7/4 庭師面談イベント

高円寺でガーデンさんとイベントの日取りを打ち合わせた一週間後、喫茶店で庭師(ガーデンさんヲタのことをこう呼ぶ)面談をやることになり、私もそこに同席させてもらうことになった。
イベントの開始時間は11:00、ガーデンさんとお店の前で待ち合わせしたのは10:30、でも乗換検索で到着時間を見たら、イベント会場最寄駅につくのが10:30ギリギリだった。
これはいけないと思い、ガーデンさんに連絡を入れたものの、なかなか既読が付かない。
大丈夫かなあ、と駅に着いて降車し、目的のお店を目指す。iPhoneを握って歩いているとふいに震えて画面を見た。ガーデンさんからだった。
11:00をちょっと過ぎてしまうかもしれない、ということだったので、おつかいを一つ頼まれてそれを済ませた後にお店へと向かった。

11時15分前ぐらいにお店の前に着いた。1番目のひとと連絡を取った方がいいかなあとおもいツイッターアカウントを知ってたので連絡を取ってみた。1時間前に新宿に着いてからずっと迷っているということだったので、写真と地図の画像を送り、到着を待った。

1番目のお客さんがお店の前に到着し、ガーデンさんを待ちながら立ち話をした。何経由でガーデンさんを知ったかとか、どんなところが好きかとかを聞いたりしていた。
この後も四人目のお客さん以外には、何経由でガーデンさんを知ったかを聞けるタイミングがあって聞くことができた。
一人は水野しずさんのイベントをきっかけに、もう二人は、アイドルのゆっきゅんのツイート経由で知った、とのことだった。

ガーデンさんが到着し、三人でお店の中へ入った。
ガーデンさんの提案で、私だけついたてを挟んで隣のテーブルに座ることになった。
一瞬あんまりピンとこなかったけれど、なるほど、確かにこれなら同じテーブルに座るより、1対1の面談とそれを外野として聞いてる私、という構図が自然な気がする。
「話聞こえますか?」
とついたて越しにガーデンさんに聞かれ
「はい、ばっちり。」
と答えた。そして面談はスタートし、私はそれを聞きながら、印象に残ったことのメモを取った。
喫茶店で隣の人の話を合法的に盗み聞き、堂々とメモを取れるという体験が私にとってはとても面白かった。

一人目のお客さんは女の子だった。面談ということで、ガーデンさんに自前の白衣を貸してあげていた。
庭師(ガーデンさんのファンの人の呼称)ナンバーを彼女につけてあげる。というところから、庭師のコンセプトを少し聞くことができた。
庭師はガーデンさんが雇っているという設定で、俗に言う他界(アイドルヲタクが推してるアイドルの現場から離れること)を「殉職」と呼び、ガーデンさんが首をはねているってことにしているらしい。殉職した庭師の庭師ナンバーをどうしようかなあ、と言っていた。

一番目のお客さんが仕事の話をしていて(年上の同僚のことを「エグザイルとココナッツオイルの話しかしてない」と形容しているのが秀逸だった)、ガーデンさんも新しいバイト先のロックバーについての話をしていた。店長に商売っ気がないこと、それから、「その場所が好きだと、空間に意識を合わせられるから、例えばお客さんのグラスが空いてたりするとすぐ気が付ける。意識が合わせられない場所だとそこにいるお客さんにも興味が持てないから、グラスが空いてても気付けないし、仮に声を掛けられても気付けない時さえある。」というようなことを話していた。

それから一番目のお客さんは空手と剣道をやっていて、試合や大会に出ることも多々あったけれど、お母さんに応援されると負けてしまう、と言っていた。ガーデンさんも学生時代剣道をやっていたそうだ。部活動への入部率が90%を越える中学校へ通っていて、帰宅部はただ帰るだけでつまらないから剣道部に加入し、でも剣道自体に対しては「なんで戦うのかわからない。」という感じで、相手を打つ時の声のバリエーションを増やしたり、というところでなんとか面白みを見出していたそう。だから一番目のお客さんに、剣道のどこに面白さを感じているのかを尋ねると、彼女は
「既定の場所に竹刀を当てることが楽しい」と答えていた。
ガーデンさんはそれに対して
「ああ、でもやっぱり相手を人と認識して戦ってるわけじゃないんだ。」
と頷いた。

