WRA #3-6 「家本マジック炸裂」 J1最終節 G大阪-清水 (家本政明主審)
目次に重要度を星で示しています。お忙しい方は星の多い物のみ読んでみてください。
今回は全6回(15分×6本)の今までのフォーマットで分析します。(次回は投票にあった前後半計2本で行きます!)
この試合はTwitterのアンケートで分析試合を決定しました。ご協力いただいたみなさんありがとうございました!
今回は、家本政明さんが担当するガンバ大阪対清水エスパルスの試合を分析します。家本さんの発信されているNoteに出てくる理論を随時学んでいくので、是非そちらをお読みいただいてからご覧ください!
公式記録
明治安田生命J1リーグ 第34節
ガンバ大阪 0-2 清水エスパルス
審判団 主審 家本 政明 副審1 越智 新次 副審2 西村 幹也 第4の審判員 西山 貴生
警告 退場 なし
シュート数 G大阪 12-10 清水
コーナーキック数 G大阪 11- 4 清水
フリーキック数 G大阪 8 - 7 清水
(J. League Data Siteより作成 https://data.j-league.or.jp/SFMS02/?match_card_id=24193)
★ 75:27 コーナーキック時のボールのマネジメント
細かいところであるが、再開しない側のチームがボールを持っていることはトラブルの原因になることもある。G大阪1東口順昭選手から家本さんがボールを受け取って、清水16西澤健太選手に渡したマネジメントは気が利いている。見えにくいが、素晴らしいマネジメントで勉強になる。
★ アドバンテージ ハンド G大阪14 福田 湧矢
判定ステップ① グレイプレイ
判定ステップ② グレ男②or③
決定⇒反則
スローインの流れで、浮き球がG大阪14福田湧矢選手の肩口付近に当たる。競技規則のハンドの図で言う緑の部分(=セーフ)と赤の部分(=アウト)の境界部分で際どい。距離も近く、意図があるかがカギだが、ここもグレイ。家本さんはハンドとし、アドバンテージをかけた。家本さんの判定を尊重すべきシーン。
★77分ごろ オフサイド 清水16 西澤 健太
副審1越智新次さんサイド。蹴られた瞬間の位置関係が移っていないため、正誤については分からない。
一方、オフサイドの笛が鳴った瞬間、清水16西澤健太選手が外にボールをけったため、家本さんは1対1で戻りながら話していた。マネジメントについての要素分析は割愛するが、(#3-2参照)近くにいたG大阪5三浦弦太選手もあまり大きな反応を示していなかったため、笛を鳴らして事を荒らげずに、軽い注意にとどめたと考えられる。カードを出すのは簡単だが、伝家の宝刀なのだから最後まで出さないのがこのような落ち着いた試合では良いように見える。
(正確な時間書き忘れました。すみません。)
★82:53 ファウル G大阪14 福田 湧矢⇒清水16 西澤 健太
判定ステップ① グレイプレイ
判定ステップ② グレ男④or⑤
決定⇒反則
このシーンではタッチライン際でボールを受け、清水16西澤健太選手がパスをした直後に、G大阪14福田湧矢選手が遅れて蹴ってしまったために、反則。
ポイントについて、「もうそこでいいよ」と声で家本さんはマネジメントしているのがマイクで聞こえた。声掛けでスムーズに再開することは大切なことだと実感する。
★ 89:55 ハンド 清水33 川本 梨誉
判定ステップ① グレイプレイ or まっくろくろすけ
判定ステップ②に行くなら グレ男⑤
決定⇒反則
このシーンでは、清水33川本梨誉選手が浮き球をトラップした時に、意図的に腕でボールをコントロールしたためハンド。家本さんは手を使ったことを示すジェスチャーでマネジメント。
90分終了 アディショナルタイムの表示は4分
★ 91:30 コーナーキックへの時間のマネジメント
清水が勝っている中コーナーキックで時間を使おうとする。再開が遅かったため、笛を吹き、すぐに始めるよう家本さんはシグナル。この時間になると声掛けよりも、笛ですぐに始めさせることの方が効果的であるといえる。タイミングに応じたマネジメントが大切。
