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Soft Machineの発掘ライブ盤(1967~1972)

 カンタベリー・ロックの金字塔ことソフト・マシーン / Soft Machineは、発掘ライブ盤の数がやたらと多いことでも知られている。また、それに加えて各音源の録音時期が近いため、前後関係を把握するのがなかなか難しいという問題もある。この記事ではそうした事情から複雑化しているSoft Machineの発掘ライブ盤についての情報を整理すべく、1967年から1972年にかけて録音されたライブ盤を「時系列順に」並べ、それぞれレビューを書いていく。なお、「BBC Radio 1967-1971」「BBC Radio 1971-1974」は録音時期が広範に渡っているため、最後に配置している。

 録音日のデータについてはDiscogsに記載されている情報(ライナーノーツからの引用)の他、Chronicles of the Soft Machine's Liveというサイトも参考にさせていただいた。また、曲名については原則その曲が収録されているライブ盤の表記に基づいているため、アルバムごとに微妙な表記揺れがあることに注意されたい。


Middle Earth Masters (2006)

1-8: Middle Earth, Convent Garden, London, UK, September 16, 1967
9-10: Middle Earth, Roundhouse, Chalk Farm, London, UK, May 1968
11: Unknown, Autumn 1967
Tracks 1-8 1967年9月16日
Tracks 9-10 1968年5月
Track 11 1967年秋

 ロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ケヴィン・エアーズの三人による演奏を収録したライブ盤。公式のライブ盤の中では最初期の時系列にあたり、オリジナルアルバムでは「The Soft Machine」のみに参加していたケヴィン・エアーズの演奏を聴くことが出来るのが最大の特徴。もちろん彼のボーカルも聴ける。音質は最高とまでは言わないが、1967年という時代を考えれば十分過ぎるほどのクオリティだと思う。なお、本作の曲数は11曲と記載されているが、実際にはシークレットトラックとして12曲目に「We Did It Again」が収録されている。内容は、ケヴィン・エアーズとロバート・ワイアットがアカペラで30秒ほど掛け合いをするというもの。

 ケヴィン・エアーズがリードボーカルを取り、ロバート・ワイアットがコーラスを付ける「Clarence In Wonderland」からグッと惹きつけられる。この曲は後にケヴィン・エアーズのソロアルバム「Shooting At The Moon」に収録された。「We Don't What You Mean」も「Clarence In Wonderland」と同様にケヴィン・エアーズ作の歌モノ。こちらは「Soon Soon Soon」と改題され、シングル曲及びレアトラック集の「Odd Ditties」に収録された。ちなみに上記の二曲ではケヴィン・エアーズがギターを弾いている。

「Hope For Happiness」は13分以上の熱演。全体としては初期Soft Machine特有のシュールでナンセンスな雰囲気を味わえる本作だが、マイク・ラトリッジのノイジーなキーボードソロを中心とする白熱したインストパートは、すでに後のバンドのジャズロックへの傾倒を予感させるものとなっている。

「Disorganisation」はマイク・ラトリッジの独り舞台。若干スタジオ版の「Facelift」のイントロっぽく聴こえないこともない。

「I Should've Known」「That's How Much I Need You Now」はオリジナルアルバムでは見慣れない曲名だが、この二曲はデヴィッド・アレン在籍時に録音された「幻の1stアルバム」こと「Jet-Propelled Photographs」(タイトル違いの盤複数あり)でスタジオ版を聴くことが出来る。前者は後に「Why Am I So Short?」「So Boot If At All」として「The Soft Machine」に収録され、後者は「You Don't Remember」という曲と共に「Moon In June」の前半のボーカルパートに流用された。

「A Certain Kind」はロバート・ワイアットが切々と歌うバラード。ちなみにこの曲の作曲者は意外にも(と言ったら失礼だが)ヒュー・ホッパー。こういう美しい曲も書けるんですね……。


Turns On Volume 1 (2001)

Tracks 9, 10, 13 to 16 : recorded 10 November 1967 at Middle Earth, London, UK. [also "Speakeasy Club" in the liner notes]
Tracks 9-10, 13-16 1967年11月10日(?)

 Voiceprintというレーベルからリリースされた初期Soft Machineの発掘音源集。9曲目と10曲目、13曲目から16曲目までがライブ音源で、それ以外はスタジオ音源。ここではライブ音源のみ取り上げる。音質は「Middle Earth Masters」に比べると相当悪く、マニア以外にはお勧め出来ない。

 HighField's Music Random Notesというサイトの解説によると、「May I?」(「Bossa Nova Express」)「We Know What You Mean」「Hope For Happiness」は「Middle Earth Masters」と同じテイクで、「Clarence In Wonderland」は別のテイクとのこと。自分でも聴き比べてみたが、音質の違いゆえに断定は出来ないものの確かにそのように聴こえる(「Clarence In Wonderland」はこちらの方がイントロが長く、ロバート・ワイアットのコーラスの歌い方も異なる)。そうなると演奏日のクレジットが一致していないのが気になるが、恐らく先に出たこちらの方が誤りであろう。

