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劇場版先行公開~はんだ山車まつり誕生秘話

 愛知県半田市は、人口12万人の知多半島の中心都市です。江戸時代から醸造業が盛んで、海運を利用して酒や酢を江戸に運んでいました。江戸町民のファストフードの寿司も、半田の酢が起源といわれています。食酢大手のミツカンの企業博物館「ミツカンミュージアム」(半田市)で紹介されています。
 この半田市には、市内各地にある31輌の山車が5年に一度勢ぞろいする「はんだ山車まつり」があります。
 「半田山車祭り保存会」によると、最も古い資料では、1755年(宝暦5年)に描かれた乙川祭礼山車絵図に、半田市乙川地区で曳き出される4輌の山車が描かれているそうです。
 市内10地域の山車が一堂に会したのは、1979年です。ちょうど、私が新聞記者になった年でした。
 

 豪華絢爛の屋台で知られる岐阜県高山市の高山祭(写真上)は、春に12輌、秋に11輌が曳き回されます。
 2017年4月29日に高山市を訪れ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から国内33の山車祭りが無形文化遺産に認定されたお祝いの「総曳き揃え」を見ました。一堂に集結した姿は実に見事でしたが、半田のまつりは23輌をしのぐ31輌が集まるのです。
 先行公開される映画は「劇場版 1979 はじまりの物語 ~はんだ山車まつり誕生秘話~」。2021年11月26日、愛知県の4館と岐阜県の1館で上映されます。
 もともと、地元ケーブルテレビ局が2020年4月から1年間にわたって放送する連続ドラマとして企画したのがきっかけでした。 
 1970年代、半田市内の政治状況が二分され、対立が絶えなかったことを憂いた半田青年会議所の若者が31輌の山車を勢ぞろいさせる市民挙げての祭りを企画。前代未聞と言われながら、実現させたドキュメント番組でした。
 劇場版は映画監督の作道雄(さくどう・ゆう)さんが指揮を執り、中心となる山車まつり実行委員会のメンバーは、全員地元キャストで、「地域発」にこだわっています。
 はんだ山車まつりは、1979年の1回目が8万人の観客で始まりました。記者1年目の私は、原稿用紙を使い、ときには公衆電話から原稿を読み上げたり、電車の定期便で写真のフィルムを運んだりした時代でした。
 2017年の8回目は、55万人が見物に訪れる規模になっています。記者生活40年になろうとするこのときは、パソコンと通信機器、デジタルカメラ、スマートフォンで仕事をこなす便利な時代になっていました。
 ただ、いかに技術が進んでも、「地域発」の全国ニュースを発信していきたいという記者の「初心」は変わりませんでした。
 9回目のまつりは、来年10月の予定でしたが、感染症の終息が見えないなかで、2023年10月に延期されました。この機会に、当時の関係者たちのインタビューを織り交ぜたという劇場版をじっくり観賞したいものです。

 この映画の全国公開を目指して、クラウドファンディングでの支援を募っています。記者の仕事と歩みをそろえて、「はじまりの物語」の初心が息づいているようです。
(2021年8月28日)
※はんだ山車まつりの写真は、スターキャット・ケーブルネットワーク提供
※高山祭「総曳き揃え」の写真は、©aratamakimihide撮影

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