3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降…

3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降りかかって来る。まぁそれもいい、自分の人生なんだから。

最近の記事

リメイクとリスペクト

カズオ・イシグロ脚本がいいです びっくりするほど 黒澤「生きる」を尊重し 映像、カットワーク、構成見事に トレースしてるのだけど ちゃんと英国の映画になっていた スタッフの皆さんが相当のリスペクトを 持って製作にあたっていたのがわかる それでも セリフや小道具のディテールに 洗練が加味されていて とってもジェントルな映画に仕上がっていた それはおそらく脚本家による成果だと思う 黒澤「生きる」の主人公が焦ったいほどに口下手なのに対し ビル・ナイは言葉少なだがきちんとコミュ

    • 「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

      デンマーク統治下のアイスランドに 宣教師が赴任する そんなストーリーの映画 もうね レイキャビック市内から少し走っただけで この映画の世界が無限に広がるんです だから 時代設定は古いのだけど全然古びていない あまりネタバレになるので 映画みたい人はこの先読まなくていいのだけれど この宣教師がもうダメなやつで 祈りは自分勝手だし 大事な聖書も十字架も手にしない代わりに 最新の写真機材だけは自分で愛しんで離さない 異文化の衝突とあったけど 現地の人からすれば 憧れるような

      • またひとつ歳を重ねた

        朝早くにLINEから通知 旧友からの誕生日を祝うスタンプ つるむでもない 毎日会話するでもない 40年以上前に同じ時を過ごしてきた友だ 覚えてきてくれたこと そして 相手の誕生日が思い出せない自分 少し恥ずかしい たわいもない会話とスタンプの応酬をして 朝の時間が過ぎた 友はこれから会社に行くのであろう 程なく航空会社から誕生日を祝うメールが来た そう この機会に友のすむ街まで 行ってみようか 顔を合わせて ずいぶんと過去になってしまった時間を 取り戻すのもいいかもし

        • なくしたひざ掛け

          祖母のために 孫娘が手編みしたひざ掛けが 今回の旅行土産 プレゼントとして贈ったものを 使わずに仕舞い込む癖のある母は 家族にとって贈りがいのない人 孫娘もそのことをよくわかっていて 遠い国の住民になってからも 何か邪魔にならないもの すぐ使ってなくなってしまうものを 時折国際郵便に乗せてきた 車椅子生活になり 多分ひざ掛けなら 目に入るものだし、寒い時期は 重宝するだろう 娘のところに滞在した五日間の間に 彼女が時を見て編み針を動かしていた 最終日に仕上がったものは

        リメイクとリスペクト

          知らない街

          最近あえて距離を空けているのだが その分 母の様子がわからない インターホンに対応しようと思って 全然違うスイッチを何度も押すことがあった 認知機能の衰えか それも仕方ない 家で一人こもっているようなものだ 刺激がなさすぎる 一人で外出することができず ヘルパーさんたちが 外部情報の伝い手 あとはテレビ そんな老人もこの国にはたくさんいるだろうし もう少ししたら自分だってそうなる可能性がある その時までに 知らない街の知らない風景がたくさん載った フォトブックをたく

          雲の上

          地政学的に 心穏やかでない地域を 飛んでいる でも 目線をまさに変えて 朝日に照らされた大地を見てみると こんなにも美しい 人の手で蹂躙されていない 無垢の姿を見ることができる 領地だとか 人種だとか宗教だとか 地球はそんなことまるっきり気にしてはいない

          今そこにあるか

          バンクシー作品が美術館に わざわざ本来描かれた場所に行かずとも 目の当たりにできるのはありがたい がしかし これでいいのか 周囲の建物、風景、空気と共にあってこそ 作者の意図が伝わるはず youtubeを見ていると すごいスキルを持ったアーティストたちが その腕を披露している 技術だけでは本当の意味で 人の心を動かせない 強いメッセージ 誰でもないオリジナリティ その未到の地に一番早く辿り着いたものだけが 本当の意味でアーティストなんだろう

          印象派

          色を抑えた分 コントラストが映える うなじの白さ 壁に残る影 扉の輝き 木の質感が滲む ドラマチックな光景ではないが なぜか心にひっかかる それが印象派 出口のミュージアムショップで 物色してみたが 絵画の質感を反復できるものが 一つもなかった 手ぶらで後にする 充足感があればそれでいい