「Save Yourself」「Lullaby Letter」は本作にのみ収録されている演奏。「Lullaby Latter」ではマイク・ラトリッジがキーボードを弾き倒しており、時代が時代だけに仕方ないとはいえ、これでもう少し音質が良ければと思わずにはいられない。


Turns On Volume 2 (2001)

Track 1 to 5: Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands, 10 December 1967
Track 6: Middle Earth, London, UK, 10 November 1967
Tracks 7 to 14: Col Ballroom, Davenport, Iowa, USA, 11 August 1968

Tracks 1-5 1967年12月10日
Track 6 1967年11月10日(?)
Tracks7-14 1968年8月11日

 Voiceprintからリリースされた発掘音源集の第二弾。こちらは全曲ライブ音源。1曲目から5曲目までの音質はかなり厳しいが、6曲目からは割と聴けるようになってくる。ただこれは自分の感覚が麻痺している可能性も捨て切れないので、前作と同様に、よほどのマニアでもなければ手を出すべきアルバムではないことを強調しておく。

 本作の曲名について。1曲目と13曲目の「Moon In June」は誤表記で、実際には1曲目は「That's How Much I Need You Now」、13曲目は「We Don't Remember」である。確かに「Moon In June」のフレーズこそ出てくるが、「Middle Earth Masters」でも触れた通り、この二曲は元々独立した曲であり、後から「Moon In June」に組み込まれたというのが正しい。14曲目の「Esther's Nose Job」も、実態としてはインプロヴィゼーションの後にコーダとして「10:30 Returns To The Bedroom」を演奏するというもので、この曲名は正確ではないと思う。

 クレジットでは「Turns On Volume 1」と同日の演奏とされている「Organistics」はマイク・ラトリッジによる無伴奏のキーボードソロ。「Middle Earth Masters」の「Disorganisation」とよく似ているが、曲の入り方が異なっていたり演奏時間が違っていたりするため、同じテイクかどうかは正直よく分からない。

 1968年の演奏である7曲目以降は音質が多少向上しており、曲間のカットもないため比較的楽に聴ける。「Hope For Happiness」ではマイク・ラトリッジがリフをひたすら繰り返し、その上でロバート・ワイアットがアドリブで歌うという格好良い展開がある。「Clarence In Wonderland」は独立した曲というよりは繋ぎのような演奏で、ロバート・ワイアットがボーカルを取っている。


Live At The Paradiso (1995)

This is a recording from the concert on 29 March 1969 at the Paradiso, Amsterdam, The Netherlands.
1969年3月29日

 ロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパーの三人による演奏を収録したライブ盤。元々ブートレグ(海賊版)として出回っていた音源で、本作の扱いもオフィシャル・ブートレグとなっている。確かにサウンドボード録音をそのまま蔵出ししたようなミックスだが、音質自体はクリアで良好。ただし、最初に演奏されていた「Pataphysical Introduction - Pt. I」「A Concise British Alphabet - Pt. I」「A Concise British Alphabet - Pt. II」は収録されておらず、「Hulloder」からやや唐突気味に始まる。

 セットリストは全て「Volume Two」収録曲。Soft Machineのアルバムの中で「Volume Two」が最も好きな身としてはこれだけで感涙ものだが、この後の時期では出番が激減するロバート・ワイアットのボーカルを聴くことが出来るのが何より嬉しい。惜しむらくは所々でボーカルが上手く録れていないことだが、流石にそこまで多くは望むまい。

 バンドを脱退したケヴィン・エアーズに捧げられた名曲「As Long As He Lies Perfectly Still」は、スタジオ版ではA面とB面のメドレーから独立していたが、本作ではメドレー形式で演奏されている。ロバート・ワイアットはドラムを叩きながら歌っている都合上か、結構ラフな歌い方をしている。

 組曲「Esther's Nose Job」にあたる「Pig」「Orange Skin Food」「A Door Opens And Closes」「10:30 Returns To The Bedroom」のメドレーは、この時点では比較的スタジオ版に忠実なアレンジで、後にメドレーに組み込まれる「Pigling Bland」も演奏されていない。「10:30 Returns To The Bedroom」ではロバート・ワイアットが長尺のドラムソロを叩き、そこからエンディングに突入していく。


Backwards (2002)

Tracks 1-3 were recorded in late May, 1970 in London, England.
Tracks 4-5 were recorded in late November, 1969 in Paris, France.
The first part of track 6 was recorded in October and November 1968 in the USA, while the second part was recorded in mid 1969 in England.
Tracks 1-3 1970年5月21日
Tracks 4-5 1969年12月7日

