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エビイモ、40年目の味~荒玉note改訂

 この記事は2020年10月にnoteに提稿した記事です。マガジン「農政ジャーナル~長靴をはいた記者」にも収録されています。新聞社退職後、本格的にnoteに書き始めた思い出の記事です。ベースの40年前の愛知県小牧市でのエビイモの取材がよみがえってきました。

 

収穫したばかりのエビイモ

反り返ったかたちと縞模様。まるでエビのようにみえることからエビイモ(写真)と呼ばれています。
 愛知県小牧市の特産品、エビイモの収穫が始まりました。JA尾張中央の担当者によると、普通の里芋よりもぬめりが少なく、食感が細やかなため、煮崩れしないのが特徴だそうです。
 実はエビイモには、思い入れがあります。最初に赴任した通信部が小牧市にありました。名古屋空港へ通う道筋で、何か掘っている農家の人を見かけて、話を伺いました。
 「エビイモ 生誕語る生き証人」。1980年11月27日の尾張版のコラムの見出しです。種芋を植えつける、うねの幅を90センチから1.2メートルに広げ、間隔を開けて栽培するように工夫したことを紹介しました。
 「ほとんどが名古屋や京都の高級料亭で扱われ、庶民の食卓にのぼることはあまりない」とも書きました。事実、そのときも、それ以降もエビイモを食べたことはありませんでした。
 その後、小牧市のエビイモ産地は後継者不足のため、栽培面積が年々縮小していたそうです。栽培技術の伝承が途絶えてしまうという危機感を抱いた農家が、7年前に「エビイモ研究会」を発足させました。現在、27人が参加しています。
 エビのかたちに曲げるため、生長に合わせて茎の隙間に何度も土をかぶせます。土寄せという手間のかかる栽培法です。
 愛知県は「あいちの伝統野菜」として35品種を選んでいます。50年以上前から栽培され、地名や人名にちなんでいることなどが条件です。これまで取材した野菜は、守口大根(扶桑町)や八事八寸ニンジン(名古屋市)、八名丸さといも(新城市)、越津ねぎ(稲沢市)です。いずれの生産者も、伝統と種子を絶やさないように栽培努力を続けていました。
 エビイモは地名の要件を満たしておらず、選定されていませんが、全国でも有数の産地として伝統を維持しています。
 伝統野菜の課題は、消費が伸びないと生産にも弾みがつかないということです。エビイモ研究会は、3年前から地元小中学校の学校給食に毎年500㎏を提供しています。作る人も張り合いがあります。
 最近、エビイモを使った料理をいただきました。ポテトサラダ、ピザ、ポテトフライ、芋餅です。最初の取材から40年目。高級食材から庶民の食卓も飾る逸品となることで、伝統にひと味加わりそうです。
(2020年10月30日)
 

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