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消える「緑のトンネル」~名古屋商工会議所100周年植樹のケヤキ伐採へ

 名古屋・伏見の名古屋商工会議所ビル東側のケヤキが5月27日(土)から伐採されます。25日に緑のトンネルとなったビル東側を歩いていたとき、ケヤキの大木に「街路樹撤去のおしらせ」の紙が張られているのに気付きました。
 ケヤキ並木は、名古屋商工会議所が1981年(昭和56年)に記念植樹としてビル東側と南側の歩道に植えたものでした。会議所職員でも当時を知る人はほとんどおらず、同年に刊行された「名古屋商工会議所100年史」を閲覧させてもらいました。

名古屋商工会議所100年史より

 当時の会頭は、東海銀行(現三菱UFJ銀行)頭取や東海旅客鉄道発足時に請われて会長に就いた三宅重光さん。創立100周年記念事業特別委員会は、のちに名商会頭となる名古屋鉄道の竹田弘太郎会長を委員長として、そうそうたるメンバーがそろっていました。
 記念植樹事業では、ビル南側の白川公園入り口付近に「緑陰」と彫られた石碑も置かれました。

白川公園にある緑陰の石碑は、緑の陰に

 多くの記念事業のうち、記念植樹は「緑のトンネル」と位置付けていました。100年史には「商工会議所ビル周辺を樹木の枝につつまれた道路として整備を図り都心部における環境づくりの新しい展開を図るため樹木の寄贈をおこなう」(354㌻)とありました。
 その思い通り、いまでは幹周り1㍍、樹高15㍍もの街路樹に育ち、夏場の強い日差しを避ける緑陰として地域に溶け込んでいます。
 撤去を担当する名古屋市中土木事務所に聞きました。おしらせ文書に「この路線は、歩道が狭く法令に適合していません」とあります。根拠は道路交通法。縁石やコンクリートで仕切られた植桝(うえます)から2㍍の幅がないと、歩道として適合しないためです。
 根が張ってきて、歩道のあちこちに凹凸も見受けられます。根の一部を除去すれば、倒木が懸念されます。
 撤去されるケヤキは全部で14本。ビル東側にある街路樹のみで、幸い南側のケヤキは存続します。

名古屋商工会議所ビル東側のケヤキ並木は猛暑を前に消えていく…

 作業は27日から始まります。地上1~1・5㍍のところで木を切り、そののち残った切り株を撤去します。作業が終了する期間は未定です。 緑陰で思い出しました。先日の日本農業新聞1面コラム「四季」のひとこまです。 「英文学者・外山滋比古さんの随筆で『緑陰緑想』という言葉を知った」 17世紀の英国詩人、アンドルー・マーベルの詩の一節、「緑の木陰、緑の想い」から生まれた言葉のようです。日本では部屋の中で考える書斎派が主流ですが、新緑のいまは、「緑陰緑想」の思索も良さそうです。 ケヤキに養生テープで張られた「おしらせ」が、都会のなかの緑陰の大切さをあらためて教えてくれたようです。それにしても記念碑の「緑陰」に彫られた三宅重光という名前は、草をかき分けないと読めませんでした。 灯台下暗し~40年前に先人たちが構想した「緑のトンネル」。もっと満喫しておけばよかったと悔やむことしきりです。 もし新緑の頃、日曜日の一日だけでも、緑のトンネルをミニ歩行者天国にしていたら・・・。車道に置かれたベンチに腰かけ、白い街名古屋を潤す緑想が生まれていたかもしれません。(2023年5月16日)※2023年10月1日再掲載 

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