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エッセイ)ひとつ、ふたつと…

ひとつ、ふたつと
優しいことを思い浮かべてみる
のがいい。1日が終わるときに。

時間に感謝する。
過ぎていく時間と迎える時間の
交差点に立ちながら。
どちらもベクトルは同じ方向を、
前方を向いている。
過去は後ろへ、未来は前へと、
ベクトルは真反対を向いている
のかと思っていたが、
そうではないのだと思う。

過去を自分の黒い影のように
身につける。
音楽は時間とともに流れて行く
ものだけれど、決して失われは
しないように。消えていくものは
ないのだと思う。
見えないもの、聞こえない音が
いつだって、無音の中で生きている。
それが未来の入口を飾っている。

不安の中、というのは空っぽでは
ないということ。今日までの
過ぎ去ったものが充満している。
そこは、現代音楽のような場所
かもしれなくて。いや今の時代に
現代音楽というと、なんだか
古びた言葉に感じるけれど。
ジョン・ケージや武満徹の音楽を
想像して、あの時代の音楽を
指す言葉になっているのかも
しれないが。

不協和音の時代というより、
ノイズの時間というべきなの
だろうか。カオスというべきもの
が、もっと具体的で。
コンピュータ言語のような、
記号化した原子のようなものが
次の結びつきを得るために
動き回っているノイズな宇宙
みたいな不安。

歩いてみる。
実像を手に入れるために。
雨にあたり、雨が1粒の連なり
であることや、雑草という数え
切れない緑の葉が、
土中から色を抱き外界に萌え出る
躍動に触れてみる。
信じられぬような黄色や青い
花の色に魅せられてみる。
交差点を渡りながら、そんな残像を
ポケットにしまい込み。


#エッセイ


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