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映画を早送りで観る人たち

「映画を早送りで観る人たち」 ファスト映画・ネタバレ、コンテンツ消費の現在形(稲田 豊史 著)

背景

ドラマや映画において、演出された沈黙や会話の少ないシーンなどを早送りすることは、作品を堪能していると言えるのだろうか。年齢が若い方が、倍速視聴の経験者が多い。Netflixなどでも倍速機能がついている。ファスト映画の登場も必然性があり違法であるがニーズがあったことは確か。

最近の視聴動向
・平凡なシーンは不要
・連続ドラマは話ごと飛ばす
・結論が先に知りたい
・心を動かされたくない(安心してみたい)
・逆に好きなシーンは何度も見ることもある
・倍速視聴は若者だけではない
・なぜ流行っているのかを知りたいだけ
・オタクの許容と専門性への憧れ
・制作者(監督や脚本家など)には興味がなくなり、作品にフォーカスされる(ジャンルだけが着目される)

【外的要因】

1 作品の供給過多
昔に比べて、NetflixやAmazonなどの動画配信メディアにより、見れる作品が増えかつ1作品あたりもサブスクにより安価になった。お金を払って1作品を大切にすることが減った。

2 可処分時間の問題
SNSなど映像コンテンツ以外にも時間がなくなり、タイパ(タイムパフォーマンス)を重要視している。友達との話題についていきたいだけなので、話がわかれば良い。効率化が求められるようになった。

3 作品や環境の変化
セリフで一言一句を説明する作品が増えた。シーンの息遣いではなく、全てを説明するわかりやすいものが求められるようになった。またスマホをいじれずに二時間、映画館で映画を見るというスタンスは若者に合わなくなってきた。TikTokなどの短尺動画の存在。

鑑賞(作品):本人への影響度が高いもの
消費(コンテンツ):食べ物でいうと栄養が取れれば良いもの。情報収集。

→鑑賞物と消費物を分けている人もいる

【内的要因】

4 共感強制力
仲間の輪を乱さないために、共通の作品、コンテンツを見ておくことは最重要事項となる。音楽も同様。オンラインでつながっている友達が多すぎる。 生存戦略としての倍速視聴

5 個性を求める
個性的であるべきという価値観が生まれている。自分らしさを求める。オタクや専門性への憧れ。趣味も嗜好も多種多様となり、無個性に焦りがある。

6 自分にとって価値があるかを先に知りたい
時間が勿体無いと感じる。ネタバレよりも失敗したくないことを重視する。


・書物の速読や連続ドラマの総集編とは違うのか

書物はもともと自分のペースで読むことが組み込まれていた。演劇などは自分のペースではなく時間の芸術であるが、本は自分がペースを決めるもの。そのため映画の倍速視聴のような批判が少ない。

・異なるデバイスで見ることとは違うのか

オリジナルな作品を見ていないという意味では、映画をスマホで見たり、PCで見ることも倍速視聴と同じことになる。オーディオブックは本を読むことと異なるのか。社会は変化していく。

・ターゲットの変化

サブスクの登場により、映画が映画ファン優先から非ファンを優先されるようになった。それは、サブスクはコアなファンがどれだけ見てもお金は同じであり、新規客の獲得が至上命題になったから。

終わりに

ネット社会になり、SNS(Tiktok、インスタ)やYouTube、動画配信サイト(Netfliex,Amazon)などにより映像コンテンツは過多になった。サブスクにより、1作品は格安で手に入るようになった。
そのデジタル環境が浸透したことと、友達間でのつながりのために情報収集の必要性の相互作用により、倍速視聴やファスト映画は必要とされることになった。時間の効率性から、無駄のない確実なものを見る傾向も助長されている。
インターネットの発達が現代の作品視聴に影響を与え、社会環境や人との関係性も日々重要視されることが変化していく。