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愛知の「知多ペコロス」出荷始まる~なぜ減っている生産量?

 愛知県知田半島で生産される小粒のタマネギ、ペコロスの出荷が始まりました。
 ペコロスは、直径3~4㌢の小さなタマネギです。カレーや煮込み料理などに丸ごと使えるので、レストランなど業務用を中心に使われています。
 主産地の知多市日長では、日長ペコロス生産組合(17戸)が約1㌶で作付けしており、4月18日から8月上旬までに4800ケース(1ケース5㌔)の出荷を見込んでいます。
 この地区では「知多ペコロス」のブランド名で商標登録。JAあいち知多によると、出荷期間中に全国に出回るペコロスの8割を日長地区のものが占めているといいます。
 20年ほど前に現地視察したとき、レストランなどからの需要が高く、産地の競合もないことに注目していました。
 ところが、4月28日に名古屋市中区のJAあいちビルで開かれた4月定例記者会で、ペコロスの生産者や生産農地が減っているという話しを聞きました。
 特に全国トップの市場占有率だった生産量が北海道に抜かれ、東京都中央卸売市場の取扱量でみると、二番手になっていることに驚きました。
 JA愛知中央の担当者が説明した理由は3点。①農地の減少②生産者の減少③ペコロスの環境耐性の低下です。
■農地の減少
 農地面積は愛知県内も減っています。2016年7万6300㌶だったものが、直近の2020年の数字では7万3700㌶となっていました。知多市の作付けしている農地は、2000年に比べて約45%減少(知多市のHP)しています。
 原因のひとつは農地転用ですが、交通の便の良い知多半島は物流倉庫に転用される事例が目立ちます。 
 もうひとつは、地元自治体や財界が長年、要望してきた西知多産業道路の進ちょくです。中部国際空港と名古屋市や豊田市などの自動車産業集積地を結ぶための物流インフラとして期待されています。知多ペコロスの主産地、知多市日長地区にはインターチェンジができる予定です。さらに農地が減ることが予想されます。
■生産者減と環境の変化
 生産者は2001年に42戸ありました。現在は17戸に減っています。かつて地元新聞社を辞めてペコロス農家にチャレンジした記者もいました。魅力ある作物です。一方で、タマネギを密集して植えたり、手作業で一玉ずつ収穫したりと手間がかかることもあって、高齢化のなかで担い手が減ってきています。
 環境耐性とは、地球温暖化で作物に適した適地が変わってきていることです。ブドウの産地が北上しているのは世界的な傾向です。
 ペコロスについては、具体的なデータはありませんが、今後も注意が必要です。
■希望も
 日長ペコロス生産組合は、研修生を受け入れています。現在3人がペコロス栽培に挑戦しているそうです。普通のタマネギと比べて、1個あたり単価が高いので生産者にも魅力です。
 知多ペコロスは100年前から栽培されてきました。採種により選りすぐられたペコロス品種が育ってきているのも市場への有利販売につながります。
 ブランドの周知のため、最近は「知多ペコロスのまるまるスープ」や「知多ペコロスのベーコン巻き」といった料りレシピも配布しています。
 わが家でも煮物に入れたり、炊き込みご飯に入れてみたりして、ペコロスの食感を楽しんでいます。普通のタマネギよりも糖度が高いですね。業務用だけでなく、家庭料理の食材にもぴったり。
 昔ながらの手作業による一貫生産。農家手作りの品質を味わってほしいものです。
(2023年5月4日)
 
 

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スマート農業など最新の農政の現場を取材。そこから見えてくる農業の課題に切り込むつもりです。

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