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「普通の人」ってなんだ──映画『勝手にふるえてろ』

映画『勝手にふるえてろ』(2017年公開)は、綿矢りさの同名小説(2010年、文芸春秋)を原作としたラブコメディ映画である。

ⓒ文芸春秋

2017年に松岡茉優主演で公開、ミュージシャンの渡辺大知(黒猫チェルシー)が出演するということで界隈では話題になっていたようだ。

ⓒ2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

本作は、中学時代の片思いを社会人になるまでこじらせ現実と妄想が交錯するなかで”明るく前向きに”に生きていたはずの主人公が、”現実の恋人”の出現によって成長するというストーリーだ。

最初にラブコメディと書いたように、確かに少女漫画的な描写もあるし、笑ってしまうような演出もたくさんあるのだが、この映画の大きな魅力はとにかくすべてがリアルであることだと思った。

この主人公は妄想をこじらせていて、一見、特殊なキャラクターのように思えるが、よく見たら誰もが共有できる要素ばかりではないかと思った。他人と距離を感じて興味があっても話しかけられなかったり、好きな人に近づけなくても満足したり、本心の自分を受け入れられないことにもやもやしたり…

多くの人が某漫画雑誌の主人公みたいなヒーローは現実にはいないと思っているかもしれないが、いわゆる「普通のひと」というのも同じかもしれない。そう感じた映画だった。