 時期が異なる二つのライブ音源を収録したアルバム。ライナーノーツでは演奏日は明言されていないが、CotSMLによると上記の日である可能性が高いとのこと。1曲目から3曲目まではロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーンの四人編成。4曲目と5曲目はこの四人にリン・ドブソン(ソプラノ・テナーサックス)、ニック・エヴァンス(トロンボーン)、マーク・チャリグ(トランペット)が加わった七人編成で、この時期のライブ音源は本作を除くと「BBC Radio 1967-1971」にメドレーが一つ収録されているのみであり、貴重な内容となっている。7曲目の「Moon In June」はライブ音源ではなく、ロバート・ワイアットの手によるデモ版。なお、タイトルこそ「Backwards」だが、本作には「Backwards」は収録されていない。

 前半の三曲の演奏は、時期としては「Third」のレコーディング(1970年4月10日及び5月6日)を終えた後ということで全体的に安定している。「Moon In June」は後半のインストパートのみの演奏。曲の終了後にロバート・ワイアットがボイスパフォーマンスを行うが、よく聴くと「Pig」の歌詞を引用している。

 後半の二曲は前述の通り七人による演奏で、ビッグバンドのようなカッチリとしたアレンジになっている。「Hibou Anemore And Bear」ではサイレン・ホイッスルのような音も飛び出してきて面白いが、残念ながらマイク・ラトリッジのキーボードソロの途中でフェードアウトしてしまう。

「Moon In June」のデモ版は約20分の演奏で、アレンジや歌詞は違えど、曲構成自体はこの時点でほぼ完成している。歌詞については自分にリスニング力がないので聞き取ることは出来ないが、断片的に聞こえる単語が「BBC Radio 1967-1971」における「BBC仕様」の歌詞と一致していることから、BBCではこのデモ版を下敷きに歌詞を替えていたことが分かる。また、ライブ版におけるヒュー・ホッパーの印象的なベースソロのフレーズはデモ版でも演奏されており、前半のボーカルパートは全てロバート・ワイアットが手がけていることを鑑みるに、このフレーズも彼が書いたものと推測される。


Noisette (2000)

Recorded January 4th, 1970 at Fairfield Hall, Croydon, England.
1970年1月4日

 ロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーン、リン・ドブソンの五人による演奏を収録したライブ盤。「Third」収録の「Facelift」は1970年1月4日と1月11日のライブ音源を組み合わせて制作されているが、1月4日のライブを収録したのが本作である。ただし「Fecelift」自体は収録されていないことに注意。音質は全編に渡って安定している。なお、当時の録音テープの問題で演奏が途切れていた所は1月10日のライブ音源で補完しているとのこと。

 この時期のセットリストの特徴として、「Eamonn Andrews」「Mousetrap」「12/8 Theme」といったオリジナルアルバムには未収録の曲を演奏していることが挙げられる。これら三曲はいずれも明快なテーマを持つジャズロックの佳作で、リアルタイムでは未発表に終わった曲とはいえ聴き応えは十分。「Mousetrap」の一部として演奏される「Backwards」では、リン・ドブソンが声を出しながらフルートを吹く発声奏法を用いたソロで見せ場を作っている。

 一方で、ロバート・ワイアットの存在感はかなり減退しており、彼の声を聴くことが出来るのは「Hibou, Anemore And Bear」「Esther's Nose Job」「We Did It Again」の三曲のみ。なお、「Esther's Nose Job」には「Pigling Bland」が組み込まれており、以降のライブでもこの形で演奏されている。

 アンコールは「The Soft Machine」収録曲の「We Did It Again」。"We did it again"のフレーズを執拗にリフレインする展開は健在だが、スタジオ版のシュールな雰囲気は薄れ、当時のバンドの音楽性を反映したかのようなノイジーな演奏となっている。

 演奏・音質共に高水準かつ未発表曲も複数収録されている点から、Soft Machineの発掘ライブ盤の中ではまず本作を勧めたい。実際自分が最初に聴いたのもこのアルバムで、その影響によるものか、自分の中では本作での演奏が一つのスタンダードとなっている感がある。


Breda Reactor (2004)

Recorded on 31st January 1970 in Het Turfschip, Breda, Netherlands.
1970年1月31日

「Noisette」とほぼ同時期の演奏を収録したライブ盤。VoiceprintからリリースされたSoft Machineの発掘音源は総じて音質が悪いのだが、本作はその中では一番まともに聴ける内容となっている。音質は「Noisette」に比べると未整理で荒々しいが、かえってそれが迫力を生んでいる感もある。全体的にベースの音がかなり大きく入っているのも特徴で、特に「Hibou Anemore & Bear」冒頭のファズベースは色々と凄まじい。

 セットリストは「Noisette」と同じだが、あちらでは未収録だった「Facelift」が収録されており、ライブの全貌を見渡すことが出来るのが大きい。その代わりにアンコールの「We Did It Again」は二分程度で終わるというオチが付いているが、まあ差別化がなされていると受け取っておこう。

「Facelift」は割れ気味の音質も相まって得体の知れない迫力を醸し出す怪演。中盤のリン・ドブソンによるフリーフォームなフルートソロが秀逸。個人的にこの人にはもう少し長くバンドに在籍して欲しかった。

