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近代と現代が融合する建築 国際子ども図書館×ケーキセットを堪能【東京上野】

私達の身の回りに当たり前にあって、日々の生活を豊かにしてくれるもの、それは建築と甘いもの。

このnoteでは建築好きのやま菜がおすすめしたい建築と甘いものを紹介していきます。

今回訪れたのは、新旧あわせて様々な文化施設や寺社が混在する東京上野。
日本屈指のターミナル駅である上野駅の公園口を出て、上野公園を程なく進んだ先にとっておきの建築と甘いものスポットがある。


1.国際子ども図書館と甘いもの

今回訪れたのは国立国会図書館国際子ども図書館と、その併設カフェのカフェ ベルである。
この国際子ども図書館は近代建築がひしめく上野エリアの中でも、ひと際長い歴史を持つ建築だ。

国際子ども図書館の外観

その歴史にはちょっとしたいわく(?)、というか紆余曲折がある。
この建物は、元々は1900年代の初頭に帝国図書館として建設が始まったのだが、当時の時勢は日露戦争の真っ只中。
予算の制限が日に日に厳しくなる中、最初に完成したのは当初の計画の四分の一ほどの部分のみであった。

その後昭和4年に少しだけ増築がされたが、戦後はそのまま国立国会図書館の支部として使われ、昭和の時代は約60年に渡ってそのままの形が保たれていた。
大きな契機が訪れたのは、平成に入った1990年代。
ここで建築家の安藤忠雄氏と日本最大の組織設計事務所である日建設計による大規模な修繕・改修工事が行われて、平成14年に現在の国際子ども図書館となったのである。

古典主義様式を基調とした建築からは、明治の世に世界に誇る図書館を建設しようとした意気込みが伝わってくるが、これで当初の計画の三分の一ほどの部分というから驚きだ。
平成14年の改修では、この近代遺構に現代的なガラスの箱を貫入・付随させる手法が大きな柱として採用された。

エントランスはガラスの箱が挿入された現代的なデザイン

例えば建物のエントランス部分にはガラスの筒のようなクリアな箱状の空間が挿入されていて、100年の歴史が蓄積する建物へのタイムトンネルのようになっている。
ちなみに入館料は無料だ。

【国際こども図書館 施設情報】
住所:東京都台東区上野公園12-49
行き方:上野駅より歩いて約10分
竣工:明治39年(昭和4年増築、平成14年改修)※アーチ棟は平成27年竣工
設計:久留正道+真水英夫+岡田時太郎(改修:安藤忠雄+日建設計)
開館時間:9:30~17:00※カフェは16:00まで
休館日:月曜日、祝日、第3水曜日
入館料:無料
公式Webサイト:https://www.kodomo.go.jp/
受賞など:第45回BCS賞

エントランスを抜けた先にあるのが、今回の甘いものスポット、カフェベル。
建物の中庭に面した、光溢れるカフェだ。

入口の販売機で食券を買って、カウンターでトレーを受け取るスタイルが何かほっこりくる。
この日頂いたのは、こちらのケーキセット。

ケーキセットはドリンクとセットで600円というリーズナブルなお値段。
ふっくらケーキと、アクセントのチョコやホイップクリームが疲れた体に優しい逸品だ。
トレーは昭和を感じさせるが、花をあしらったお皿はかなり可愛い。

ガラス張りの店内からは、旧建物の表面に増築された光の回廊や、平成27年に増築されたアーチ棟がよく見える
旧建物の表面に増築された光の回廊はカフェの入り口部分に当たるが、古典主義の重厚な建物に対して、ガラスや金属といった現代的な素材で新旧が対比されるようなデザインになっているのが注目ポイント。

ちなみにこの回廊部分にもテーブルと椅子が置かれていて、混雑時にはこちらの席も利用されている。
即席の座席だが、一人の時などは気軽に利用できる。

季節によっては中庭のテラス席も人気で、爽やかな風とたっぷりの自然光を浴びながら癒しのひと時を過ごせる。
以前テラス席を利用した時は、カツカレーのランチを食べた思い出も。
メニューはケーキセット以外にもカレーなどのランチメニューや、季節によってはかき氷などもある。

2.コントラストが美しい至高の建築を堪能せよ

ケーキセットを堪能した後は、建物の中を散策。
建物は地上部は1階から3階までの3層構造で、旧帝国図書館の豪華な空間を活かした様々な閲覧室がある。

閲覧室は、中高生に嬉しい「調べもののへや」、様々な企画展示が催される「本のミュージアム」、創建当初の装飾や寄木細工の床が特徴的な元貴賓室の「世界を知るへや」など、どの部屋も見ごたえのある空間となっている。
(※閲覧室は原則撮影不可。この日は撮影可能な展覧会が催されていたので写真を撮ることができた)

他にも3階のホールでは図書館自体の歴史を学べる展示があったりと、施設内は建物・展示共にかなり充実している。
当時の技術と知恵の粋を集めてつくられた建築は、今見てもため息の出るような美しさと、堂々とした威厳に満ちていた。

各階はエレベータや階段でも移動できるが、訪れた際にはこちらの大階段も必見。
約20mの高さのある大空間では、精巧で大迫力の装飾と光溢れる空間、創建当初からのケヤキ材を使った建具などをたっぷりと堪能できる。