また、副審1の越智新次さんは非常に近い位置で、ボールキープがされ、タッチジャッジをするのが難しいシーンであるが、後方に下がることで距離を確保し、正しい判定をした。細かい部分であるが、素晴らしい技術だといえる。
★ 93:45 ファウル 清水15 金井 貢史⇒G大阪45 中村 仁郎
判定ステップ① グレイプレイ
判定ステップ② グレ男④or⑤
決定⇒反則
G大阪が敵陣深く攻め込んでいる中で、この日デビューのG大阪45中村仁郎選手がドリブル突破。止めに入った清水15金井貢史選手が蹴ってしまい、反則。もう一つの判断事項として、反スポーツ的行為での警告が必要かということだが、ゲームの雰囲気からしても、ドリブルの角度・カバーの枚数からしても警告は不要と感じる。
94:58 試合終了 G大阪0‐2清水
この試合のまとめ
主審 家本政明さん 「マジックには種がある」
今日の家本さんのレフェリングは完璧というほかない。データ編で詳しく説明するが、この日のファウル数はG大阪5、清水7と異次元の少なさになっている。その背景には、家本さんのプレーを止めない姿勢がある。アドバンテージ数は合計9回。これは、1回目の西村さんの3回や2回目の池内さんの4回と比較すると多くなっていることが分かる。このプレーを中断しない姿勢こそがスペクタクルなサッカーを保証しているといえる。
まさに、「家本マジック」炸裂といったところなのであるが、マジックにはやはり種がある。判定のために自身の最適と考えるポジションを90分間撮り続けること。90分間統一されたフェアで、タフな判定基準。そして、選手のことを真に思ったマネジメント。動き、判定、マネジメントという基本を高いレベルで継続するからこそ、選手は審判なんかいないかのように美しいサッカーの試合を見せてくれる。
家本さんのレフェリングは異色であるように映る。確かに全体を通せば異色であるのだが、細かな一つ一つの部分は基本に忠実にレフェリングをしているということが今回の全6回の分析でお判りいただけたかと思う。基本を極めた人の行きつく先こそが応用であるということが分かるレフェリングであった。本当に素晴らしいレフェリングで、基本の部分こそ真似したいものである。
副審1 越智新次さん 「得点の喜びを保証するスーパージャッジ」
越智さんは清水の1点目の際に、非常にタイトなオフサイドを見極め、正しくゴールを認めた。この判定はさすがであるし、サッカーにおける最大のよろこびであるゴールという素晴らしいシーンを保証する素晴らしいジャッジだった。
他のシーンでも安定した判定を積み重ね、何事もなかったかのように映る。非常に高いパフォーマンスであったといえる。
副審2 西村幹也さん
西村さんも前半最初のオフサイド判定のミス以外は非常に高い質のステップや判定を継続していた。オフサイドがキャンセルされるシーンが2シーンあったが、副審側からすると上げなければいけないシーンで、西村さんに問題は全くない。
結果論ではあるが、最初のオフサイド判定のミスも得点等重大な結果にはつながらなかったため、問題はないといえる。
第4の審判員 西山貴生さん
今日の西山さんは家本さんのスーパーパフォーマンスの甲斐あって、仕事があまりなかったと感じる。アディショナルタイムの表示や交代は非常にスムーズだった。また、タッチジャッジも西山さんの目の前で際どいものがあったが、的確にサポートされていたように見える。
総括 「経験に基づくレフェリング」
家本さんの経験がなせる業がこの素晴らしいパフォーマンスである。私のようなレフェリーが一朝一夕で出来るものではなく、選手の家本さんへのリスペクトがあってこそのレフェリングである。
そのことを肝に銘じて、私は基本に忠実に正しい判定を重ねていけるようにしていきたい。家本さんのレフェリングは究極の最終目標であり、今すぐできるものではない。
レフェリー始めたての頃は「○○さんみたいになりたい」という気持ちが出てきがちだが、その○○さんはその人しかできない経験をした結果、現在の○○さんがいる。自身の戒めとして、しっかり自分の課題に向き合い、成長するという基本を忘れないようにしたいと感じる家本さんのレフェリングであった。猿真似ではなく将来本当にあのようなレフェリングができるように。
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