短髪で服装もボーイッシュな一番目のお客さんに、ガーデンさんは「性的魅力がある」と褒めていた。
ガーデンさんの友人のばっはさんにもそれがあるそうで、
「性的魅力がある人と会いたい。そうじゃない人とは別にLINEでいいや、ってなる。」
と言っていた。

コミュ力、という面に関しての話になって、一番目のお客さんが
「嫌いな人は極力遠ざけたい。私の情報を相手に渡して持って行かれたくないから、極力自分のことは話したくない。だから最近ツイッターに書く内容もすごく考えるようになった。」
ということを言っていた。
人とのコミュニケーションに関して、この日ガーデンさんが彼女に対しても、それから他のお客さん達にも繰り返し伝えていたのが
「バリアを張れるようになった方がいい」
ということだった。
「私も明らかに性格悪い人に自分を見せる必要はないと思うから、あ、この人嫌だなとおもったら、バリアを厚めに張って、超でかい声で喋って、思ったことをはっきりキツめに言って『嫌い』を隠さないで、相手に押されても押し返すってことを覚えた。」
と言っていた。

仕事を変えたいという一番目のお客さんに最後のまとめ的に
「いいバイトがあったら紹介します。いやなことやるとうつになるから、いやなことはやらない方がいいです。」
ということを伝えていた。

2人目のお客さんは以前、シャドウで話したことのある女の子だった。
明るくて可愛くて、考え方とかもしっかりしている感じの印象とギャップがあったのが、学校では友達ができないと言っていたことと、バイト先の好きな女の子がメンヘラで、その子が彼氏と上手く行かなくて血まみれで自分に会いにきたというエピソード、それからご家族が結構ぶっ飛んでる、という話が驚いた。

印象的だった話が、彼女は3人でルームシェアをしていて、そのうちの一人がある日「ふられた」と言って泣いて帰って来たのを見て、自分のことみたいにつらく感じてしまって、その後しばらく療養の意味もあって実家に戻っていた、という話をしていた。他人の感情、精神状態が、自分の感受性に入ってきてしまうと。
それに対してガーデンさんが言っていたのがやっぱり、バリアを張ろうということと、それから感受性を守ろうということ。
ガーデンさんも人の話に共感したり、相手が何を考えているのかがわかったりするけど、でもそれをずっとやっていると、自分の人生どこですか?となってしまう。だからお金を取ってやるぐらいが丁度いい、と。それに対して二番目のお客さんは納得すると同時に
「人のことを否定してはいけないってすごく思ってしまっているから、相手に対してバリアを張るのも否定なのかな?と思ってしまう。」
とも言っていて、その気持ちもすごくわかる気がした。
「男の人と付き合ったことがないから失恋したことがない。なのにどうして失恋した彼女にあんなに共感してしまったのか…」
と二番目のお客さんの話は続き、それに対してガーデンさんが
「なんでみんな恋愛からエネルギーを得ようとするんだろうね。」
と話していた。
それから、二番目のお客さんが恋愛に対して潔癖気味な理由については、「家族を反面教師にしている」というようなことを言っていた。
一方ガーデンさんは、お酒に酔うことに対して怖さを感じているらしく、それも酒乱の身内を見てきているから、自分もたぶんお酒を飲んで理性が飛んだら似たことをしでかしかねないのではないかと思っている、と言っていた。
私は私でクズな男の人に心の底から嫌悪感を抱いたり、クズな男の人と好き好んで関係を結んでる大学の友達を見て理解できないと思ったりしていたのは、家族ではないけどローティーンの頃本当にゴミみたいな人と数年身近に暮らさなければいけないことがあって、それで人間のゴミみたいな人間と関わり合いことがいかに自分を損なうか、ゴミに更生を期待することの不毛さの苦しみが今でも自分をむしばんでいたからだったから、その二人の話は聞いていて他人事じゃなかった。

きっと一人でも生きていけるから、今やってることの、専攻の鬼になった方がいいよ、とガーデンさんは彼女に伝えていた。

三人目は、この日唯一の男性だった。ガーデンさんの提案で、この方の面談だけ私も会話に参加させてもらった(ついたて越しに)
私もこの方とは面識があり、というのも、以前ガーデンさんも出勤していたカフェ・ド・しずというカフェイベントで隣の席になり、ちょっと喋ったり「手が綺麗なので撮らせて欲しい」とスマホで写真を撮られたりしていた、ということがあったのだった。
何気にこの三人目のお客さんと二番目、一番目のお客さんは別のイベント(先に名前を上げたばっはさん主催の読書会)で同席していることがあったり、二番目一番目のお客さんは二人ともゆっきゅん現場に行っていたり、みんな何かと共通点があった。

