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Poem

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Arimの詩…風のなかを通り過ぎる時、今日はどんな風景が広がるだろう…。それは、林の中を吹く風とは限らない。街の中を吹く風、貴方との境界を渡る風。…詩と歩く。
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2018年6月の記事一覧

Poem)風は未来から吹いてくるって…

Poem)風は未来から吹いてくるって…

風は未来から吹いてくるって
知ってる?
風は地球の回転を
少しだけ手伝っていて
過ぎ去った時間にも届いている
肩をトントンとされて
犬も猫も鼻をクンクンとするのは
そのせいだ
忘れ去られた夢の断片にも
風は触れていく
眠っていた種を揺り起こし
虫に透き通った羽を貸しては
光の横を通り過ぎていく
今日の悲しみを消して下さい
夕方の風には
1度だけお願いごとができる

風は今日の誰かの悲しみを
残さぬ

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Poem)ところで…

Poem)ところで…

ところで、うちに来たのは何回目かね。
初老の紳士に声をかけられる。
前から入ってみたいと思っていた古いレンガ作りの古本屋。古本屋かどうかは本当のところわからないけれど、店先の棚には今朝の新聞も売っている。

あの、初めてなんです、何度も通りがかってはお訪ねしたいと思っていて。
きみはウインドの白い本を欲しかったのかな。あれは昨日売れてしまったよ。
会話が噛み合わないけれど、気持ちが通じている、

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Poem)リーディングのための詩…「外外外、うちうちうち」

Poem)リーディングのための詩…「外外外、うちうちうち」

外外外
うちうちうち

ヘリを歩いているのだろうか
真ん中を歩いているのだろうか
水の中を歩いているのだろうか
あるいは外を

外とは何を指すのか
外を決めるのは外とは思わない外かもしれぬ自分の内側
ひるがえれ、ひるがえれ、
外とうち
だが
ヘリを歩いている
実は確実な現在がエッジに支えられている、
と知るのだ。
痛みが、幻影でない証拠だとしたら
自分の生命を手に入れるために
ヘリを歩く、
外とう

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Poem)聴こえる

Poem)聴こえる

声を聴いてみる
あの人この人の
昔住んでいた街の、誰にも
そんな記憶があって
良く言われたこともあったし、
悪く言われたこともあった
背の違いや足の速さの違いなんて
問題ではなかった
きみの記憶にある俺
俺が記憶するきみのあいだには
隔たりがあったのかもしれない
だけど、いいんだ、
それはそれ、そういうもの
今に続くことと
今、きみを知るということ
集めた観念語を端から捨てるがいい
きみの憧れと

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Poem)ぼうぼうと

Poem)ぼうぼうと

芒芒と
今にも燃え出しそうな
緑の植物の中を
ぼうぼうと歩いていく
季節はやってきて
ぼうぼうと長く伸びていくのは
ヒメジオンばかりではなくて
目を細めてみると
あの人はいないだろうか
幻影の人
夕陽の残り火の影ろいに
ぼうぼうの風に揺れる
誰ともわからぬ細い影を
踏んで歩く
#詩 #現代詩