土の強靱化への希望も見えてきました。
 JR東海の丹羽社長は「東海道新幹線に加えて、災害への備えとしてリニアを使った中央新幹線で(東西の)大動脈を二重系にしていくことは日本の国をより強靱にする意味が大きい」と強調しました。
 能登半島地震で電源の確保の需要性を改めて痛感しました。日本ガイシの小林茂社長は岐阜県恵那市に設立した地域新電力会社の恵那発電について説明します。
 「太陽光で発電して、その一部を電池に貯めるというので、我々のNAS(ナス)電池を使っているんですね。NAS電池は日本ガイシが世界で唯一、実用化に成功した大容量蓄電池。恵那電力では、太陽光の恵みをNAS電池に貯めることでエネルギーの地産地消に取り組みます」
 放送後、ホテルロビーで小林社長にぶら下がって話を伺いました。北陸エリアにNAS電池を導入する準備をしていた矢先に地震が起きてしまったそうです。
 日本ガイシが恵那電力を展開する背景には、2018年の北海道胆振東部地震で国内初のブラックアウトがありました。同社は稚内にNAS電池を納めていたのですが、小林社長は「そこだけ太陽光とうちの電池で1週間停電しなかったんです」と言います。
 「The only one」の蓄電池が暮らしのクロコ(黒子)となって中部地域の防災電源の役割も担う。今後の中部圏でのNAS電池の導入が期待されます。
 ■記者の目
 激震のスタートとなった2024年は、防災の要として愛知、岐阜、三重の東海3県の防災力が問われると考えています。中部経済連合会は、2019年5月に提言書「南海トラフ地震等が中部経済界に与える影響を最小化するために~取り巻く社会インフラの現状と課題~」を出しています。

中部経済連合会の提言書

 提言書の中で物流道路や工業用水路のぜい弱性に警鐘を鳴らしています。実際、2022年5月に明治用水頭首工で漏水事故が起きて農業用水の給水が止まり、工業用水の使用が制限されたことは記憶に新しいところです。
 また、問題解決型の人材育成も大事です。筆者はオープンから2023年8月までスターアップ拠点「ナゴヤイノベーターズガレージ」の会員でした。拠点同士が連携して人材を育てることが求められてきます。
 第65回中部財界人新春サロンは、リニア中央新幹線、蓄電池による電力の備え、人材育成など、年の初めに地域の課題とチャレンジするテーマを示した内容でした。
(2024年1月5日)
下記は第64回の記事です

中経連提言の記事です
https://note.com/aratamakimihide/n/n389ccac4a925?sub_rt=share_pw


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