Scarlet A

年の瀬も瀬にくると、何に時間を割くべきか、
まるでわからなくなります。
なので私は、過ぎていく年に思いを馳せて、
お風呂に浮かんでみるなどしています。
今日も天井は暗いです。
いったい一年でどれだけ風呂に
浸かっているのでしょう、この人間。
来年は恨めしい末端冷え性が
少しでも改善することを願うばかりです。

今年を「激動」という言葉で表すのは、
いささか安直でしょうか。
あるいは凡庸でしょうか。
できればその中間あたりで、
「仕合わせ」であったと言いたいのですが。

一、
夢がひとつ、叶いました。
まだ入り口に半歩、
足を踏み入れたところですが、
名刺に刻まれた7文字の肩書は、
人生で最も心を躍らせる外来語になりました。
来年は2歩、3歩と前に進めるように。
誰かの人生を1ミリ動かす仕事ができるように。

ニ、
いろんな人と住みました。
映画のような生活も、
終わってみれば残るのは記憶だけで、
天使が悪魔に見えてきたら、
この世のはじまりなのだと気がつきました。

三、
ルッキズムの奴隷から、自分を解放しました。
昨日会った人から、「完成した」と
表現してもらったけれど、
私は私を「解放した」のです。
消えない印たちは、
死ぬまで私を導いてくれるでしょう。

四、
そして、今年も人に恵まれました。
十二月十六日、焼かれて骨になる手前で
思い出す言葉のひとつをもらいました。
何気ない一言だったけれど、
私に「息をしてもいい」と教えてくれたのです。
鏡を見ることすら出来なかった3年間を、
初めて肯定してあげようと思いました。
よく頑張ったね。

たくさん人を泣かせ、
そして人に泣かされた年でした。
来年はもっとドラマチックに、
もっと色鮮やかに。
静脈のようなバスルームから愛を込めて。
そろそろのぼせてきたので、
2022年を迎えにいこうと思います。
皆さま良いお年を。

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