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盲ろう者の田畑さんとなにかの本を作ろうと思っている件 その7

前回までのお話はこちらから。

12月の上旬に映画の上映会があるので一緒に行きましょうと田畑さんからお誘いをいただいてました。実は同じ上映会が10月にもあったのですが、わたしの都合が合わずに、12月の回になりました。田畑さんとお会いするのがこの日で二回目になります。で、このときに田畑さんが友だちに会わせたいとのこと。
前回、手話を覚えねば、という内容を書きましたが、この映画の日が先に決まっていたので、まずはこの日までに自分の名前くらいは手話で話せるようになろうと、いただいた本を見たりDVDを見たりして、なしやありえの指文字を覚えました。一応覚えたけど、思いだし思いだしなので、すごくゆっくりでしか動かせない。グーチョキパーや数を示す以外の形を手でする機会ってあまりないでしょ。だから、作ろうと思った指の形が実際に作った形と同じになってない……いやまじで。あれれ、中指のつもりで薬指が……って、自分の手が、他人の手のようで驚きました。使ってないと体の細部はどんどん動かなくなるんですね。
映画の前に田畑さんの友だちと一緒に食事をすることになっていたのでした。その「友だち」がどういうかたかわからないので、筆談できるようにノートとKindlefireを持って行くことにしました。古いiPadの下取りの手続きが終わったのでWebで新しいiPad airを注文したのですが、あれって、すぐに届かないんですね。同時に注文したapplepencilだけが先に届きました。これ一つで、どうしたらいいのか……。とりあえず、アポーペン! と言いたくなってしまったので、ピコ太郎さんのYouTubeを見ました。
(ところで、ピカチュウとのコラボがかわいいです。)

話はもどって。
待ち合わせの場所に行くと、白杖を持った田畑さんと、お友達らしき二〇代の男女がいらっしゃる。健聴者の、今風のおしゃれな若者だー。←おばさん視点。
お二人とも手話がガンガンできる。田畑さんにわたしが来たことをすぐに伝えてくださった。あ、いや、でも、待って。いただいた手話の本でちゃんと勉強したよ!!! と伝えたいが為に、田畑さんにぐいと近づき、下手くそな手話、「こんにちは。また会えてうれしいです。なしやありえ」を伝えます。田畑さんは、「はい、はい、はい、はい、だれかわかってますから」という感じでした(笑)。
食事をする場所を探しましょうと、男性のお友達と田畑さんがすぐに移動を始めたので、歩きながら女性のお友達のかたに初めましてのあいさつを。
そのかたは大学の手話サークルで手話を覚えたそう。もう一人のお友達と、一年前(?)に結婚されたそうでした。おお、それはおめでとうございます。手話ができる若いカップルさんでしたか。

男性のお友達は、ブログにお名前を書いてよいと許可をいただきましたので書かせていただきますが、瀧尾さんという男性保育士さんで、手話で生きる子どものための放課後等デイサービスで働いているかたでした。

放課後等デイサービスというと、発達障害のお子さんが利用することが多いイメージでしたが、ろう児のための放課後等デイサービスがあるのですね。知らなかった、というか、気にしたことがなかった……。まだ数は少ないそうですが、学校や家のほかで、手話で言葉が通じる人たちと一緒に過ごせる場所で、安心して遊んだり学んだりできるって、大事です。家族も安心ですよね。わー、見学したいなあ。でもそれはコロナが収まってからですね。

さて。食事の場所。なにが食べたいですかとまた聞いてくれるのだけど、田畑さんのほうが食べられるものに制約があるのではないか、とわたしは悶々としておりました。LINEでは数日前にモスバーガーにいきましょうって書いていらしたけど、かわったんだなあ……。でもモスバーガーで田畑さんが食べられるものってあったっけと心配していた。手話の高速のやりとりがわからないので、みんなについていくだけです。手話ができる三人の中に手話できないのが一人という状況になると、マイノリティーが逆転して、ただの聴者わたしのほうにコミュニケーションの障害が発生するのですよ。手話ができないと、聞える聞えないにかかわらずこのお友達コミュニティーに参加するために「配慮が必要な人」になってしまうということ。瀧尾夫妻が全部通訳してくださいましたが、わたしに手話がわかればそのご苦労をかけなくてすむのですよ。迷惑かけて申し訳ないモードになってくるのです。手話は特別な人のものと思っていたために、言語的なマイノリティーになってしまい、人に頼らなくてはならなくなるこの感じ、世のみなさんにも体験していただきたい。
さて、選択肢が少ない中で4人で入れそうなお店が見つかったものの、田畑さんに食べられるものがあるのだろうかとまだ心配していたのですが、田畑さんは携帯食を持参していました。なるほど、そういうのがあるのですね……。(今度食事をするときは、先に聞こう。)
瀧尾さんがお店の人に、飲み物を頼むので持ち込んだものを食べていいですか(と田端さんの手話を通訳し)、他の3人は食事を注文します、と交渉してくださった。即OKいただきました。よかったよかった。ちなみにスープストックトーキョーさんでした。

食事としゃべるタイミングを分けて、話すときはみんなマスクをして、瀧尾さんたちに田畑さんとバリアフリー絵本をつくりたいと思っていることをお伝えしました。田畑さんと瀧尾さん、お友達と言うことで男性同士のおもしろい話もしたのですが、田畑さんのプライバシーなのでここでは割愛。
田畑さんが、瀧尾さん夫妻に、家でも手話で話しているの? と聞いていらした。お二人とも聴者なので、家では口話。でも、声が聞えないような少し離れたところにいるときは、手話を使うことがある、とか。たしかに、大声出さないですむのでそういうときは手話ができるって便利そうです。

ちょうどいい時間になったので、映画の上映会の会場に移動します。
横浜市聴覚障害者協会主催の映画『咲む』(えむ)。

次は、映画の上映会の話。


支えられたい……。m(_ _)m