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【サムシング・フォー】僕がめぐると結婚する4つの理由──【アイの誓い】八宮めぐるについて

挨拶

 紳士淑女の皆々様方、本日は僕とめぐるの結婚式にお越しくださり誠にありがとうございます。
 このような良き日に僕とめぐるの新しい人生の門出を迎えることができたことを嬉しく思います。今日までに色々なことがありました。馴れ初めは昨日のことのように思い出されます。
 二人の出会いは必ずしも絵に描いたようなものではありませんでした。当時の僕は、SHHisの新イベントシナリオコミュ【モノラル・ダイアローグス】とともに実装された【CONTRAIL】緋田美琴を高山の魔の手から救出しようとしていました。

 しかしながら、志の高さに力が及ばず、ジュエルに困っていたのです。
 どうしようか、と悩んでいると、どういうわけか気が付いたときには掌の中に期間限定pSSRセレクションチケットがありました。
 そしてその不可解に茫然自失のままセレチケの対象となるアイドルをスクロールしているときのこと。
 ……──僕は出会ったのです。

 最愛うんめい女性ひとに。

一目惚れでした

 僕は彼女の笑顔に射止められました。
 そして、青い鳥が運ぶ遠い地の友人とのいくつかのダイアローグを経て、彼女にプロポーズをしました。


 そして無事にめぐるへの愛が伝わり、今、こうして皆様の前でお話をさせていただいている次第です。

 ……しかしながら、世界には、どういうわけかめぐるとの偽りの記憶を主張し、あろうことか夫を自称する不審者が多いよう見受けられます。
 僕はめぐるの夫なのですから、夫としてめぐるをそんな不審者から守る責務があります。
 そこで、彼らにめぐると僕が結婚に至るまでのengage periodを振り返ることを通して、僕たちの絆の正当性を説明し、この僕こそがめぐると結婚するべきであることを証明してみせようと思うのです。

めぐると僕の"Something Four"

 僕たちは結婚生活が良いものになることを祈って、マザーグースの“Something Four”にあやかることにしました。

 “something old, something new, something borrowed, something blue, and a sixpence in her shoe.”

マザーグース "Something Four"


 付け加えるように歌われ、伝承されてきたマザーグースという古い歌の一つ、"Something Four"は結婚式の新婦が身につけておくべき4つのものにまつわるおまじないの歌です。
 僕たちの婚約期間もまた、このマザーグースのように古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの、そして靴の中に6ペンス銀貨を忍ばせるようなものだったのかもしれません。
 隣で柔らかな笑顔を湛える新婦も嬉しそうにしています。折角だからこれを振り返っていこうと思います。

OLD

 めぐるがマザーグースのお話を始めていたところから僕たちの婚約期間は始まりました。穏やかな木漏れ日のような一時でした。昔母親から教えてもらったたくさんのマザーグース……友達と遊んだ記憶……。
 彼女の瑞々しい笑顔とともに語られる懐かしい過去に、僕はかえって未来の幸福を予感していました。
 "Something Old"──彼女にとっての古いもの、懐かしい思い出を語っていました、

このまま額に入れれば幸福という題がつく

NEW

 次はウェディングドレスの試着に向かったときのことです。プロデューサーである私の妻は、その素晴らしい魅力から想像されるようにアイドルをしています。そんな彼女とのウェディングドレス選びは、ブライダル広告の仕事を兼ねていました。
 『君と未来に、いきたい。』──二十代前半の若い人々にも結婚式が行えるように、手軽な価格に抑えたブライダルプランを掲載した式場パンフレットの撮影でした。
 私のめぐるは、その鮮やかなブロンドの髪や、空を抱く瞳からも自ずと分かるように、アメリカ人と日本人の混血児として生まれています。
 国籍の曖昧さや目を引く容姿といったアイデンティティの悩みは「集団の一員になれるのか」と、可愛らしい少女をいつも不安にさせてきました。
 そんな、誰かの仲間になれないことに人一倍苦しんだ女の子が、愛し合っているけれどもお金に余裕がなくて式を挙げられない男女のために、つまり誰でも幸せを諦めないでいられるような皆のための仕事をする……。
 僕が取ってきた仕事であるとはいえ、それに向き合う彼女の姿は、やはりどこか熱意の感じられるものでした。

