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再びの高野山、入寮。

去年の11月に下山し、約8ヶ月ぶりに再びやってきた高野山。今度の寮は、山側のお部屋だ。西向きだけど、山の壁面がすぐ近くに断崖絶壁のように立ちはだかっているので、部屋の中はほとんど日が差し込まない。

前回は東側のお部屋で目の前も開けていたので、目覚めるとサーっと清々しい朝日が降り注ぎ、なんとも心が洗われるような気持ちになったものだ。暗いとちょっと気持ちがローになる。だけど、静かなのはいい。左右の部屋に人もおらず、しんとした中で文章を書くことに集中できる。

絵画のように窓の外一面にびっしり広がる杉の木の姿は圧巻。どこかから山の精霊が現れたって不思議じゃない。

この景色を見やりながらの読書も捗る。お昼休憩は2時間ほどあるので、毎日本を読む習慣ができた。部屋には前の住人が置いていった般若心経の解説本があったので、何気なく読んでみたら、不意に胸を突く文章と出会った。

 アナウンサーは、言葉を話すことを仕事にしています。アナウンサーが話すときは「明るく、正しく、わかりよく」という三つの原則を忘れてはいけないのだそうです。
 しかし、それだけでは人に感動を与えることはできません。自分の経験からくる真実の言葉、本心から思わず口を突いて出る言葉には説得力があります。人を説得できる言葉には「真理」が含まれているからです。
(出典:『声を出して覚える般若心経』大栗道榮)

確かにそうだと思った。分かりやすく親切な、あるいは美しく流麗なだけの文章は、なぜか心を素通りしてしまうことがある。稚拙でも、自分の経験からくる真実の言葉や、率直に感じ入ったことが誠実に語られた文章には、魅力や味わいがあると思う。

この夏、この部屋で、たくさんのはっとする文章に出会いたい。そして私も、このノートに自分なりの「真理」が含まれた言葉を紡いでいけたら。

ありがたく使わせていただきます。