          暖炉に火を焚べる

          暖炉は憧れ 知人宅でそれを見つけると 真っ先にその前を陣取り、ほぼ動かない 切り揃えられた薪の山から 数本をそばに置き 主人の許しが出るのを待っている 扉を開く 熱の塊がまっすぐ向かってくる その中へ手にした薪を焚べる 焚べると書いたが 平成以降の人に伝わるだろうか 投げ入れるのではない 放り込むのとも違う 火の神の饗宴に そっと貢物を捧げる行為が近いのではないか 炎の形は千変万化 みていて飽きない やがて暖炉の上に小さな鍋が置かれ 程なく美味しい匂いが溢れてくる

          暖炉に火を焚べる

          年が明けた

          なんだろう 元旦からの大地震、次の日の航空機事故 どうにも定まらない心 母の介護も三年目が終わろうとしている 新年三日目は何も起こらないだろうと思っていたら 母が鼻血を出してヘルパーを呼んでいた すごい年になりそうです 一方で働き方改革 これまで普通に開いていたスーパーも 軒並み3日までお休み 年賀状を届ける郵便局の配達も1日にきて 次がなかなか来ない 辰年だそうです さらに風の時代に入ったと言われています 今までの普通を吹き飛ばしていく2024年 心して臨まないといけ

          半分明るく 半分暗い

          馴染みのお店のマスターが代替わりして数年後 そのマスターが逝去された 店では偲ぶ会が催され 弟子たちが何人も集まった もちろん常連客も献花に訪れる どこか同窓会のような 湿っぽさはどこにもなく ただ普段ではない寂しさがそこかしこに 一人の女性がポツネンと 誰だろうと思ったらマスターの娘さんだった 少し話をしていたらわかったこと アイスクリーム好きだということ 苦虫を噛み潰したような顔で家族に甘える仕草 営業スマイルしか見ていないものにとって 意外なことばかり 物事には

          半分明るく 半分暗い

          平和という風船を

          風船とは 手を離すとすぐに届かない場所に行ってしまうもの 風船とは 小さな針先ですら壊れてしまうもの 風船とは 身近にありそうで実はどの引き出しにも入っていないもの きっと施政者という人たちは 風船の紐を手放した時のあの記憶を失った人のこと きっと 風船のあったことを忘れ萎んでしまった姿を見ようとしない人のこと きっと 風船を手渡した時に見せる子供の笑顔の存在を知らない人のこと ただただ バンクシーの前で立ちすくむ

          平和という風船を

          掃除機とモップ

          一人で過ごすから大丈夫と 母がゴネてから2ヶ月経つ 昭和一桁はしぶとい 周りの人はしばらくほっときな というのだけれど 気にならないわけはない 今日はお坊さんがくる日 久しぶりに掃除機かけて 仏間を整えておかないといけない 仏壇を片付けて 坊さん用の座布団敷いて 掃除機を念入りに 廊下をかけていたら 背後に気配 母が車椅子でフローリングワイパーを かけていた 正直邪魔なんですけど ここに及んで悪態が喉の先まで出かかる いや、そこは 手伝ってくれてありがとう でしょう

          掃除機とモップ

          海外への旅まであと70日

          家族が住む北の国へ 重い腰を上げて どっさりお土産詰め込んで 会いにいこうと決めました 母は家で 一人で過ごすようです ショートステイは相変わらず拒否 すでに50日ほど 手を出さずに外部の人の介助だけで 過ごしてきたので 大丈夫だろうと 心配ではあるけれど これも互いの試練と考えて 航空会社のサイトから 高いチケットをポチッとしました

          海外への旅まであと70日

          終身保険

          思うところがあって 満期になった終身保険を放置してたのだけど それを生前解約することにした 死亡時に受け取れる額の半分強しか 手に入らないのだけど そもそも 自分がこの世からいなくなってから 誰かに託す費用としてかけていた保険だけど これから保険会社に電話してみます 残された人生があと何年何十年続くのか わからないけれど これまで我慢してたこと 後回しにしていたことを この機会にやっても バチが当たらないのではないか いや バチが当たったとしても やるべきじゃないのか

          心のブレ

          満月の夜 割と簡単に月の写真が撮れそうなものだが なぜかブレてしまった 今日はあえて母の顔を見ていない 毎日生存確認をする必要はないのだが 気になること半分 少し面倒な気分半分 その心のブレが収まらない 母のところに行けば行ったで 花の水換え 掃除 ゴミ出し 気になり出したらキリがない だから行かないほうが気持ちが楽だったりする そしてここでも心がブレる