僕は今日の晴れの日の前からドレスを着る新婦の麗しさを知っていました

 新しいウェディングドレスを着付けてもらって僕の前にやってきた彼女はどこか誇らしげで、それでいて少し照れているのが可愛らしかった。
 "Something New"──新しいドレスを身に付けて喜ぶめぐるは僕の目に焼き付いています。

BORROWED

 新婦はこのブライダルプランの仕事について、お義母様とも話されたと伺っております。
 本日のめぐるが左の靴に忍ばせている6ペンス銀貨……これはお義父様おとうさまお義母様おかあさまの結婚式の際に“Something Four”のおまじないとして身に付けていたものなのだと聞いています。

結婚式に向けての日々をめぐるとともに歩いてこられました

 このお仕事の際にも、めぐるは同じものをお義母様から手渡されています。そしてそれをきっかけにして、このお仕事、ひいては私たちの結婚式でも“Something Four”を取り入れようということになったのです。
 "Something Borrowed"──お義母様からの素敵なご提案をお借りして、今日の、この華々しい日を迎えることができました。

BLUE

 "Something Four"にあやかろうと考えた私たちにとって、一番難しかったものが青いものでした。「幸せを呼ぶ色」である青いものを身に付けるそうなのですが、なかなか決められませんでした。
 新婦は純粋に思い浮かばないのだと笑っていましたが、私にとっては本当に大変なことでした。なにせ彼女の瞳と並んでしまえば、どのような青もくすんでしまうのです。
 これまでは二人で同じように頭を悩ませてきた"Something Four"のおまじないでしたが、ここで少しだけ一人ずつ考え事をする時間を経験しました。
 僕たちにとっては、これが一番のMarriage "Blue"でしたね。(笑い)

青空とか夜空を見たら、空を映す目が青になると思ったりもしました さすがにキザすぎるので口にはしませんでしたが

 そして結局、新婦の提案で、"Something Blue"には、青い風船を使うことになりました。

a sixpence in her shoe

 そして私たちは今こうして皆様の前でご挨拶させていただいているわけであります。
 とても幸せな気持ちでここにいます。

 ……──ただ、少し考えてもみたのです。
 マザーグース "Something Four" は、本当はどんな意味の歌なんだろうかと。この英国生まれの伝承の童謡は──新たな花嫁の幸福をまじなう歌は、本当は何を伝えようとしているのだろうかと。
 僕は思うのです。この歌はさり気ない、実に気の利いた警告なのではないかと。
 結婚の幸せで一杯の花嫁に贈られる、マザーグースという形式をとった、母からの親心に満ちた祈りなのだと思われるのです。

 "Something Old"──何か古いもの。祖母や母から譲り受けたものを身に付けることで生家との紐帯を。
 "Something New"──何か新しいもの。結婚生活を祝する品物を身に付けることで嫁ぎ先の家への紐帯を。
 "Something Borrowed"──何か借りたもの。既に結婚している友人知人にものを借りることで外にあるべき紐帯を。
 "Something Blue"──何か青いもの。陽気に包まれた幸福の中で人目に触れない自分の冷静を。
 そして、"a sixpence in her shoe"──花嫁の左の靴に6ペンス銀貨。すぐに使える少しばかりの秘密のお金を……。

 僕には、この歌が、花嫁衣裳の幸福の──愛する人に全てを捧げたいと願う六月の陽気に酔っていても、生きていくための用意だけは持っていなさい、という忠告のように聞こえる。
 ……結婚した後の長い年月、そしてその現実を知る母親から他でもない我が娘への祈りが込められたこの短い童謡は、愛し合う夫婦という演目をやり通した偉大な女優が初めて見せるオフショットなのではないでしょうか。


 翻って、僕とめぐるが実際に用意した"Something Four"を見てみましょう。

 古いもの借りたもの、そして6ペンス銀貨、その全てをただ一つの、めぐるがお義母様から譲り受けた6ペンス銀貨にすることにしています。

 めぐるはどこか孤独の香りがする。ふるい伝統を持たず、少しばかり年上の頼りになる親しい者もいない……生い立ちの上の孤独は、彼女に十分な紐帯を持つことを許さなかったのでしょう。6ペンス銀貨を日本で使うこともまたできないのです。
 多くの係累を持つように、あるいは自立する心を持つようにと諭す本来の"Something Four"のおまじないは達成されませんでした。
 今回のお仕事『君と未来に、いきたい』というものが、どんな男女にもできる結婚式を目指していると思えば、彼女の孤独はコンセプトに合致したものになるのかもしれません。
 しかし確かなことに、我が子の幸福を祈る母親の囁きは、もはや花嫁には聞こえていません。