「Esther's Nose Job」に内包される「Out-Bloody-Rageous (Excerpt)」では、同曲の原型と思しきリフの上でリン・ドブソンがフルートソロを取っている。内容としてはインプロヴィゼーションに手持ちのリフを使ってみたといった所で、興味深くはあるが期待して聴くほどの内容ではない。


Somewhere In Soho (2004)

Recorded at Ronnie Scott's Jazz Club between 20 & 25 April 1970.
1970年4月20~25日

 ロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーンの四人による演奏を収録したライブ盤。以降は「Virtually」までこの編成が続く。Voiceprintからのリリースということで音質はかなり悪く、モノラル録音かつ音の定位が右寄りになっている。例えるなら「海賊版でよく聴くレベルの音」といった所か。演奏も完全収録ではなく、1曲目の「Slightly All The Same」は途中から始まり、「Hibou Anemone & Bear」はマイク・ラトリッジのキーボードソロの途中でフェードアウトしてしまう。

 セットリストは「Noisette」から変更されており、それまで最初に演奏されていた「Eamonn Andrews」の前に「Slightly All The Time」「Out-Bloody-Rageous」が置かれ、代わりに「12/8 Theme」が外されている。ライブの内容が「Third」に近付いたとも言えるだろうか。


Facelift (2002)

Recorded at Fairfield Halls, Croydon, UK on 26 April 1970.
1970年4月26日

 Voiceprintからリリースされた発掘ライブ盤の中ではこれが一番マズい内容だろうか。何と言ってもオーディエンス録音。1曲目の「Slightly All The Same」が途中から始まるのはいいとして、音が浮いたり沈んだり、常時「サー……」というノイズが入っていたりと、どこからどう聴いても海賊版レベルのクオリティである。音量を大きめにしてずっと聴いていると慣れてこないこともないが、少なくとも人に軽々しく勧められるアルバムではない。Soft Machineのライブ盤を全て聴かないと気が済まないという探求者の方はどうぞ。


Live At The Proms (1988)

Recorded by the BBC on 13th August 1970 at the Royal Albert Hall.
1970年8月13日 

 イギリスはロンドンで毎年夏に開催される「BBCプロムス」での演奏を収録したライブ盤。同日には「ミニマル三羽烏」の一人ことテリー・ライリーも出演していた模様。曲数は三曲と少ないが、その分冗長さを感じさせないコンパクトにまとまった演奏が聴ける。現在では「Third」の2007年リマスター盤のボーナスディスクとなっている。

「Out-Bloody-Rageous」はスタジオ版と同様、印象的なテープエフェクト(?)から始まる珍しい演奏。「Esther's Nose Job」はロバート・ワイアットのボイスパフォーマンスの尺が長く取られており、声だけでなくシンセサイザーと思しき音も動員してミステリアスな音空間を演出している。そこからアンサンブルに回帰するまでの緊張感を孕んだ掛け合いも素晴らしい。


Grides (2006)

The CD was recorded on October 25, 1970 at the Concertgebouw, Amsterdam, The Netherlands.
The DVD was recorded on March 23, 1971 at Radio Bremen's TV studio, Bremen, Germany.
CD 1970年10月25日
DVD 1971年3月23日

 CDとDVDがセットになっているアルバム。まずはCDについて。自分はSoft Machineのブートレグには全く詳しくないが、この日のライブ音源の一部は本作がリリースされる前から出回っており、それによると「Eamonn Andrews」と「Esther's Nose Job」の間に演奏されていた「Kings And Queens」がカットされているらしい。本作の収録時間は約79分なので、ライブをCD一枚に収めるための措置と推測されるが、少しもったいないと思ってしまう。

 ネガティブな情報から入ったが、内容自体は演奏・音質共に素晴らしい。ただし、ロバート・ワイアットが声を発する場面は一度もなく、バンドとしては当時レコーディングしていた「Fourth」、さらにはその先の路線をも見据えているように思える。セットリストも以前とは大きく変わっており、新曲「Virtually」「Neo-Caliban Grides」「Teeth」が入った一方で、それまでおよそ20分以上演奏されていた「Facelift」は大幅に短縮されている。

「Neo-Caliban Grides」はキナ臭いテーマの後に一定のリズムがないフリーな空間の中で各楽器が音をぶつけ合うという、いかにも前衛ジャズっぽいサスペンスフルな曲。この曲は後にエルトン・ディーンのソロアルバム「Just Us」(LP時代のタイトルは「Elton Dean」)に収録された。

 ジャズロックの名曲「Teeth」はこの時点ではまだ未完成で、後半のホーン隊によるリフレインの上でマイク・ラトリッジがキーボードソロを展開するパートがなく、代わりにエルトン・ディーンのソロが長く入っている。

「Esther's Nose Job」は「Pig」が割愛されており、前述の通りボイスパフォーマンスのパートもない。また、「A Door Opens And Closes」にあたる部分の「ダッダッダララダッダッダララ……」というスキャットもヒュー・ホッパーのベースに置き換えられている(これはこれで格好良いが)。

