全日本地団駄タップダンス大会


実況「今年も始まりました。全日本地団駄タップダンス大会。実況の『実況』です。」

解説「解説の『解説』です。」

実況「今回で5回目となります今大会。前回優勝者である田中地団駄さんの開会宣言から始まりました。」

解説「前回大会までは、開会式で前年の優勝者がパフォーマンスしてんたんだけど、『優勝という喜びを経験してしまった奴の地団駄タップダンスなんてただのタップダンスでしかない』という田中くんの強いこだわりで今回からパフォーマンスはなくなったんだよね。
さすが、下の名前を地団駄に改名するだけはあるよね。」

実況「そうですね。現在、選手たちはより良くより美しい地団駄を踏むために、コンディションを整えています。
特に注目は、今回の大会から彗星のごとく現れた彗星選手ではないでしょうか?」

解説「彗星くんは誰もが注目してるだろうね。地団駄力もタップダンス力も未知数。噂によると、コーチが街で地団駄を踏む彗星くんを見てスカウトしたという話もあるから目が離せないよね。」

実況「そんな彼とうってかわって第一回大会から参加しているのが正確選手です。」

解説「彼は、元々タップダンス上がりの子でね、その地団駄の美しさから『美しさ』と呼ばれることもあるんだけど、なかなか優勝できないよね。
今年は、4年分の悔しさもあるから情熱と美しさを兼ね備えた地団駄タップダンスを見せてほしいね。」

実況「ほかに注目の選手はいますか?」

解説「あと、マニアたちから秘かに注目を集めているのが神宮寺くんね。
普通、こんなかっちょいい名前が付いてるやつは地団駄踏めないのに、どうして全国まで上がってこれたんだと話題になってるね。」

実況「確かに。かっこいい名前を持っている人というのは、悔しさや怒りを感じることが少ないと言われていますね。」

解説「去年の田中くんなんて、田中って名字が嫌だってだけで地団駄踏んでたからね。」

実況「へ~そうなんですね。」

解説「そもそも普通の大人は、こんな人前で悔しさを表現するのは恥ずかしくてできないよね。正気の沙汰じゃないよ。」

実況「おっ、いよいよ競技が始まりそうです。地団駄タップダンス大会は、同時に全選手がパフォーマンスを行い審査員がそれぞれ審査するという社交ダンスと同じシステムを取っています。」

解説「審査員が、絶対評価が苦手だからしょうがないね。」


実況「始まりました。地団駄タップダンス。正確選手のあの技は何という技でしょうか?」

解説「あれは地団駄だね。D難度の地団駄からE難度の地団駄。タップを挟んで最高難度F難度の地団駄に入ろうとしてるね。いいね。良い調子だよ。」

実況「一方、彗星選手はどうでしょう?」

解説「お~あれも地団駄だね。本当に『地団駄』って感じの地団駄。たまにね、ジタンダっぽい子がいるんだけど、これはちゃんと濁点がついてるね。
うーん。これは、正確くんの技を決めていく地団駄ではなかなか勝てなさそうな感じがあるね。」

実況「神宮寺選手は、一切の動きを辞めていますね。」

解説「恥ずかしくなっちゃったのかな?」

実況「おっと、正確選手。あれが、F難度の地団駄ですか?先ほどのD難度、E難度の地団駄よりも美しくないような感じがしますが。」

解説「あれが、F難度だね。去年の田中くんが繰り出した地団駄をそのまま見てるような正確さだよ。美しくないように見えるけど、ちゃんと音を聞くとタップダンスの音がする。まぁ、同時にやってるからこの場所じゃ全然わからないんだけど。」

実況「そうなんですね。いつか音も聞いてみたいです。あ!神宮寺選手が悔しそうに手で床をたたき始めましたね。」

解説「踏まないといけないのに叩いちゃったね。」

実況「神宮寺選手、手を床についてはいけないというルールに違反したので失格です。」

解説「あ~、スタッフに連れていかれてるときに踏んでるね。踏めてるよ。あんないい地団駄踏むのに混乱しちゃったのかなぁ。来年に期待だね。」

実況「そうですね。おっと。時間の関係上、地上波での放送はここまでとなります。BS・CS放送ではそのままご覧いただけます。」

解説「今、悔しくて地団駄踏めた大人はぜひ来年の大会に参加してほしいね。」

実況「お相手は、実況の『実況』と」

解説「解説の『解説』でした。」

実況・解説『また、来年~!』

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