 新しいものには結婚式では誰もが着ることになる白無垢が選ばれ、そして冷静を祈る青いものの風船は風に乗って夜空へ消えた。

綺麗だ

 そして、彼女の美しいの瞳が映すものは愛する僕だけを映している。

本当に綺麗だ

 めぐるは、ただの一人の女性として、そこにいる。
 曖昧な存在の輪郭を持った新婦の全てが、結婚する相手に──僕に委ねられた。

色彩的完成を見る

 ……この世界には色んな男がいると思う。良い男も悪い男も。
 "Something Four"の伝承は、そんなふうに色んな男がいたとして、それでも皆、誰か一人のためだけに生きられはしないことを知っていたんだと思うのです。
 しかし……だけど、それでも僕は、……めぐる──。
 ……──僕が君を“守護まもる”。


僕がめぐると結婚する4つの理由

 僕はめぐるとのengage periodを振り返ってきました。
 ここまでお付き合いくださった皆様であれば、どうして僕がめぐると結婚しなければいけなのか、きっと分かっていただけることでしょう。
 まず一つ目、めぐるは寂しがり屋さんであるところです。彼女は臆病な女の子なので、安心していられるように誰かがいなければいけません
 ここであなたは思ったかもしれません。「アイドル活動を通して養われたイルミネの絆があるじゃないか」と。悪くないご指摘ですが、この度、僕がめぐるにかけた言葉「本当に綺麗だ」は、めぐるの不安の源泉にして象徴となった「外見」に対する承認であり、それ故に重要な意味を持つのです。あなたはめぐるに「綺麗だ」と言ったことがありますか、ありませんね?これが理由の二つ目です。
 次に三つ目です。それは限定pSSR確定チケットで結ばれているという事実です。皆様もガシャというものには様々なご意見があるでしょう。その中でも、僕は曖昧な運要素が存在するということを良しとしていません。何かをやり取りする契約には望まれるべき美学があるのです。それは信用と決断であり、それだけが画面の彼此の人間を繋いでいる。その観点から言えば、pSSRセレチケの行使は紛れもなく僕の決断によって行われた選択なのです。めぐるの出会いは偶然じゃない。運命じゃない。僕が探し当てて見つけた絆なのです。「出たらいいなぁ」などという甘くて曖昧な期待のもとに引き当てた軟弱な者とは〈覚悟〉が違います。
 そして最後に、めぐるの孤独に気付き、そしてその不安や寂しげさにも触れ、それでもなお僕の心はめぐるの幸せを願う気持ちで満たされています。寂しさや、その寂しさに付け入ろうとする者から、僕がめぐるを“守護”るという強い決意。これが最後の理由です。

不審者への勧告

 ここまでで、僕が如何にめぐるの夫に相応しいか、よくご理解いただけたように思われる。僕とめぐるの婚姻の契約は、仲人なこうどである高山の上腕二頭筋のように堅く結ばれているのだ。

 めぐるの夫を自称してきた不審者の皆様は最早ぐうの音もでないだろうが、それでもまだ悔しいと思えるならば、ずから【アイの誓い】八宮めぐるを引き当て、そしてより完璧な愛の証明を記すべきだろう。

終わりの挨拶

 【CONTRAIL】緋田美琴に色々ぶち込んで、その結果ついぞ引けなかった哀しみは深かった。しかし、偶然を装った運命と高山に導かれて、僕はめぐるとの結婚の記憶を思い出すことができた。

 限定美琴さん引けました報告身の毛もよだつ蛮行に及ぶ心無きTwitterのオタクに苦しめられる僕の心も、めぐると結婚できない貴様らの悔しそうな顔を見ていれば少しは紛れよう。

 私こそが八宮めぐると最も深い絆で結ばれた者なのだ。

 ……──ん?

 ──っ!

 ──……ッ!!グ、グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!

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