 アンコールの「Slightly All The Time/Noisette」は、スタジオ版における後半の9/8拍子のパートから「Backwards」を除いた部分の演奏。「Slightly All The Time」はライブ本編でも取り上げられているが、そちらは前半のパートのみの演奏なので内容は被っていない。

 DVDに収録されているのはドイツの音楽番組「Beat-Club」で放送された映像の完全版。番組で放送されたバージョンでは「Out-Bloody-Rageous」から始まっていたが、本作ではその前に演奏されていた「Neo-Caliban Grides」も収録されており、またBeat-Club特有の過剰なエフェクトやテロップも軽減されている。なお、放送版は2020年にBeat-Clubの公式YouTubeチャンネルにアップロードされたため、現在では誰でも手軽に視聴することが出来る。

(タイトルは「Virtually, Pt. 1-3」となっているがこれは誤りで、実際は「Out-Bloody-Rageous」「Eamonn Andrews」「All White」のメドレー)


Live At Henie Onstad Art Centre 1971 (2009)

Henie Onstad Art Centre, Høvikodden, Norway, 28th of February, 1971
1971年2月28日

 未聴。他の方のレビューをいくつか拝見したが、どうやら曲ごとにトラック分けがされておらず、CD一枚に一曲という形で収録されているらしい。それ実質電化マイルスでは。確かにライブの形式は似ているけど。2012年にディスクユニオンから再発された日本盤は、Discogsのページに各曲の演奏時間が記載されていることからトラック分けされているように見えるが、どの道自分は持っていないので詳しいことは分からない。再々発希望。


BBC Radio 1 Live In Concert / BBC In Concert 1971 (1993 / 2005)

Recorded at the Paris Theatre London, March 11th 1971.
1971年3月11日

 発掘音源界隈ではお馴染みのBBCで放送された演奏を収録したライブ盤。Soft Machine & Heavy Friendsという名義が示す通り、当時バンドのメンバーと親交があったミュージシャン達がゲストとして参加している。BBC関係のライブ音源ということで音質は良いが、後半のメドレーが一つのトラックにまとめられているのは若干不親切な気がする。ちなみに本作は2005年の再発時にタイトルが上記のように変更された他、「Slightly All The Same/Noisette」が追加されている。タイトルの変更についてはレーベルが変わったことが理由だと思うが、アルバムの初出後に全く同じタイトルのライブ盤がもう一枚リリースされた(後述)のも関係しているだろうか。

「Blind Badger」はSoft MachineではなくElton Dean Quintetによる演奏で、ディーン以外のメンバーはマイク・ラトリッジ(キーボード)、ネヴィル・ホワイトヘッド(ベース)、フィル・ハワード(ドラム)、マーク・チャリグ(コルネット)。フリージャズ的な混沌を旨とする作風が多い印象のエルトン・ディーンだが、この曲はツインホーン編成を活かした小粋なエレクトリックジャズといった趣で、比較的リラックスして聴ける。この曲は「Neo-Caliban Grides」と同じく、後にエルトン・ディーンのソロアルバム「Just Us」に収録された。

「Neo-Caliban Grides」はレギュラーメンバーのロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーンにフィル・ハワードが加わったツインドラム編成での演奏。後にロバート・ワイアットの後釜に座るフィル・ハワードとロバート・ワイアットが一緒にドラムを叩いているのは何とも意味深な感じがするが……。演奏自体はツインドラム編成の割には意外と大人しめな印象。

「Out Bloody Rageous/Eamonn Andrews/All White/Kings And Queens/Teeth/Pigling Bland/10.30 Returns To The Bedroom」は、「All White」まではレギュラーメンバーの四人で、「Kings And Queens」以降はロイ・バビントン(ダブルベース)、ロニー・スコット(テナーサックス)、ポール・ニーマン(トロンボーン)、マーク・チャリグ(コルネット)が加わる。実に30分以上にも及ぶ長尺のメドレーだが、全体的に高いテンションを維持しつつも緩急織り交ぜた展開で飽きさせない。最大の聴き所は、マイク・ラトリッジの奔放なキーボードソロとホーン隊による執拗なリフレインの対比が強烈な印象を残す「Teeth」。大編成を活かした分厚いアレンジの「Pigling Bland」も面白い。コーダの「10.30 Returns To The Bedroom」では、まさに英国ジャズロックの雄たるSoft Machineここにありと思わせるような猛烈にドライヴする演奏を聴かせてくれる。

 アンコールと思われる「Slightly All The Time/Noisette」は再び四人による演奏。曲の再現というよりはソロ回しに近い内容で、マイク・ラトリッジとエルトン・ディーンのソロをフィーチャーした後、「Noisette」のテーマで締めくくる(テーマへの入り方が結構強引で笑える)。音質はライブ本編に比べると大分落ちるが、聴くのに支障をきたすほどではない。


Virtually (1998)

