太っているお友達

幼稚園で同じ組だった子の中にひとり、太っている子がいた。
その子は明らかにその体型が理由で複数名から意地悪をされていた。
私はその子と仲が良かった。
幼稚園の先生はそのことで大層私を褒めた。太っているお友達にも意地悪せずに平等に接して偉い、と。
先生はそれについて私の母にも報告し、母も悦に浸っていた。
そのうちに、太っている太っていると言われていたそのお友達は痩せた。病院に通ったとのことだった。

当時の私は一連の全ての意味が分からなかった。
人の体型について太っているとか標準とか痩せているとかで判別したことがなくて、当然、それぞれがどう良くてどう悪いとかの概念もなかった。
だから太っている人に意地悪をする理由もなかった。正義感や優しさから太っていた友達に意地悪しなかったのではない。その意地悪の原因であるらしいくだらない価値観の存在を知らなかった。それだけだったから、先生が褒める意味も分からなかった。自分がゆえなく褒められているように感じていたから、その褒めに喜んでいた母も分からなかった。何も悪いことをしていないのにわざわざ病院に通って痩せたお友達のことも、分からなかった。太っていると健康に良くないことはもう少し後になってから知った。

成長するにつれ、この出来事の中にあった色々の意味や原因や慣習が分かった。
分からなかった私は変だったのかなと思った時期もあった。
今はでも、やっぱりこんなようなことは知らないままでいたかったと思う。知らないで生きてはいけないだろうから、本当に大変だ。

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