「世界会議」@吉祥寺シアター

生と死のあわいで踊り続ける七人の亡霊を見た。亡霊たちも自分が生きていたいのか死んでいたいのかわからないみたい、歩いたり静止したり倒れたり、回転したり飛び跳ねたり。いつも少し苦しそう(あるいは不自由そう)、よくわからないけれどここが居心地の悪い場所だと感じていて、現状から抜け出そうともがいているようでした。

亡霊も物を食べたり争ったり愛し合ったりするんだ、苦しんだり恐怖に怯えたり笑ったり…これはまるで生者ではないか、亡霊に仮託された私たちの姿ではないかと思いました。

日々の鍛錬や身体能力の高さをうかがわせるアクロバティックな動き、日常生活ではまず見ない身体の使い方もすごいと思ったけれど、それよりも日常的に何気なく行っている歩くという動作が、舞台上で意識的に行われ、観られるということでこんなにも違ったものに感じられることに驚きを覚えました。極度に様式化されたものから日常的な動作に近いものまで、様々な足取りを目にしました。そのせいか、帰り道では周りの人々の歩き方や振る舞い、言葉が先ほどの舞台と地続きになっているように浮き上がって見え、ああここにもそれぞれの身体を持った生きている人たちがいる、と思いました。

こうやって後から振り返って言葉にしてしまうと、自分でも何を見たのかわかった気になってしまうけれど、実際に舞台で起こっていたことは全然違うんです。ただひたすら動き、音、声、光が波のようにあって、エネルギーの軌跡や循環を何が何だかわからないまま眺めていただけ。

最初に大きな円をくぐって別のところへ行ったのはヒトラーの亡霊だったことは憶えている。また戻ってきたけれど。呼び戻したのは誰だったのかな。最後に一人出て行ったのは、あれも誰だったんでしょうね…?白、というか薄い生成り色の衣が最後の方にはところどころ黒く汚れて、でも動きの方は余分な力が抜けていって、「亡霊」から「魂のある亡霊」になっていったように見えたのが面白かった。うまく言えずすみません。森の中にいるような音響とか、ランプのやり取りとか、静寂の中一人の人がいつまでも踊っているところとか、美しいと思う瞬間が沢山ありました。もう一度観てみたいし、観た人と感想を言い合いたいと思いました。ありがとうございました。

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