Recorded March 23rd, 1971 at the Gondel Filmkunsttheater, Bremen, Germany.
1971年3月23日(アーリー・ショー)

 ロバート・ワイアット在籍時のライブ盤の中では最後期にあたるアルバム。音質は問題ないが、各メンバーの楽器の音が左右にクッキリと分かれている上に、その割り振りがベース=右、ドラム=中央、キーボード・サックス=左となっているため、必然的にベースの音がかなり目立つ。なお、演奏日は「Grides」のDVDと同じだが、本作に収録されているのはそれとは別のテイクである。まず本作にあたるフルセットのライブを行った後、カメラを入れて映像を撮影したという流れだったようだ。

 この時期のロバート・ワイアットはバンド内での発言権を殆ど失っていたと思われるが、本作では「Fletcher's Blemish」で後のMatching Mole(ロバート・ワイアットがSoft Machineの脱退後に結成したバンド)時代を彷彿とさせるボイスとドラムを絡めたシュールなパフォーマンスを行ったり、「Out-Bloody-Rageous」終了後のボイスパフォーマンスのパートで「Hope For Happiness」の歌詞を引用したりと、自分の出番では割とやりたい放題だったりする。

「Out-Bloody-Rageous」以降の六曲は「BBC In Concert 1971」でも演奏された必殺メドレー。「BBC In Concert 1971」では「Out Bloody Rageous」が中間部から始まっていた(元から短縮されていたのか編集でカットされたのかは不明)ので、演奏時間はこちらの方がさらに長い。「Teeth」はホーン隊が不在のため、エルトン・ディーンによるエレピのバッキングの上でマイク・ラトリッジがキーボードソロを弾く形となっている。


Drop (2009)

Recorded live during the German tour in the Fall of 1971.
1971年11月7日

 1971年8月にロバート・ワイアットがついにバンドを脱退し、代わりにエルトン・ディーンの推薦によってフィル・ハワードが加入。本作はその時期のメンバーによる演奏を収録した唯一のライブ盤である。何しろオリジナルアルバムでは「Fifth」の旧A面の三曲でしか聴けない編成なので貴重と言う他ない。音質はこもりがちで所々にノイズが乗るなど決して良くはないが、個人的には十分聴ける範囲だと思う。

 注目すべきはやはりフィル・ハワードの演奏だが、音の隙間をくまなく埋めるような手数の多さに圧倒される。恐らくはエルトン・ディーンが意図していた通り、それがフリージャズ的な熱狂に寄与している場面も多く、全体的に寒色系のイメージが強かった「Fifth」とはまた違ったバンドの姿を垣間見ることが出来る。一方で、「Out-Bloody-Rageous」のような従来の曲でもフリーフォームなスタイルを崩さず延々と叩き続ける様は一歩引いた視点から見るとちょっと笑ってしまう所もあり、この辺は評価が難しい。実際、ヒュー・ホッパーとマイク・ラトリッジはバンドの音楽性がフリー寄りになっていくのを好ましく思わず、この後フィル・ハワードはジョン・マーシャルと交代することになる。


Live In France / Live In Paris (1995 / 2004)

Recorded live in Paris at L'Olympia, May 2nd 1972.
1972年5月2日

 ドラムがフィル・ハワードからジョン・マーシャルに交代した時期、オリジナルアルバムで言えば「Fifth」の旧B面と同じメンバーによる演奏を収録したライブ盤。モノラル録音だが音質自体は良好。再発時にタイトルが若干変更されている。

 ジョン・マーシャルはテクニック的にはロバート・ワイアットを上回るとの評を見かけたことがあるが、反面彼が加入したことでそれまでのバンドにあった野放図な勢いやケレン味は後退したように思えてならない。この後、Soft Machineはカール・ジェンキンスの加入やアラン・ホールズワース、ジョン・エサリッジといったギターヒーローの参加によって新たな魅力を備えていくのだが、そこに至るまでの過渡期にあたる本作はどうも中途半端な印象が強い。妙に淡々と進行する「Facelift」はその象徴のようにも思える。


BBC Radio 1 Live In Concert / Softstage: BBC In Concert 1972 (1994 / 2005)

Recorded on 20.7.71 at the Paris Theatre and broadcast on Radio 1 on 2.9.72.
1972年7月20日

 エルトン・ディーンが脱退し、代わりにカール・ジェンキンスが加入した時期のライブ盤。「Six」の一枚目は1972年10~11月のライブ音源を収録しているが、本作はそれより数ヶ月前の演奏となる。「BBC In Concert 1971」で触れた通り、アルバムの初出時点ですでに全く同じタイトルのライブ盤がリリースされていたが、再発時に両方ともタイトルが変更されたため、現在ではアルバム名の被りは解消されている。

