無意味なガードレール

近所にあるガードレールが無意味だ。

そのガードレールの内側の歩行スペースが究極に狭い。そこを歩く者は誰しもが小田急線の座席で両隣をラガーマンに挟まれている人か、ビックリした時のアフリカオオコノハズクみたいになる。買い物袋とか大き目のカバンとかを提げてたり、ふんわり広がるスカートとかを着用していたら、もうおしまいだ。持ち物も裾も汚いガードレールにこすれまくって黒ずむ。だから誰もその内側を歩いたりしない。

じゃあということで歩行者はガードレールの外側を歩く。でもそのガードレールの外も、狭い。

渋滞することはないものの通行量が多い生活道路だ。そこを通る車はみんな、自転車や歩行者や対向車を避けてグネグネ&ストップを繰り返しながらソロリソロリと進んでいる。大きな車同士がすれ違いたい時は途中にあるアパートの駐車場をすれ違いポイントとして拝借せざるを得ない。他にいくつかあるすれ違いポイントを逃してズンズン進んでくる対向車があったりすると、地元民は(ややや一見はん。お気をつけなはれ)なんて思ったりする。私がそう思ってるだけだった。主語大きくしたくなっちゃった。

ガードレールがあるのと反対側の歩道に路側帯を示す白線が引いてあって、それも意味ない。歩行者がその線の内側を歩いていても車はガンガンに線を越えてくる。そうしないと進めないから。歩行者もそれが分かっているので車が寄ってきたら半身を縮こめ、少しでもスペースを生み出そうとしたりしている。そうこうしているところに、反対側のガードレールの狭すぎる内側を通れない歩行者がこっち側にやって来て、歩いている。本来の歩行エリアを超えて大きく膨らんですれ違っていく歩行者たち。を、避けるため、思い切り反対車線に寄っていく車。

いつもいつでも歩行者天国と自動車天国と歩行者地獄と自動車地獄が同時に存在する空間。

そんなカオスの横で、無意味なガードレールが貴重な空間をスンッと占領している。何にもガードしてないで。誰も通らないからコンクリートを突き破って生えてるハルジオンとかは邪魔扱いされず、生えておくことができてるけど。

先日自宅からスーパーに向かっていたところ、家族から、外出先より帰宅途中との連絡が入った。

ならばスーパーで落ち合おうということになった。

「もう着くけど今どの辺にいる?」というメッセージがスマホに届いた。

どの辺にいるかどう伝えようと思い周辺を見回したがこれといって目印がなかった。

でも件のガードレールがあった。

「無意味なガードレールの辺り」と送った。

無意味なガードレールの端の方で、家族と私は無事に落ち合うことができた。

今はこいつ意味があったねと、言い合った。

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