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穢れた偶像

ジャニーズの性加害が大きな波紋を呼んでいる。私はファンという訳ではないが、数々の国民的スターを生み出してきた組織なので当然、親しみはある。故ジャニー氏のいけない癖はジャニーズに詳しくない一般人レベルでも噂というか都市伝説というか、限りなく黒に近いグレーとして知っていた人は多かっただろう。人によってはそのストーリーも含めて楽しんでいたのかもしれない。

この件を受けて、色々な企業やメディアがジャニーズタレントを起用しない方針を打ち出し始めている。濃いグレーが完全な黒になり、幻想は崩れてしまった。組織としてのジャニーズがどうなるかは分からないが、ひとつの時代の節目を感じる出来事だ。

いち時代の華として愛された組織の暗部が明るみに出たら、人が引いて離れていく現象。いけしゃあしゃあと掌返しするなと批判する人もいれば、イメージ商売なんだから当然という人もいる。自分は、体内にあったはずのウンチが外に出てきた途端に触りたくもない物になるのと似ているなと思った。 (例外としてうさぎやモルモットのウンチは触ることが出来る)

抜けた髪の毛も、切った爪も、流した汗や血も、身体から離れたら汚いゴミと見做される。確かに自分の一部だったのに。

これは古来よりある「穢れ」の感覚に非常に近いものだろう。現代でもこういう心理メカニズムが人間社会でしっかり駆動しているんだなと思った。清潔で道徳的なイメージを重視して、ときに平然と掌返しをするのは、是非はさておきヒトという生き物の極めて自然な振る舞いなのかもしれない。

これは性加害を擁護するわけではなく、見て見ぬふりをしていた無力で無関心な自分たちを責めろというわけでもないのだが、あらゆる領域がクリーンで秩序あるものに整えられていく現代は、ネガティブな部分まで含めて対象を愛せるか?ということが強く問われる時代なのだと思う。愛しやすい綺麗なものだけを選び取り、合理的な選択を重ね続けていった先に、美しいものがあるとは思えない。

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