手すりは当初のものを補修しつつ、面白いのは手前にガラス手すりが取り付けられていること。
昔のままの手すりだと、手すりの高さが足りずに現在の基準を満たすことができないので、手前に透明なガラス手すりが取りつけられているのだ。
ここでも新旧の素材がうまく合わさって、お互いがお互いを際立たせている。

国際子ども図書館では、このように現代の建物に必要な要素を補完しながら、元々の建物をより演出する対比要素がデザインのキーになっているのが大きな魅力だ。

コントラストが美しい3階ロビー空間

もう一つのおススメスポットは、こちらの3階のロビー空間。
この通路部分は元々は外部空間だった場所だが、改修によって新しい通路が取り付けられていて、自然光が溢れる幻想的な空間が広がっている。
ふと左を見ると、元々の建物の外装が目に飛び込んでくるのがとても新鮮だ。

このロビー空間は、この建物に共通するテーマである新旧のコントラストがよく感じられる空間なので、訪れた際は是非注目してみてほしい。

3.あわせて訪れたいおススメのグルメ建築

せっかくなので、国際子ども図書館とあわせて訪れたい上野の建築についても紹介少し紹介したい。
(上野には本当に素敵な建築が多いが、ここでは食事もできるおススメ建築ととして2建築を紹介する)

1つ目に紹介する黒田記念館は、元々は洋画家・黒田清輝の遺産を元にした美術館・美術研究所としてつくられた建物だ。

黒田記念館の外観

黒田記念館は国際子ども図書館のすぐ手前に建っているので、あわせて訪れるのにピッタリ。
建物の設計を手掛けたのは、当時の東京美術学校(現東京藝術大学)で教授を務めていた建築家 岡田信一郎で、彼の代表作ともいえる建築だ。
褐色のスクラッチタイルと古典主義のオーダー柱が印象的な建物は、昭和初期に建てられた上野の近代建築の中でも特に趣向を凝らした名建築といえる。

実はこの建物、少し前まで一時的に休館していたが、耐震補強とバリアフリー工事などを経て、2013年にリニューアルオープンをしている。
リニューアルに合わせて上島珈琲が入ったことにより、気軽に美味しい珈琲やランチを楽しむことができるスポットとなった。

ゆったりとしたジャズが流れる上質な空間でいただいたクロックムッシュは、たっぷりのクリームソースに黒胡椒がピリッと効いていてとっても美味しかった。

【黒田記念館 施設情報】
住所:東京都台東区上野公園12
行き方:上野駅より歩いて約10分
竣工:昭和3年(平成26年改修)
設計:岡田信一郎
開館時間(黒田記念館):9:30~17:00
営業時間(上島珈琲店):7:30~19:00
休館日(黒田記念館):月曜日
公式Webサイト:https://www.tobunken.go.jp/kuroda/

もう1つのおススメ建築 東京文化会館は、上野駅の公園口を出てすぐの場所に建つ音楽ホールだ。

近代建築の3巨匠のひとりル・コルビュジエの弟子である前川國男が設計を手掛けた建築は、日本で初めて組織的な音響設計がなされたことでも知られる名ホールだ。
前川國男は師匠であるル・コルビュジエと共に向かいに建つ西洋美術館(世界遺産!)の設計も手掛けているが、東京文化会館は後期のコルビュジエの影響を受けたコンクリートの大庇の下にガラスのエントランスがある構成となっている。

従来の建築ように権威性を持った玄関ではなく、誰でも気軽に入れる市民ホールというのは当時としては画期的だった。
上野公園と一体となるようなエントランスホールの床には落ち葉のようなデザインのタイルがあしらわれていて、建物内も上野公園の一部であるように錯覚させられるのが面白い。

そんなホールから艶やかな赤色の階段を上がったところにあるフォレスティーユ精養軒は、洋食を中心とした絶品メニューが味わえるおススメのランチスポットだ。

漆黒の天井に星のように輝く照明や、遠くに見える上野公園の緑の借景を味わいながら頂いたふわとろオムライスは、濃厚なソースがふわふわトロトロの卵と絡み合った絶品の味。

はじめて食べるけれどどこか懐かしさもあって、でも今まで食べたオムライスの中でもトップクラスの美味しさという、矛盾しているけど幸せな一品でした。

【東京文化会館 施設情報】
住所:東京都台東区上野公園5-45
行き方:上野駅より歩いて約1分
竣工:昭和36年
設計:前川國男/前川國男建築設計事務所
営業時間(フォレスティーユ精養軒):11:00~19:00
公式Webサイト:https://www.t-bunka.jp/
受賞など:第3回BCS賞

とっても魅力的だった上野の国際子ども図書館と甘いもの体験でしたので、皆さんも機会があれば是非ととずれてみて下さいね。

ちなみに上野エリアの建築巡りにおススメの建築についてはこちらの記事でも紹介していますので、興味のある方は是非併せてご覧ください。
・上野駅周辺で建築巡り!おススメの名建築20選を紹介

今回が第1回となる建築と甘いもの。
不定期ではありますが、これからも心に響いた至高の建築と甘いものを紹介していきたいと思いますので、よろしければお付き合いください。


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