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コーチがカフェを始めた理由 その2 なまえとその想いについて

「ありをり」というなまえについて

「ありをりとゆるり」は、正確に言うと、「喫茶ありをりと、ゆったりサロンゆるり」なんですが、ゆるりの方は、店長である妻にあらためて語ってもらおうと思いますので、今回は私が命名者である「ありをり」についてお話したいと思います。

「ありをり」は、「あり、をり、はべり、いまそがり」という、古語のラ行変格活用から取っています。
漢字で書くと「在り 居り 侍り 在そがり」
全て「いる。存在する」という意味ですね。

この名前を店名にしようと思ったのは、コーチングの会社に通うために乗っていた満員電車の中でした。狭い空間の中に、ぎっしりと人が「いる」わけですが、誰もがその存在を感じないようにするために必死です。
かくいう私もワイヤレスイヤホンでスマホの音楽アプリを聞きながら目を閉じて、自分の気配を消し、前後左右にもまれなが目的地に着くまで「平気なふり」を続けている日々でした。

なので、時々「僕はここにいるなー」とか「あなたは確かにここにいますね」とか「私たち一緒にいますね」と感じられる場・・・特に一緒に何かをしていなくても・・・そんなことを実感できる場を創りたいという想いから「ありをり」という名前にしました。

この想いにつながる体験として、私が30代のころ(当時は大阪で仕事をしていたのですが)、阪急電車で友人と犬の話をしていた時のことを思い出します。

それなりに混みあった車内で、私と友人はつり革につかまっておしゃべりをしていました。「僕は猫よりは犬派かなー」という話で、なぜ犬の方がいいかということを私は力説していました。
「彼らは全身で喜びを表現してくれる。僕が小学校の頃に飼っていた、ハッピーという犬なんか、うれしいとしっぽを振るというレベルではなく、お尻ごとふっていたよ」といった時に、前の座席に座っていた品の良い50代と思われる女性がプッとふきだしたのです。

一瞬私たちの会話が途切れて、おそらく2人から同時に視線を浴びたその女性は少し気まずそうな表情をしながら「ごめんなさい。うちの犬もそうなので。つい笑っちゃった」と、私たちを見上げながらそう言いました。

それまで、その他大勢の人たちと同じく「一緒にいてもいない人」だったその女性は、その瞬間から私たちと「一緒にいる人」になりました。決してそのあと3人で会話が盛り上がったわけではないのです。むしろ3人ともちょっと存在を意識してしまったゆえの気恥ずかしさがあったかもしれません。でも、その女性は2つほど先の駅で下車する時に、私たちに笑顔で視線を送り、私たちも軽く会釈しました。私と友人はそのあともずっと無口でいましたが、とても幸せな余韻が残っていたのです。

なんかこんな感じ、皆さんにも体験がありますか?
もちろんそこで会話が始まってもいいし、でも始まらなくてもなんかいい感じ。お互いの存在をちゃんと感じていて、それでいてちょっとした距離感(もっと和的な表現だと「間」=「あわい」でしょうか?)も持っている。そういう感じを私は勝手に「ありをり感」と名づけました。【註:正直言うと、これを書きながら今、名づけました(笑)】

そして、それは、自分自身にも言えることだと思うのです。

毎日毎日「やること、やるべきこと」に追われていると、それをやっている「自分自身」の存在を感じる時間が無くなってしまいます。「自分自身」が感じられないと「自分がそれを選んでいる」という感覚が失われていきます。選んでいる「主体」が感じられないまま、何かに駆り立てられるように行動だけが起こっている。やがて身体がついていけなくなって、ふと止まらざるを得なくなったときに「あれ、何のためにこれをやっているのだろう?」という無力感に襲われることもあります。

だから、時々自分自身が自分の存在を感じられる「間」をつくることが大切だと思うのです。そうすることで「あ、私はここにいるな」と感じられる。そう感じてから何か行動を起こしてもいいし、起こさなくてもいい。でも何か安心していられる。
そういう時間って必要ではないでしょうか?

ちょっと向かい合ってみる

コーチの仕事は相手の話を聞くこと・・・つまりは相手が自分の話をすることで、「自分」と「それ(していること、考えていること、感じていること)」との間に「間」を生み出す機会を作り出すのが最初のステップだと私は思っています。

「間」ができるということは「自分がそれを選んでいる」という感覚を取り戻すこと。そして場合によっては「それ」ではない「あれ」を選ぶこともできる、という気づきにつながります。

これは特にコーチングに限らず、読書や、音楽や、絵画、素晴らしい人との出会いや、大自然の中にいるときなど、いろんな場で体験することができるのだと思いますが、そのひとつとして「喫茶ありをり」という場がそうなればいいなー、というのが、私の想いです。

なので、そういう意味ではコーチングで実現したいことと、カフェで実現したいことは一緒なのだと思います。

おかげさまで、昨年9月にオープンしてから1年ちょっと、本当にお客様に恵まれてなんとかやってこれました。
そして、私たちの想いが共有できたなーという出来事もたくさんありました。これから少しずつそんな「ありをり感」を感じたエピソードを紹介できればと思っています。

追記
先日初めて「noteを見て興味を持ってきました」という方がご来店しました。うれしい!
もし、これを読んで来て下さる方がいましたら、ぜひご来店時の最初に教えてくださいね。他のお客様には気づかれないようなサービス(例えばランチのお肉を1つ多くするとか、ケーキの大きさを1割ほど大きく切るとか、コーヒー豆の量を少し多めにするとか・・・これはいらないかな?)を「こっそり」したいと思います!!


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