6月28日 高円寺にて

前回話していて、「ガーデンさんがバイトしているところを見てみたいです。」と伝えたところ、じゃあ古本屋でバイトしてるとこで落ちあった後にお茶にでも行きましょう、と言っていただけたので、休日、高円寺の高架下にある古本屋さんへ向かった。
早めに着いたので、あんまり早く行っても手持ちぶさたになるかなと思い、コンビニに入ってAKB特集のFLASHを立ち読んだ。水着姿で、性や若さを消費されることを許容する強さを見せる女の子達が何ページにも渡って立ち並ぶ中で、それを潔癖に許さない佇まいのみおりんがやけに印象に残った。
コンビニを出てしばらく歩いて、反対側の高架下に来てしまったのに気付いた。引き返す。

独特な雰囲気の高架下を真っすぐ歩くと、個人経営らしい古本屋さんに辿りついた。中をちらっと見ると、レジのところにガーデンさんはいなかった。入ってお店の中を一周してみようとお店に入ると、バックヤードの扉からガーデンさんと鉢合わせた。
黒ぶちの眼鏡と編んだ髪に雰囲気が合って好きだった。
終わるまで待っててください、お店の外にも本はあるので好きに読みながら。と声を掛けてもらって、私はうろうろして背表紙を眺めながらいくつかの本を手に取ってページをめくった。
ブックオフじゃない、蔵書に偏りがあって個人の匂いがする古本屋さんの雰囲気が新鮮でどきどきした。

19時にお店が閉まるのを待って、ガーデンさんとお店を出た。
「お腹すいてますか?」
と聞かれ、
「いや、そんなには…。」
と答えると
「わかりました。」
とガーデンさんが連れて行ってくれたのは、店頭で紅茶の販売もしているティーサロンのお店だった。
ガーデンさんが好きだと教えてくれた、「自分でキャラクターや世界観を作ってそれに沿って振る舞ってるオタクのお兄さん」と形容された店員さんは入った瞬間に誰かわかった。
ちょっとスワロウテイル(池袋の執事喫茶)のキャストのひとっぽい佇まいですね、とあとから伝えると、行ってみたいなーと言っていた。
ここはバイトのお昼休みによく来ているそうで、1時間しか休憩がない中結構距離があるけど来ていて、でも一度優雅にお昼をここで過ごした時に、さあお会計という段になってお財布をバイト先に忘れたことに気付いて慌てて取りに戻った、というエピソードを教えてくれた。
店内の棚に置いてある、
「もしも、エリザベス女王のお茶会に招かれたら?-英国流アフタヌーンティーを楽しむ エレガントなマナーとおもてなし40のルール-」という本が好きでよく読んでるそう。
絶対ある訳ないことを「あるかもしれない」と具現化させてるとこが好き、というようなことを確かおっしゃってた。

前回会った時、ガーデンさんは「同じ場所では週3以上働けない」と言っていた。働いている街それぞれにこういう生活とエピソードがあるのかなーって想像するだけで勝手にわくわくした。
「ここは内装の作り込みの甘さがちょっとメイド喫茶ぽい気がして、ありまさんと来てみたかった。」
「確かに!店員さんが全員ロングメイド服でも何も違和感感じないかも…。」前回秋葉原に行ったのは私の庭にガーデンさんを連れて行くってかんじだとしたら、今日はガーデンさんの庭を案内してもらってるかんじですねえ、と話した。


この日のガーデンさんは先週会った時の三倍ぐらいの発言量だった。なんでだろう、とおもったら、そういえば先週はすごく眠いと言っていたのを思いだした。今日は元気ってことなのかな。ガーデンさんの状態はどの時でもちゃんとそれに妥当な理由があるのが面白いなあ…と思っていた。
お会計を終えてガーデンさんを待っていると、例のお兄さんから、紅茶の販売の案内を受けた。遠目に見た佇まいと違わない話し方だった。
お店を出るやいなや、ガーデンさんから「いいなー」と言われた。


次に連れて行ってもらったのは、私語厳禁の喫茶店の上の階に入っている喫茶店。店内は暗くて、中に入ると、さらにお庭のゲートの扉みたいな扉を開けて中に入る。
ホグワーツ特急みたいなボックス席が一杯あってわくわくした。
ガーデンさんに
「どこに座りたいですか?」
と言われて迷った末に、大きな明るい水槽の横の二人掛けの席を選んだ。
来週はどうしましょう、という話をした。
「オフのガーデンさんは先週と今週でたくさん見れたから、オンのガーデンさんをそろそろまた見たいかもしれない。」ということと、
「ガーデンさんのことを好きな人に会ってみたい、その人達にはガーデンさんがどう見えているか知りたい。」
ということを伝えると、「言ったからにはやらなきゃいけなくなるから苦手」と繰り返しつつ、ファンの人に会えるイベントをやってみようとその場で企画と日時を考えてくれた。

