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Poem

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Arimの詩…風のなかを通り過ぎる時、今日はどんな風景が広がるだろう…。それは、林の中を吹く風とは限らない。街の中を吹く風、貴方との境界を渡る風。…詩と歩く。
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2018年11月の記事一覧

Poem)包みこむ…

Poem)包みこむ…

お水を飲む
コップに両手をそえて
トクトクと
どこかで生まれている
湧き水を思いながら

透明な水が
どこから来たか
道のりを一緒に遡る

きれいな水を沸かして
コーヒーを淹れる
カップを両手で包み込み
コーヒー豆はどこから来たのか
多くの人の手にありがとうと
言ってみたくて
遠くに流れる時間を
包みこむ
#詩 #現代詩

Poem)ぬくもり…

Poem)ぬくもり…

母は、私の名を忘れてから
穏やかさの中にいる
名づけては、喜びを生きてきた母親
もともとあなたのお腹の中にいた時に
は、私には名前がなかった
元に戻ったのだね
あなたのぬくもりだけを
感じる時間に
#詩 #現代詩

Poem)コーヒータイム

Poem)コーヒータイム

たまには、人通りを歩いていく
狭い路地を抜けた右角に
いつも気になる古い木の扉がある
店の前で立ち止まり
一呼吸して、開けてみる
若いマスターが1人
コーヒーを落としている
お客は誰もいない
カウンターには、淹れたての、
そして徐々に冷めていくコーヒーの
注がれたカップが1列に並んでいる

“貴女が来ることを知っていました
それがいつかはこのコーヒーが
知らせてくれていました…“

時を測る方法に

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Poem)三行詩の恋

Poem)三行詩の恋

Ⅰ)
ここにいた
そこにもいた
私の心に触れた鳥

Ⅱ)
角砂糖は歴史の中で
溶けだした、シロップへ。
プラスチックな恋
#詩 #現代詩

Poem)時間の秘密について

Poem)時間の秘密について

時間を歩くしかない。そう言われて、今日は時間の青い帯を歩いていく。きみの家の時計は何時をさしていたんだい。午後5時です。そうか。私の家の時計は午前零時だった。だから私は黄色い帯を歩いていく。老人は両腕にたくさんの時計を巻きつけて隣を歩く。同時にいくつもの時の音を聞くのですね。向こう側には赤い帯を歩く青年がいて、老人の服の陰には、黄緑色のリボンを分けてもらった子供たちが歩いている。もう少し時間の秘密

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Poem)鳥が梢に止まるように…

Poem)鳥が梢に止まるように…

天からのはしごを伝わってahmというように、繋がらない記号の端々が空には雲のように生まれて、風に泳ぎ誰かの足元に漂着する。今、ママンは留守です。通りかかり家の戸口で聞こえてくる言葉。

鳥が梢に止まるように、声は急に意味を孕んで届く。それを聞いた幼子の目は涙で潤む。それを聞いた少年の目は大人びて光る。訪ねた友達は、思案顔で夕焼けまでの時間を歩き続ける。
#詩 #現代詩

Poem)もうひとつの空

Poem)もうひとつの空

海の底を泳ぐ魚の口から
プクプクと生まれでる青い泡を
あなたにあげる
名付けられないほどの青い宝石を
鏤ばめて
暮れないもうひとつの空が
ひろがるように
#詩 #現代詩

Poem)どんぐりの林の奥に…

Poem)どんぐりの林の奥に…

悲しみの泉を覗きに行ってはいけないと、代々母たちは子供に言い伝えてきた村がある。
今はこの村は町になり、市になったが、街外れには、そこだけ別の時間が流れているような、こんもりとした林が残っている。

子供たちはどんぐり拾いに、樫の木ブナの木が集まるその丘へ出かけていく。
遠い昔の寝物語のように、忘れてしまったわらべ歌のように、時々思い出すこと。
そうそう、あの林の奥の方にある池には行っては駄目よ。

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Poem)「猫アート」(まえばし猫町フェス2018参加作品)

Poem)「猫アート」(まえばし猫町フェス2018参加作品)

猫はどんな場所にも
足跡をつけて歩く
地球の歴史に
猫の名前を残すためにね

あぁ、だけど少し待って…
セメント塗りたて
とか、
アスファルト舗装中とか、
陶器作りたて
とか、
注意書きの縦看板を
立てといて下さいにゃ

あっちにもこっちにも
猫の足跡アートつけて歩いて行く
けれど、
猫の足の裏は、吉兆を刻印する
大事な大事な宝ものなんだ

※“まえばし猫町フェス2018“参加作品
「猫アート」詩

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Poem)「猫が闊歩する街」(まえばし猫町フェス2018参加作品)

Poem)「猫が闊歩する街」(まえばし猫町フェス2018参加作品)

猫は今日も歩いている
この路地は、わたいらのもんだよ、
猫が闊歩する街は
いい街に決まってる
そんなふうに呟いて
にゃーて、
鳴いてみせる
“平和通り“って
猫が最初につけた名前
らしい
オイラたちの街だからにゃ、
人間よ、そこんとこにゃ、
よろしく!

※“まえばし猫町フェス2018“参加作品
「猫が闊歩する街」詩Arim ・写真黒江龍雄さん

@tk9410さんのツイート: https://t

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Poem)ひるがえる意味から意味の衣装を着替えて、

Poem)ひるがえる意味から意味の衣装を着替えて、

ひるがえる意味から意味の衣装を着替えて、舞台に立つ女優に手渡す台本には、あいうえおの文字ばかり。ああそうなの、昨日から頭が痛いのよ、歯痛とはあの永訣の朝に始まった。この痛みのお陰で、おおあの過去とは別れることができないの。いいことないわ、行っておしまいなさい。母は言ったわ。ううんそうもいかないの。私はそんな返事ばかり。ええ加減もう冬が来るというのに。友達は笑っている。花は地面にくるまる季節に。私も

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Poem)(しののめ)の駅から…

Poem)(しののめ)の駅から…

東雲の駅に向かった
夜はどこまで続くのか
トンネルをいくつも
くぐりながら、
私の歩調は変わらない
もう少し急いだ方がいいのか
とも思うけれど
歩く速さというのは
決まっていて
そこで今日咲く花に出会う
(しののめ)の駅から
電車に乗って
そこからいつも始まる道
#詩 #現代詩

Poem)もし君の時間は…

Poem)もし君の時間は…

もし君の時間は浅くて、もっと深い時間が必要だと言われたなら。誰にも生まれた時から自分の足の裏が地の底を探し得ない落下していく悲しみの日々があることをそっと話してみて。話すとは放つことだと思っている。空が一日の始まりと終わりに焼けていくのは地上に置かれた私たちへの慰め。

分かり合える心を持っている地上の息するものの哀れに心重ね。楽しさを知ることが着地点である。という花の憂いの哲学に赤い丸をつけてお

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Poem)タイアド

Poem)タイアド

タイアドは、今日も倉庫番の仕事に出てる。24時間ひっきりなしに入ってくる車、出ていく車。タイアドはまったく休むわけにいかない。5分の休憩は、立ったまま缶コーヒーを飲む。ジャズに限る。タイアドは胸のポケットに忍ばせたヘッドホンでマルサリスを聴く。同僚のアイムもくったくたなのが見える…

アイムは出荷係。次から次へ出来上がってくる製品をダンボールに詰めていく。手を止めたらあっという間に製品が山のように

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