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子どもの貧困対策に奔走する「あすのば」~社会全体が親代わりになって~

「あすのば新聞-2020年冬-第19号」が届きました。「あすのば」は、貧困に苦しむ子どもへの支援活動や実態調査を行って政府へ政策を提言する公益財団法人です。
 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、いまも不自由な生活を続ける家庭が多いことから、今春から緊急支援給付金の募金を始めました。その結果、4985人の子どもたちに給付金を送ることができたという報告です。全国2万1794人から計1億8654万円(11月24日現在)が寄せられました。
 同封されていた「通販生活2020年冬号」(カタログハウス発行)の「2人のお母さんたちが綴るコロナ禍日記」を読みました。
 「8月8日 (子ども食堂から)米が届く。箱をあけると、私はほっとすると同時に涙がこみ上げてきた。(中略)他人の配慮、想いに胸が熱くなる。嬉しい。社会から忘れられていないことを再認識できた気がする」
 「あすのば」設立の中心となったのは代表理事の小河光治さんです。遺児支援団体「あしなが育英会」に勤務して、阪神淡路大震災を機に生まれたケア施設、神戸レインボーハウスの館長として、震災遺児に寄り添ってきました。2015年に退職し、日本が抱えている子どもの貧困に向き合う組織を設立したのです。
 小河さんとの出会いは、彼が高校生だった1982年12月でした。交通遺児が献血を呼びかける運動を始めたことを記事にしました。
 小河さんは交通遺児です。8歳の誕生日に父親が交通事故に遭い、寝たきり生活の後に亡くなりました。治療費の返済のため働き続ける母。苦しい生活のなかで、救いとなったのが遺児対象の奨学金だったといいます。自分たちも何かできないかと始めたのが、高校生献血をすすめる会でした。当時から使命感と行動力にあふれていました。以来、交通遺児の育英街頭募金や災害遺児への支援拡大など活動の広がりに注目してきました。 
 2017年に実施した「子どもの生活と声1500人にアンケート」によると、勤労月収の平均額は11万4000円、年収300万円未満が86%でした。感染拡大が続くなかで、小河さんは来春の入学・新生活を控えている子どもたちへ応援給付金の募集を進めています。給付の目標は2600人です。
 「阪神淡路大震災の時がボランティア元年と言われたように、コロナがきっかけとなって社会全体が親代わりになって、子どもを育てるような社会になってほしい」と小河さんは言います。
 この言葉は今年7月、天皇皇后両陛下が赤坂御所に子どもの支援団体を招かれたとき、「コロナの後、どのような社会になるといいですか」というご質問への答えでした。天皇陛下からは「ピンチはチャンスになりますね」と激励のお言葉をかけられたということです。「社会全体が親代わりに」。いまかみしめたい言葉です。
(2020年12月12日)

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