「再来週は、宮崎に帰る予定なんですよね。」
という所から、ガーデンさんの家族の話を聞いた。飼っている犬とご家族で体調が良くない方がいるっていうところをきっかけに帰ることにしたという。それから「家族を捨てて東京へ来た」という意識が強いということ、だから今後、今すぐじゃなくても、宮崎に帰るのか、どうするのかっていうことを考えたい、だから一度帰ることにした、と教えてくれた。
ガーデンさんのお父さんは、ガーデンさんいわく、いわゆる「空気の読めない人」「鈍感」らしくて、空気が読めて繊細な心を持って人には出来ない仕事を会社では割り当てられていて、職場では重宝されているというお話だった。適材適所ってやっぱりあるんだなとおもった。
「アリマさんは、家を出て東京に来たってことどう捉えてますか?」と聞かれた。私もガーデンさんと同じく九州出身で、大学入学のために上京してきたからそう聞かれたのだとおもう。
「私は元々熊本出身で、中学校の頃に鹿児島に実家ごと越してきて、でもすごく土地の空気が肌に合わなくて、ああこのままここに居たら間違いなく身も心も死ぬな、とおもって亡命するような気持ちで東京へ出てきました。」
とまず言うと、『亡命』という言葉についてすごく共感してもらえた。
「でも『まあ言っても飛行機で二時間だし』っておもってるし、うちは母子家庭で母しかいないし持ち家でもないから、最悪母になんかあったらこっちに呼べばいいぐらいに思ってて『捨ててきた』という意識はあまりないかもしれない。」
と伝えると、
「あ、よく聞いたら全然環境違った…。やっぱりうちは持ち家で、親はいまだにローンとか返してるし、墓とかもすごいちゃんとあるから、家が土地に縛られているって感じが強い。」
と言っていた。

社会に出るために、自己同一性を保つ努力から始めようとおもって、Facebookを初めてみた、とガーデンさんが言っていた。
「先週ご帰宅日記にも書いたんですけど、わたしはガーデンさんはすでに社会に出てるっておもってて、ガーデンさん自身は『社会に出る』ってどういうことだとおもってますか?」
と尋ねると、
「自分を出せるようになること」
と答えていた。
先週のご帰宅日記を更新する直前、ガーデンさんからLINEが来たのを思いだした。
「ちゃんと話せてたかわからないですけど、前回アリマさんの観察日記を見てわたしが思ったことは、人をじっくり見てもしょうがないからあまり見ず、人間は自分含めてどうしようもないってところから自分が何をするかが大事だなって思ってたのに最近忘れてたし、相手主体でチューニングとかしてるんだってことをアリマさんの視点を通して知って、思ってることとやってる事が違って恥ずかしいという感じでした。うまく話せなかったような気がするので、一応もう一度伝えようと思いました」
その後私は、「応対する相手によって切り替えができることは、私はむしろ能力や技術として捉えていたので、ガーデンさん自身ではそういう風に考えているのかと意外でした」
と返信したのだけれど、ガーデンさんの「社会へ出る」ということについての考えはこのへんにあるのかなあ、とおもったのだった。

先週した、ハンターハンターのオーラの話をもう一度詳しく聞いた。
「ガーデンさんは、自分のどういうところに『具現化系』を感じますか?」「ないものを『ある』と強く思いこめる力」
ツイッターのbioにも「自分のことアイドルだって言っちゃうと間違えて来ちゃう人がいるのであんまり大きな声では言えないんだけど、自分のことアイドルだと思っています。」と書いていて、自分にアイドル的なものなんて何一つないけど、でも自分はアイドルだと思いこめる力がある、と。


時間を忘れて話し込んでいたら、店員さんから「閉店時間です。」と声を掛けられた。
お店を出ると、
「ビレバン寄って行きませんか?」
と誘われて、ヴィレッジバンガードに寄った。

ガーデンさんは漫画がお好きなようで、いくつか好きな漫画を教えてもらった。逆におすすめを聞かれて、私も好きな漫画をいくつか紹介した。

『リバーズ・エッジ』を前にした時、
「前に、岡崎京子の漫画に出て来そうって言われたことがある。」
とガーデンさんが言っていて納得した。
「ああ、すごいわかります。ガーデンさんを絵に起こしたら岡崎京子風のタッチになりそう。」
そう言われる割に読んだことがない、と言っていたので、リバーズ・エッジ持ってるので、じゃあ今度持ってきますね、と約束した。

ガーデンさんが、リカちゃんのツイッター本を買っているのを横目に店内を物色して待ちながら、そういえば写真を撮ってないと思い、iPhoneを取り出しお会計をしているガーデンさんを激写した。
お店を出て、「観察日記に載せてもいいですか?」と写真を見せると、「いつの間に!」と笑いつつ、「自分の全身ってこんな感じなんだ…。足出過ぎじゃない?靴もボロボロだし、なんか恥ずかしくなってきた…。いつも上半身しか意識に上ってなかったから、急に下半身に対する客観性が…。」
載せていいよとしつつ、ちょっと下半身を加工させて欲しいとのことだったので、帰りの電車で落書きアプリを起動してiPhoneごとガーデンさんに貸した。横から覗きこむと、黒のショートパンツは丈が伸びて黒いロングスカートに代わり、白ベースに色が入ったスニーカーは黒い靴になった。
明らかな嘘が現実だと言い張って写真に載ってるのがおかしくなってしまって完成画像を見ながら車内で笑いを抑えきれなかった。
ない物を具現化する力…。

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