松本独断

ショートショート書いてます

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最近の記事

ショートショート「ひとごとじゃない」

「ままごと」は家事はママ、つまり女性がするものだという認識を招く可能性があるという議論が起き、「おやごと」と呼ばれるようになった。 すると今度は、家事は親がしないといけないものなのかという議論が起き、「かぞくごと」と呼ばれるようになった。 すると今度は、家事代行サービスを使う人だっている人にも配慮をすべきだという議論が起き、「ひとごと」と呼ばれるようになった。 すると今度は、ルンバも家事をしてくれてるじゃないかという議論が起き、「いえごと」と呼ばれるようになった。 い

    • ショートショート「法令超遵守」

      押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ!!       (熱湯に落ちる音) ちょっと、押すなよって言ったじゃないですか!もうびちょびちょだよ〜 え、罰ゲームでこれ食べるんですか?うわー、嫌だなー。うわっ、辛い!辛いというかもう痛いわ!!早く、早く水、水、水!! 「いや私もホント彼氏ができなくて〜」 「そりゃそうだよな、その顔じゃあな」 「ちょっと!そっちが言うのは違うでしょー!」        (笑い声) はい、ということで見ていただきました! 「今ではありえない!昔の衝撃

      • ショートショート「仕事が恋人」

         俺は、自分が遊園地のスタッフなんて仕事をすべき人間だとは思えない。この園で、お客様どころか、プライベートの雑談すらまともにできないような人間は俺くらいだろう。  幸い、遊具の手入れをする仕事を任されたおかげで人と話す機会は減ったが、家族連れや恋人同士のお客様を見ると、自分が情けなくなる。  そんな仕事を定年退職するまで続けられたのは、転職する勇気すら無かったからだろう。俺は最後の日まで道具の手入れをし続けた。いつも通り、1人で帰ろうと思って職場を去ろうとした。  する

        • ショートショート「前日が大事」

           若くして始めたラーメン屋だが、それなりにお客さんは来てくれるようになった。ウチはラーメンを安く提供しているので、客層には学生が多い。学生向けに色んなサービスもしている。  特に受験生の彼はウチに毎日のようにラーメンを食べに来てくれている。ラーメンを食べた後に勉強するのが日課だそうだ。歳も近く、顔もどことなく自分と似ている彼を応援せずにはいられなかった。  そしてとうとう明日が受験日という日。その日も彼は来てくれた。 「明日の受験頑張ってね」 そう言うと、彼は 「大将、俺

        ショートショート「ひとごとじゃない」

          ショートショート「タイムノスタルジー」

          「おい、今西暦何年だ!?」 「え?2024年だけど…ひょっとして未来人!?」 「ああ、オレは30年後から来たお前だ。お前に言いたいことが…ん、これスマホ?」 「うん、スマホだけど…」 「うわー!懐かしい!!そうそう、昔はまだこうして手で画面触りながら、操作してたんだよな。ん、これ機種は?」 「iPhone15だけど…てかそれより言いたいことは?オレの未来のこと?」 「15!?ってことはぁ~、おっタイプCじゃん!!あったなあこれ!今の機器はもうクソみたいなやつだからなぁ」 「ね

          ショートショート「タイムノスタルジー」

          ショートショート「満ちぬ月」

          「おじい様、おばあ様!」 「かぐや姫!月の都へ帰ったのではなかったのか?」 「ええ、でもここでの暮らしの方がやはり良いですわ。」 「それは良かった、ではまた共に暮らそう。」 「ええ、ではおじい様、高貴な殿方を集めてください。そして、私への貢ぎ物をさせてください。」 「え?かぐや姫や、突然何を…」 「そして、私を寵愛した帝を呼んでください。それを他の高位な女たちに見せつけるのです。」 「かぐや姫、一体どうしたのじゃ」  かぐや姫はとても美しかったが、それは月の都に生まれた者だ

          ショートショート「満ちぬ月」

          ショートショート「あの頃と変わらない」

           バレンタインにはたくさんのチョコをもらう。そんな甘い夢を見ていたのも昔の話だ。今日も1人、誰もいない家に帰る。郵便受けを開けると、手作りチョコの詰め合わせと小さな封をされた手紙があった。どうやら幼なじみが送ってくれたらしい。少し鈍感で、おっちょこちょいなとこもあるかわいいやつだった。  こんなこともあるんだなと思って、早速チョコを食べることにした。甘いホワイトチョコを食べながら、手紙の封を解いてみた。すると、こう書かれていた。 「私の手作りチョコ渡すのなんか、学生の時以来

          ショートショート「あの頃と変わらない」

          ショートショート「外と内」

          「鬼は外。福は内。」 今日もそんな声があちこちで響く。豆が家の外に投げられる。一年の間、その姿を隠し人知れず家の中に住み着いた鬼たちは、豆が大嫌いだ。豆を避けて家を出ていった鬼たちの代わりに、福の神が舞い込むのである。  家を追い出された鬼たちは人間を憎んだ。なぜあんなに豆を撒いて、自分たちを迫害するのか。そもそも人間自身が悪いんじゃないか。そんな憎悪のこもった鬼たちは夜の暗闇の中で集まる。理不尽に迫害をする人間たちが憎い。人間たちをどんな目に遭わせてくれようか。そんな話を

