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「仮面ライダーBLACK SUN」に日本製コンテンツの限界を見た(ネタバレあります)

うーーーーーん…。

やっぱり、そもそもが日本製コンテンツの限界、日和的なところが出てしまってはいるわなあ。演者がいいだけに、「そこなの?」「それはどうなんだ」的なことを感じられてしまった

よかったところ

まずは、良かったところを探そうか。

今野浩喜さんの極右の演技は大変に素晴らしかった。今後は、国内外でもどんどん悪役を演じて、ピラニア軍団くらいに出まくって欲しいと思う。ただ、彼が演じる活動家の最後が普通に死ぬっていうのは、もう少し展開がほしかった。確かに、ひでえことをやったからそうなるけれども、それは信彦的ではないんじゃねえのか?と思ってしまいまして。
怪人化して醜くなっていく姿を、彼の仲間がおののいて、「怪人は死ね!」といってボコボコにされるとか、結局自分が嫌悪していたものになって許しを請おうとするところとか。そこをやってほしかった。

ルー大柴さんの総理の演技もよろしかった。カツカレーにマヨネーズをかけるという悪食というか、どう見ても前総理を連想させるムーブが描かれていたのが良かった。実は、ルーさんは「仮面ライダードライブ」でも非常に胡散臭い「アバンギャルド」を連発しまくる怪人を演じられていたので、ルー語封印で悪役を演じられたのは良かった。韓国映画で日本帝国の悪徳軍人を演じていただきたいと思う(これは最高峰の褒め言葉です)

クリーチャー、ここでは怪人か、あれの造形も非常によかった。知っているやつ(レインボー造型企画とかブレンドマスターとか)ではないところが、違うことをやるんだぞ!という意志を感じられた。

西島さんは、「これは南光太郎だよ!」という感じで良かった。5話の「ゆ"る"さ"ん"!」も、これぞ光太郎!という感じでよろしかった。だいたいこれくらいかねえ。

言うほど左翼っすか?

うーん、言葉を選んだ上でいうけれども、「そこはそうじゃなくないか」「そりゃ、いい作品だったと思いたいですが」という言葉はつけてしまう。つまり、一本の作品としては「あまりオススメはできない」「政治的なメッセージを入れるな、というのは大反対」「それは別としてオススメはできない」という感じでした。

政治的なメッセージを盛り込んだ作品は、東映はかつてはバンッバン出しまくっていたのですよ。それこそ、「温泉芸者シリーズ」や「恐怖女子高校シリーズ」なんか強烈ですよ。ものすごい戦争反対を入れ込んでいるし、暴行や悪事は絶対に許さない、という意地を感じる。「これが学校の葬式だ!」と、黒い日の丸を映すところまでやっちゃっているんですよ。

それくらい左翼だったか、というと答えは「ノー」ですね。

だから、右翼がこの作品にブチ切れている理由は人種差別主義者を人種差別主義者として描いたからだろうけども、やるんだったら、もっとそこを徹底的に突き詰めなさいよ、といち左翼として思ったわけでございます。

感じた違和感

やはり、ここに一番違和感を感じましたね。さきほど、白倉Pの悪い癖、というのを書きました。彼は一応製作総指揮の立場である以上、一応作品にどれほど関わっているかはわからないですが、彼の悪い癖というのは、「流行り物に割りと便乗しやすい」「それが作品の良さに結びついているかは別」というのがあります。

「仮面ライダージオウ」という作品は「バーフバリ」シリーズに思いっきり影響を受けています。では、あの作品で心を動かされたように、「ジオウ」では動かされたか?というと「そうでもない」のが正直な感想でした。映画版の話をすると「ノリダー出たところで、子どもたちが意味不明になっていたぞ」「なんだよ平成キックって」という感じになってしまったんですよ。

「そこなのか?」という違和感が常にあって、それが「BLACK SUN」でも顕著に現れています。

怪人差別(人種差別主義者)がカジュアルにある、というのは1話の活動家に「写真を撮って下さい!」と言うシーンはよかったと思うし、住居や学校などにズカズカと上がり込んでくるというそういう恐怖感の描き方は良かった。

ただ、そこで終わってしまっているように思えるのですよね。

確かに、人種差別主義者らが怪人をリンチして吊るし上げるような悪行を行った、ということは描いてはいた、しかし、それらが「制度」「根の深さ」までに行っていたか?というとそこはどうも怪しい。

例えば、差別というものを徹底的に描くとするならば、西村博之的なやつが扇動を煽っているとか、役所が高圧的に水際対策をやるとか、警察官と差別主義団体が結託していたとか(よく、守られていますからね)、何だったら警察側が情報を漏らすとか、そういうことを少しは入れていれば違っていたかもしれないんですが、やっぱりそこが無かったんですよね。

警察というのは、そういう意味で暴力装置といいますか、制度化された差別組織である、ということをそこをはっきりとやっていただきたかったわなあ、でもそれが「今の」日本のコンテンツにできるのか?というと、まあ、そこは…無理でしょうな。

そこは再現しなくていいんですよ

と思った箇所がありまして、それは怪人が泡になるシーンです。初期の「仮面ライダー」では、怪人とか襲われた人間は、泡になって逆再生で消えるという死に方をしていたわけなんですが、「え!?そこを再現!?」というところで違和感を感じました。
10話のてつを(歌唱出演)も、そりゃあちゃんと面白かったら「おお!」となったかもしれないんですが、「ええ…」となりました。「シンゴジ」にも顕著に感じたことなんですが、悪い意味での「どうしてそこをやるのか?」というところを感じました。

言いたかったのは、「小ネタは世界観や価値観を納得させたうえでやってくれ」ということでした。でもまあ、ルー大柴の演技は素晴らしかったので、定期的に悪役を演じて、次は爆破とかがいいんじゃないんでしょうか、と思いました!ジャンジャン!

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