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陶磁器の街・瀬戸の本業窯と23年ぶりに再会~松坂屋名古屋店「ハンズ」開店で

 名古屋・栄エリアにハンズが帰ってきました。ハンズ名古屋松坂屋店が11月2日、南館地下1階にオープン。昨年10月に35年の営業を終えた「東急ハンズANNEX店」から一新し、商号を「ハンズ」に変更しての初出店です。
 ワンフロアで広さは約2000平方㍍。ANNEX店よりやや狭いものの、中央の通路が2㍍40㌢あり、買いものがしやすいつくりです。アイテム数は約3万種類と豊富です。
 私が注目したのは「暮らしのなかのとておき」をテーマにしたコーナー。第1弾(12月8日まで)は、東海3県のものづくりをテーマに愛知県瀬戸市で250年以上続く窯元の「本業窯」が出展されています。
 瀬戸市で勤務したのは昭和から平成に変わるときでした。ここは勤務地というより、陶芸にいそしみ、若手陶芸家が目指す「やきものの街づくり」を一緒に応援してきた躍動の地です。
 取材で本業窯を訪れたのは、1989年5月。瀬戸市指定文化財の登り窯を見せていただきました。登り窯は、坂を生かして窯を設け、下から上に火が駆け上がっていくつくりになっています。全長15㍍、幅8㍍。畳6~8畳ほどの焼成室が4室続いていました。
 文化財指定を受けた1975年まで薪で火がたかれていました。その後、活用法として、瀬戸の街づくりに熱心だった写真家の発案で、登り窯の「三の間」を使った茶会を開くことになりました。取材は、その告知記事のためでした。写真家は「器をつくる文化から、器を使った文化を育てていきたい」と張り切っていました。

本業窯の茶会を前にした当主水野義郎さん(当時)㊧とハンズに展示された馬の目皿

 本業窯の展示室で見た「馬の目皿」も忘れられません。絵付け職人が無心で筆を動かして描いていくウマの目を思わせるデザインです。「用と美」を備えた器の魅力が伝わってきました。もちろん、瀬戸の思い出に買った馬の目皿は、今もわが家の現役です。
 ハンズでは、馬の目皿のほか、三彩や麦藁手(むぎわらで)などの器が並んでいました。オープン初日に平茶碗(3300円)を買いました。米のとぎ汁で煮沸させたあと、まずは抹茶をいただいてみようと楽しみにしています。
 新しきハンズを訪ねて古き本業窯の記事を思い出したひとときでした。
(2022年11月4日)

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