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さっちゃんがやってきた雨の日「はんぶんこの日々」

本でひととひとをつなぐ私設図書館「はんぶんこ」は、「あなたにとって一番の本」というコンセプトで寄贈された本が集まった私設図書館。ブックコミュニケーター・学校司書のますみさんが、おうちをひらいています。

こんにちは。「はんぶんこ」記録係のしのです。お客さんと一緒におしゃべりを楽しみながら、起きた出来事を記録しています。「はんぶんこ」で交わされたお話と雰囲気をあなたにおすそわけ。本日は、5月19日にやってきた、ひとりのお客さんのお話を。

「相馬幸知」さん 笑顔が素敵なおねえさん

相馬幸知さん、通称、さっちゃん。千葉県の印西市から電車に乗ってやってきてくれました。この日は朝から雨が降っている日でした。パタパタ、雨粒が窓ガラスをたたく音。

部屋の中まで、雨音が聴こえてくる

「コーヒー、甘いのと甘くないのどっちがいい?」
「私はブラックが好きなので、甘くないのがいいです」

あたたかいカフェラテに、やさしいシフォンケーキ。ほおばりながら、おしゃべりに花が咲く。

「はんぶんこ」名物の米粉シフォンケーキとますみさんのコーヒー

「いちばんの本を選んで」という「はんぶんこ」のコンセプトから、「一番って難しいよね」という話になり、なぜか「全米が泣いた」って最近聞かないね、という話で盛り上がる。そこから最近観た映画の話になって、「面白かったよ」とさっちゃんが教えてくれたのは『ニューヨーク公共図書館』というドキュメンタリー映画。

さっちゃん「図書館は本があるだけの場所じゃなく、知恵を得る場所なんだよね。だから、ニューヨーク公共図書館は音楽とか文化とかのコンテンツもすごく多いの。日本ではパブリックは税金って考え方が強いけど、アメリカは一般や企業の寄付が半分、行政のお金半分だから。これはみんなのものだから、市民もお金払いなさいと寄付を募ったりね。図書館は、公共や公益を体現してるんだよね。」

ますみさん「『闘う図書館 ─アメリカのライブラリアンシップ(筑摩書房)』って本を読んだの。アメリカで司書として働く豊田 恭子さんという方が書いた本で、政治の都合のいいようにされてはいけないのが図書館だって言ってて。日本も図書館への予算がどんどん減ってる。もっと盛り上げて、残すものは残していったらいいと書かれてるんだ。日本の図書館って市民にアプローチする機会が少なくて、貸し借り以上の関係を構築できてない。私は学校司書なんだけど、学校図書館はアプローチする可能性が残っていると思うんだよね。『これがいいよ』って声がかけられるのかなって」

NPOの中間支援のお仕事をしているさっちゃんは、図書館司書のますみさんと「公共」についての関心が重なる。そこから話は、さっちゃんのお仕事の話へ。さっちゃんは、区の公共施設施設で、地域で活動する団体の相談に乗ったり、団体同士をコーディネートしたりしている。

さっちゃん「うちのミッションは、団体と団体や企業や地域の町会などをつなぐこと。そうすると担い手が増えて訴求効果も広がるから課題解決につながる。そのために事業相談したりね。いま『メタファシリテーション』って資格を勉強しているの。途上国支援のNGOの現場で生まれた手法なんだけど、支援するときに当事者が自分で課題を見つけて取り組んでいくためのヒアリング技術なの」

当事者が自分で課題を見つけていく聞き方。そんな聞き方ができればいいかもしれないけれど、それっていったいどうやって実現するのだろう。

びっしり書かれた「メタファシリテーション」の勉強ノート

さっちゃん「事実のみを聞くの。現実って、事実と感情と考えで構成されてる。事実から考えや感情が生まれてくるから、事実を思い出すだけで、本来やりたかったことも一緒に思い出すから、自分で解決策を見つけていくことができるんだよね。相手の自尊感情も大切にしながら、事実で答えられることを聞いて課題の整理を手伝ってあげる感じ」

困っているときって、事実と感情がこんがらがって現実が見えなくなっちゃう。混乱を自分で解きほぐせればいいけれど、難しい。そんなときに事実を聞いてくれる人がいたらいいだろうな。人はひとりじゃ自分のことがわからない。二人のおしゃべりを聞きながら、人と話すことは大切だよねと、あらためて思う。

ゲストのみんながコメントを書いたノートをみる。「よかったらさっちゃんも書いていって!」

ゆるやかにおしゃべりは続いていく。お互いの仕事の悩みから、YA(ヤングアダルト)の本は、今の世相を反映した内容になっているというますみさんのお話。「それイベントにしたら面白いんじゃない?」とフットワークの軽いさっちゃん。二人でイベントが開催されるかもしれない。

ふと外を見ると、あんなにも窓ガラスを鳴らしていた雨がいつの間にかやんでいる。ますみさんのお子さんも学校から帰ってきて、そろそろいい時間。

二人の会話を聞いていて思う。ここもやっぱり公共なんだよね。ますみさんという個人がこういう場を作りたいと思って、本という好きなものを介して場をひらいていく。そして、そこにさっちゃんという人がやってくる。人がやってくることによって、場が生まれる。そしてひととき会話をして帰ってゆく。

今日もいい日でした。さっちゃん、遊びにきてくれてどうもありがとう。またお話にきてくださいね。

さっちゃんの一冊。

はんぶんこに「いちばん」の本を寄贈してくれたさっちゃん。本の紹介コメントをご紹介します。「はんぶんこ」に来て読んでほしいので、タイトルは秘密。どんな本か想像してみて。

「ある女性の人生を追っていく本なの。思春期に友達と小さなことで喧嘩したり、仲良くなかった友人と結婚後に急に連絡を取り合ったり。私は転勤族で色んな所に知り合いがいる一方、人間関係が3、4年に一回ガラッと変わるのがコンプレックスだったんだよね。でも、この本を読んで、人生ってそんなもんだなって。流れに身を任せていれば、繋がるとこでは繋がるし、離れるときは離れる。人間関係のバイブルなんです。」

さっちゃんの「一番の本」はどんな本でしょうか?

さっちゃんの本も「はんぶんこ」の本棚にございます。ぜひ遊びにきてみてくださいな。貸し出しもできます。あなたにとって「いちばんの本」の寄贈もお待ちしております。

本で人と人がつながる文庫(私設図書館)「はんぶんこ」

https://hanbunco.jimdosite.com/

「はんぶんこ」は、お客さんが来た日に開く図書館です。開館日はtwitterにてご確認のうえ、いらっしゃる前にご連絡をお願いいたします。

https://twitter.com/hanbuncolibrary


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