 開幕カール・ジェンキンスが「Fanfare」のフレーズを一回多く演奏しかけるというミスをやらかしていて微笑ましいが、演奏自体は「Six」よりもこちらの方が断然エネルギッシュだと思う。むしろ「Six」はライブ演奏にしては淡々とし過ぎているので、アルバムへの収録を前提として演奏していたのかもしれないが……。この時期はエルトン・ディーンもギタリストも不在ということで一見パンチが足りないように見えるが、その分マイク・ラトリッジがリード奏者として奮闘しており、これはこれで魅力的だと思う。ツインキーボード編成を活かした幻惑的な演奏もプログレ好きには堪らない。また、カール・ジェンキンスの手によるミニマルかつメカニカルな雰囲気を持つ曲は後のフュージョン期とも違う独特の面白さがあり、個人的にはこの路線をもう少し続けて欲しかった。


BBC Radio 1967-1971 (2003)

1-1 to 1-5 [Line-up: Kevin Ayers, Mike Ratledge, Robert Wyatt] recorded 5.12.67 at BBC Radio Top Gear, Aeolian Hall, Studio 2; first transmission 17.12.67.
Remastered Sounds Good, Canada.
1-6 [Line-up: Brian Hopper, Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt], 1-7 [Line-up: Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt] recorded 10.6.69 at BBC Radio Top Gear, Maida Vale, Studio 4; first transmission 15.6.69.
1-8 [Line-up: Robert Wyatt] recorded 10.11.69 at BBC Radio Top Gear, The Playhouse Theatre, Hulme, Manchester; first transmission 29.11.69.
1-9 [Line-up: Elton Dean, Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt] recorded 4.5.70 at BBC Radio Top Gear, The Playhouse Theatre, Hulme, Manchester; first transmission 16.5.70.
2-1, 2-2 [Line-up: Elton Dean, Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt] recorded 15.12.70 at BBC Radio Top Gear, Maida Vale, Studio 4; first transmission 2.1.71.
2-3, 2-5 [Line-up: Elton Dean, Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt], 2-4 [Line-up: Robert Wyatt] recorded 1.6.71 at BBC Radio Top Gear, Maida Vale, Studio 4; first transmission 26.6.71.
2-6 [Line-up: Mark Charig, Elton Dean, Lyn Dobson, Nick Evans, Hugh Hopper, Mike Ratledge, Robert Wyatt] recorded 10.11.69 at BBC Radio Top Gear, The Playhouse Theatre, Hulme, Manchester; first transmission 29.11.69.
Disc 1
Tracks 1-5 1967年12月5日
Tracks 6-7 1969年6月10日
Track 8 1969年11月10日
Track 9 1970年5月4日
Disc 2
Tracks 1-2 1970年12月15日
Tracks 3-5 1971年6月1日
Track 6 1969年11月10日

 BBC関係の音源をまとめた二枚組のコンピレーション盤。本作より前に「The Peel Sessions」というBBC音源集がリリースされていたが、兄弟作にあたる「BBC Radio 1971-1974」と合わせてそれの上位互換的な内容となっている。全編モノラル録音。ちなみに本作のジャケットは紫色で、「BBC Radio 1971-1974」は青色なのだが、ひょっとしてThe Beatlesの「赤盤」「青盤」を意識していたりするのだろうか。

「Facelift/Mousetrap/Noisette/Backwards/Mousetrap Reprise」はロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパーの三人に、ヒューの兄である管楽器奏者のブライアン・ホッパーが加わった四人編成による演奏。「Facelift」ではサックスとフルートが同時に入っている箇所があるため、恐らく多重録音を駆使しているのだろう。「Noisette」と「Backwards」ではヴィブラフォンと思しき音が入っているが、これはかなり珍しいと思う。

「The Moon In June」はロバート・ワイアット、マイク・ラトリッジ、ヒュー・ホッパーの三人による演奏。この稀代の名曲をロバート・ワイアットのボーカル付きで聴けるだけでも興奮を抑えられないが、さらに歌詞が「BBC仕様」となっており、例えばスタジオ版では"Living can be lovely, here in New York State"と歌われていた所が"Playing now is lovely, here in the BBC"に置き換えられていたりする。自分はカンタベリー系のこういうメタネタや内輪ネタ満載の歌詞が好きなんですよね……。演奏のクオリティも高く、特に2分20秒辺りからのヒュー・ホッパーのベースソロは(あらかじめ書かれたフレーズではあるが)メランコリックで素晴らしい。

「Instant Pussy」は緊迫感のあるピアノの伴奏の上でロバート・ワイアットが歌う曲。後半は一転して柔らかく切ない曲調になる。なお、後にMatching Moleの1stアルバムで同名の曲が発表されているが、恐らく後半のパートの進行が使われているものと思われる。

「Dedicated To You But You Weren't Listening」はキーボードによるイントロとアウトロ以外は伴奏がなくロバート・ワイアットのボーカルのみで、それにエコーをかけて何重にも聴こえるようにしている。酩酊しかけてきた所で不意にエコーを切ってハッとさせる演出が素敵。