          ショートショート「外と内」

          みんな苦悩して、実践して、それを共有して、そこからまた考えて、その繰り返しで とんでもない世界に足突っ込んでしまった

          みんな苦悩して、実践して、それを共有して、そこからまた考えて、その繰り返しで とんでもない世界に足突っ込んでしまった

          ショートショート「良いお年を」

          「なあ、どうだった?」 「なにが?」 「俺去年の年末さ、お前に『良いお年を』って言ったじゃん。どう?良い年だった?」 「その答え合わせする奴いねえだろ。」 「で、どうだった?」 「嫌なことばっかりだったよ。財布は落とすし、鍵も落とすし、就活でも散々面接で落とされてさ。なんか落としてばっかの1年だったな。」 「そうか、やっぱりそうなんだな…」 「ん?どういうこと?」 「俺さ、最近気づいたんだけど、俺が『良いお年を』って言った人は、それから1年、何かしら落としまくる年になるらしい

          ショートショート「良いお年を」

          ショートショート「キリギリスのダンス」

          お腹を空かせたキリギリスさんは、アリさんたちの家にやって来ました。 「アリさん、僕はもう食べるものがありません。これでは飢えて、凍え死んでしまいます。どうか食べ物を恵んでください。」 そう言うキリギリスさんに、アリさんは、 「キリギリスさんは夏場、遊びほうけていましたよね?こうなるのは当然でしょう。夏のように好きなだけ踊ったらいいじゃないですか。」 そう冷たく返しました。するとキリギリスさんはこう言いました。 「なんですかその言い方。僕は遊んでたんじゃない!みんなに娯楽を提供

          ショートショート「キリギリスのダンス」

          ショートショート「象が踏んでも壊れない」

           象が踏んでも壊れない筆箱って知ってますか?一時期話題になりましたよね。小学生の間でも人気になった筆箱です。あれね、開発にすごい時間かかったんですよ。そりゃそうですよ、頑丈な筆箱なんか中々作れないもんですよ。いや筆箱も苦労したんですけど、象の方も苦労しましたよ。実験やPRのために1頭飼ったんですけど、全然言うこと聞かないんですよ。    開発や象の購入に費用をだいぶ使ったせいで、調教師を雇う金もなかったんで、仕方なく社員で象を世話することにしたんですよ。しかし全員ど素人なうえ

          ショートショート「象が踏んでも壊れない」

          ショートショート「±4時間」

           1日が28時間になった。突如として夜が4時間長くなったのだ。口では働き方改革だのなんだの言っていたが、具体的な策を出せなかった政府はこれ幸いとばかりに、正式に1日を28時間とし、長くなった夜の4時間は睡眠に使うよう推奨した。睡眠時間の短さが、他の先進国に劣っているところであるという点を、これで補おうとしたのだ。こうして大勢の人が仕事を早めに切り上げ、家に帰って寝るようにした。  というのは表向きの話で、実際にはそうする者はあまり多くなかった。時間の流れが変わっても、体質はそ

          ショートショート「±4時間」

          ショートショート「電車の中の幸せ」

          「金銭的な余裕は幸福に直結しやすい。なぜなら、多くの人々と巡り合える機会を増やすことができるからだ。では、どうすれば金銭的な余裕が生まれるか。本章ではそれについて述べたいと思う。」  いい本だな。このページには付箋を貼っておこう。やっぱり幸せになるには、こうしてあらゆる本を読み、講演会にも参加していくことで、人生を豊かにする秘訣を知るのが大事だよな。今の仕事も努力して勝ち取ったものだ、いずれ成功しないと…ん?隣でぐっすり寝てるやつがいるな。呑気なもんだな。急に起きたかと思った

          ショートショート「電車の中の幸せ」

          ショートショート「食糧危機」

           食糧危機が起こった時、大勢の学者が少しでも早く事態の解決をしようとした。食糧危機になったからと言って、農業や漁業を始めようとする者はいなかったからだ。ある学者は、一粒でお腹がいっぱいになるサプリメントを作った。しかし、味がしないなら食事にならないと不評だった。  そこで今度は、その辺の野草を美味しくする機械が作られた。どんなにまずい野草でもこの機械にかければ、高級サラダのようになってしまうのだ。また、タンパク質を摂るために、その辺の虫やドブに住む生き物たちまで食糧にし始めた

          ショートショート「食糧危機」

          ショートショート「聖夜の決戦」  

           毎年、年末が近づくたび、あらゆる物は血と肉を得て、その体を動かし始める。年末ともなれば、大掃除の際などに物たちは捨てられてしまう。なぜこの1年間、人間たちに粗雑に扱われた挙句、こうも簡単に捨てられなければならないのか。その怒りと恨みがピークに達した物たちは人知れずその身に魂を宿し、血と肉を得て人間たちに復讐せんとその機会を伺っているのだ。  特にそうなりやすいのが、おもちゃだ。飽きっぽく新しいものを欲しがる子どもたちにとって、おもちゃは毎年捨てられるものである。そんな子ども

          ショートショート「聖夜の決戦」