リトル・ミス・サンシャイン

  女の子がミスちびっこコンテストに出場することになる。父親は仕事がうまくいかずお金がなく、自殺未遂の叔父、パイロットになるため無言の行をしている兄、好色な祖父と一緒に、車で会場に向かう。途中いろいろあって、なんとか会場に到着し、ろくでなしの主催者に腹を立て、家族みんなで女の子と一緒に舞台で踊る。

 いわゆるロードムービー。両親、女の子、兄、叔父、祖父が、ワーゲンのバスで旅をする。ワーゲンバスは途中でエンジンがかからなくなり、みんなで押しがけしなくてはならなくなる。父親の一獲千金の仕事はおじゃんになる。祖父は途中で死ぬ。兄は色盲だと分かる。女の子の夢のミスコンに行く途中で、とにかく相次いで不幸に見舞われる。

 コメディに分類されていた。コメディとは人が苦しむのを見るものを言うのか。ひとつも笑えるところはなかった。ただ登場人物が次々と苦境に陥っていく。作りとして笑える空気ではあるが、人がうまくいかないのを笑えるほど、こっちものんきに生きてはいない。

 「喜劇」と称して日本でも、ハナ肇がつらい目に遭う映画があった。洋の東西を問わず、人の不幸は蜜の味なのかもしれない。これを楽しく見るか、いたたまれなく見るかは、登場人物に共感するかどうかで分かれる。人の苦境は、共感すれば悲劇だし、客観視すれば喜劇だ。

 この登場人物は、女の子以外はみんな苦境にある人たちだ。それを見て、コメディとして笑うのもよし。大人の視点でとうてい笑ってはいられなくても、せめて子どもは希望があって楽しそうだと思えれば、喜劇として許される。世の中、そんなに楽しいことなどないのだから。

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