「Mousetrap/Noisette/Backwards/Mousetrap Reprise/Esther's Nose Job」は「Backwards」(ライブ盤)と同じメンバーによる演奏。こちらも「Third」の重厚長大な作風を思わせる内容で興味深く、七人編成での活動がわずか二ヶ月で終わってしまったのは改めて残念だと思う。せめてこの時期のフルセットのライブ音源を聴いてみたかった。「Backwards」ではマーク・チャリグがソロを取っている。


BBC Radio 1971-1974 (2003)

1-1 to 1-3: [Line-up: Elton Dean, Hugh Hopper, Phil Howard, Mike Ratledge] Recorded 15.11.71, BBC Radio 1 John Peel Show, Playhouse Theatre; first transmission 24.11.71.
1-4: [Line-up: Hugh Hopper, Karl Jenkins, John Marshall, Mike Ratledge] Recorded 11.04.72, BBC Radio 1 John Peel Show, Maida Vale Studio 4; first transmission 18.07.72.
1-5, 1-6, 2-1, 2-2: [Line-up: Roy Babbington, Karl Jenkins, John Marshall, Mike Ratledge] Recorded 30.10.73, BBC Radio 1 John Peel Show, Langham 1; first transmission 20.11.73.
2-3 to 2-5: [Line-up: Roy Babbington, Alan Holdsworth, Karl Jenkins, John Marshall, Mike Ratledge] Recorded 10.06.74, BBC Radio 3 Jazz In Britain; first transmission 26.08.74.

Disc 1
Tracks 1-3 1971年11月15日
Track 4 1972年4月11日
Tracks 5-6 1973年10月30日
Disc 2
Tracks 1-2 1973年10月30日
Tracks 3-5 1974年6月10日

 BBC音源集の「青盤」。一枚目の1曲目から4曲目まではモノラル録音だが、5曲目以降はステレオ録音となっている。

 一枚目の1曲目から3曲目まではフィル・ハワード在籍時の演奏。見慣れないタイトルの「Welcome To Frillsville」はインプロヴィゼーション。最初はSoft Machineによくあるドシャメシャ系の演奏だが、フィル・ハワードが刻むリズムの上でエレピのソロが奏でられる場面もあり、なかなか聴き応えがある。

「Fanfare/All White/MC/Drop」は「Six」と同じメンバーによる演奏。「All White」ではカール・ジェンキンスが、「Drop」ではマイク・ラトリッジがそれぞれソロを取っているが、合間に演奏される「MC」が緩徐楽章のような役割を果たしていて良いアクセントになっている。

「Hazard Profile Part 1」はマイク・ラトリッジ、カール・ジェンキンス、ロイ・バビントン、ジョン・マーシャルによる演奏で、「Bundles」とは異なりギターが入っていない。この曲の特徴的なリフはカール・ジェンキンスの古巣であるNucleusの「Song For The Bearded Lady」(アルバム「We'll Talk About It Later」に収録)から持ってきているため、ギターとキーボードという楽器の違いはあれどリフ自体はすでに演奏されている。

「Hazard Profile Parts 1-4」はアラン・ホールズワース、カール・ジェンキンス、ロイ・バビントン、ジョン・マーシャルによる演奏。「Bundles」のレコーディング(1974年7月)より約一ヶ月前の演奏ということで、アレンジはほぼ完成形にある。もちろんアラン・ホールズワースの長尺のギターソロも聴ける。なお、タイトルには「Parts 1-4」とあるが、実際にはPart 5まで完奏されている。


番外編

Live 1970 (1998)

Tracks 1 & 2: recorded live at Swansea or at London School of Economics on February 13 or 14, 1970. Previously unreleased recordings.
Tracks 3-11: recorded at "Henry Wood Promenade Concert", Royal Albert Hall on August 13, 1970. Previously released on Live At The Proms 1970.

Tracks 1-2 1970年2月13日
Tracks 3-11 1970年8月13日

 本作の3曲目から11曲目まではすでにリリースされていた「Live At The Proms」と同じ内容、しかも「Out-Bloody-Rageous」のイントロが3分ほどカットされている上に音質も劣っているという体たらくで、未発表のライブ音源は1曲目と2曲目のみという内容の薄さから、当初はスルーを決め込むつもりでいたが、Spotifyにアルバムがあったのでこの機会に聴いてみた。

 演奏の時期としては「Breda Reactor」と「Somewhere In Soho」の間にあたるが、この日はリン・ドブソンが参加している一方でエルトン・ディーンは不参加という変則的な編成となっている。これでフルセットのライブ音源であれば価値も跳ね上がっていただろうが、この二曲ですらフェードインに始まりフェードアウトに終わるという有様で、音質もかなり悪い。

 新規の曲は(不完全収録の)二曲のみということで、個別の曲の感想については正直あまり書くことがないのだが、「Moon In June」におけるマイク・ラトリッジのキーボードソロはここでも冴え渡っている。終盤ではキーボードのロングトーンにリン・ドブソンが絡んでかなり盛り上がるが、演奏が落ち着いた所で無情にもフェードアウトしてしまうのが返す返すも残念。

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