三人目のお客さんが今日のイベントに来た理由としては、
「手の綺麗な二人がイベントをされるということで…」
久しぶりに見たというガーデンさんの手を見て、
「薬指が痩せましたね。」
と言っていて、この日もゆがみなかった。
この「手フェチ」という特徴が強烈すぎる三人目のお客さんの、それ以外のパーソナルに迫るための話をわたしもガーデンさんも自然としていた気がする。IT系のお仕事をしていて、話を聞いていると、職場でも人との距離の取り方とか接し方とか自然と上手にそつなくこなせるタイプなんだろうなあという印象だった。
まあなんとなく任せておけばいいでしょう、的なかんじで、結構リーダー的な役割を任せられたり、高校時代もサッカー部のキャプテンに任命されたりしていたと聞いて、なるほど、とおもった。
落ち着いていて物腰が柔らかで社会性があって、5歳ぐらい年上なのかなあと思っていたら、なんとガーデンさんよりも私よりも年下で、22歳だった。
ハッカーになりたいと言っていて、ああ、すごく合いそうなお仕事だ…とガーデンさんと二人で言っていた。
ガーデンさんと面談が終わったあとも、しばらく私の方のテーブルでお話していたけれど、朝起きたらプールに行くとか、生活の型が割ときっちり決まっているタイプだ、と言っていて、なんだか小説に出てくる人みたいだ…と思って、それは本人にも伝えた。

ガーデンさんは三人目のお客さんへは、まとめとして
「普通の人になろうとおもってもなりきれないタイプだとおもうので、専門性を持った方がいいとおもいます。」
と伝えていた。

四人目のお客さんとの入れ替わりで、三人目のお客さんがこちらのテーブルにやって来て、ガーデンさんに白衣を貸してあげていた一人目のお客さんも戻ってきて、三人で話していた。
そこで三人目のお客さんに言われたのが、
「ガーデン観察日記を読んでいて、お互いちゃんと向き合っているという感じがする。」
ということだった。
前にも観察日記を読んでいるという男性からほとんど同じことを言われて、それが二人とも男性だったっていうのは単に偶然かもしれないけど、でも、相手や自分の感情とか内面とかを主題にして話をするって機会は、女性より男性の方が少なさそうだ。だからそういう印象になるのかもしれない、と考えていた。

この時わたしのテーブルにいた二人のお客さんは、よくよく話してみると、ばっはさんの読書会で席が隣同士だったということが発覚していた。

四人目のお客さんとも少しだけお話できて、
「ガーデン観察日記読んで、お話してみたかったんです。」
と言っていただき恐縮の気持ちでしどろもどろになっていると、
ガーデンさんに
「アリマさんは文章の方が情報量があるから。」
と言われて、あっ、なるほど…とおもっていた。
そう言われてみると大学入学以降で私の内面を面白がってくれてそれをきっかけに仲良くなったひとっていうのは、大体私が書いたものをなんかしらの形で読んでくれてるなってことを思い出した。
四人目のお客さんは漫画をガーデンさんに差し入れていて、漫画好きだというガーデンさんはとても喜んでいた。
彼女にもやっぱりガーデンさんは、
「侵食されるひとが多いから、バリアを張った方がいい。」ということを伝えていた。

私はこの後バンドじゃないもん!のワンマンを見に行く予定だったので、面談が続く中一足お先にお店を出た。

シャドウでも庭師のひととお話したり、ガーデンさんと話しているとこを見たり聞いたりしたりしていたけど、なんかみんな自分の価値軸を持ってフラットに相手と話すことができて、限りなく個として人と出会える人達、という印象を抱いた。
そしてこの日面談を見ていて、やっぱり人と一対一でお客さんと話すガーデンさんはすごくガーデンさんの資質が生かされている、と感じたし、どんなボールを投げてもきっとガーデンさんなりの受け止め方をしてくれるだろう、だから話しても大丈夫、ってこないだ私が抱いた気持ちと同じ印象を、今日のお客さん達も持ってるんじゃないのかなあ、とおもった。

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