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Poem

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Arimの詩…風のなかを通り過ぎる時、今日はどんな風景が広がるだろう…。それは、林の中を吹く風とは限らない。街の中を吹く風、貴方との境界を渡る風。…詩と歩く。
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2019年11月の記事一覧

Poem)「あなたを呼んでみる」(朗読のための詩から)

Poem)「あなたを呼んでみる」(朗読のための詩から)

かつての、漂流物には
まだ誰かの名前があったのだ
それは時の中に沈んでいった静寂、
だったが、
ここに流れる漂流物には
名前が失われていった。
持ち主がいない。
静寂という名前は、
波に波に飲み込まれて行った。

本当は、という言葉の影には、
いくつの真実が眠っていると
いうのだろう。
本当は、と話し出す時、
なだれ込んでくる声に包まれる。
本当は、沈黙。
本当は、影。
本当は、あなた。
本当は、

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Poem)「ねこねこ猫」

Poem)「ねこねこ猫」

『まえばし猫町フェス2019』参加作品
「ねこねこ猫」詩 Arim 写真 雪之情さん

私の名前は「ねこ」
誰がつけたか知らぬが
いつの間にか、ねこで通っている
「猫」とは、我が一族のこと
人間の歴史書にも書いてある。

私は野良猫。母さんは捨て猫。
飼い猫、売り猫、放浪猫、
全て、猫は猫だ。猫に優劣はない。
皆自分は誇り高き王様だ、と思っている
生まれるとはそういうことだ、諸君。

ねこ、と誰

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Poem)流れ星のような風が…

Poem)流れ星のような風が…

拾いものをして歩くなんて、
とお母さんは言った。
拾いものをして歩けるなんて、
と私は思った。
ねえ、お母さん、お母さんは私に命を授けて下さった。
でも私はどこから来たのだろうね、
この命を拾うように見つけて、
この命を身体いっぱいに貰って、
この命と一緒にお母さんに出会った。

時間てみんなをベールのように包み込む
時間てみんなにかかる雨のよう。
でもね、人が拾いたくなるものは
みんな違っていて

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Poem)ただただ詩であろうとすることは…

Poem)ただただ詩であろうとすることは…

静かな時間が流れない、そんな時代に入り込み、
ただただ詩であろうとすることは
どういうことだと言うのだろう。
人間の、小さな種のように残された
光の落としていった夢。
私たちは拾い集めて生きていく
希望という名の大きな家を、どこかに見つけ
ただただ詩であろうとすることだ。

地面に落ちた黒い点は、
そこに立っている証拠であり
それは青い点と
置き換えていくことだった。

希望などないと誰が決めたの

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