この記事は過度な飲酒をあおるものではありません。
またアルコールが苦手な方に対して飲酒を強要するものでもありませんので、ご了承ください。

私たちにとって「食」とは三大欲求のひとつであり、生きるうえでもっとも大切な行動です。高度に発達した現代社会において、食べることは単に生きるための栄養補給ではなく、日常の豊かさや幸福を感じるための機会です。食事による五感への刺激を通じて、幸せを文字通り噛みしめるのです。
また、「酒」は古くから食事に欠かせない伴侶です。嬉しいとき、悲しいとき、辛いとき、語り明かしたいとき、弱音を吐きたいとき、孤独にふけりたいとき、それぞれのシチュエーションにあった酒が私たちの会話に花を咲かせ、思考に彩りを与えてくれるでしょう。

一説には、私たちが味を感じる際に「味覚」による影響はわずか1%と言われています。見た目・香り・食感・音・空間・食事相手など、五感すべてが調和することによって「おいしさ」が生まれています。
たとえばTV番組「芸能人格付けチェック」では、味覚以外をすべて遮られた多くの芸能人が正しい回答を言い当てられません。ワインのブラインドテイスティングでは、最も印象の強い視覚情報を排除するために黒いグラスが使われます。また、身近な例だと「旅先の食べ歩き」がとてもおいしく感じられますよね。
このように、私たちが食事を「味わう」という行為は、私たちが思う以上にとても高度で複雑な知的活動です。これまでの経験や知識を総動員することによって得られる感覚であり、人生そのものといえるでしょう。

そんな中でも、私たちにとって「日本酒」は素敵なパートナーです。
あなたは日本酒をどのような感覚で飲みますか？例えば「淡麗辛口が好き」や「濃厚甘口がいい」など、好みの方向は人によってまったく違いますし、味の感じ方も異なります。日本酒はそんな好みの違いを広く受け入れる寛容な飲み物です。日本には多くの酒蔵があり、多くの銘柄があり、それぞれ特徴づけられています。多種多様な日本酒を「味わい」だけで選んでいませんか？
日本酒は「合わせる肴」と「飲む温度」によってまったく異なる姿をみせるところが最大の魅力です。たとえば「刺身とあわせたら最高においしい」「焼き鳥にあう」というように、料理ごとに印象がかわります。ワインでいう「マリアージュ」は日本酒にもあてはまり、マッチした際に感じるおいしさはとても素晴らしいです。
また、飲み方についても、5℃刻みに細かく名前がつけられています。

もしあなたが、日本酒だけをがぶがぶ飲んでおいしいと感じている派なら、少し視点を変えてみてください。普段は飲まない銘柄の日本酒が、あなたの工夫によって主役になるポテンシャルは充分にありますよ。

また、日本酒の造り方はかなり複雑です。工程によって異なる味わいになるため、次のようにさまざまな情報が重要になります。

これらをすべて並べると「兵庫県産山田錦（精米歩合40%）純米大吟醸生酛三段仕込活性無濾過生原酒斗瓶囲」と呪文みたいですよね。その他にも、酒造年度や時期でも味わいが若干変わりますので、全く同じ銘柄でも半年や一年ごとに試してみると違った印象になるかもしれません。

このように、日本酒造りには多くのこだわりが詰まっています。単純に味の方向性だけではなく、その背景や製造工程を知ることによってのみ理解できるほどの奥深さを備えています。「知的に飲酒」するのも楽しいものですよ。

そろそろ本題に移りましょう。
私にとって、人生に日本酒が必要な理由は、たったひとこと「こだわり」に尽きます。何かに対するこだわり（情熱）こそが人生を豊かにし、私たちが描く未来に近づくための原動力になります。
遊びに本気になれなければ、なにごとも本気になれません。「寝食を忘れてゲームをする」ほど集中力をもつならきっと「寝食を忘れて自己研鑽する」ことができます。一献の日本酒に思いを馳せてとことん突き詰めることができるなら、きっと人生の困難に対しても突き詰められるでしょう。日本酒は日常業務を遂行するために大切な「背景や仕組みを理解する努力・工夫」の仕方を、楽しさやおいしさから学ぶことができる良いツールです。

また、「興味や情熱を失わないこと」も人生に大切な要素です。当たり前のように存在するものであっても、ただ当たり前と流したら自分の中から興味が消えてしまいます。これは非常に危険です。
一つの強い興味は、他の興味を誘い出す原動力になります。日本酒への興味は、生産方法への興味になり、食への興味になり、食器や酒器への興味になり、そしてまた次への興味に続いていくでしょう。
あなたは「自分の好きなもの」にどれだけ興味をもてていますか？私にとっての日本酒は、あなたにとっての何と言えるでしょうか？人生の豊かさを探してみてください。

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この記事で日本酒の造り方やこだわりが気になった方は、ぜひいろんなWebメディアを覗いてみてください。きっと素敵な日本酒のストーリーに出会えるはずです。