ガラスの墓標

手ぶらの0時。
覚えたはずの、死にたい夜の超え方。
行き先も告げず、彼女は旅に出てしまった。
そっちは今ごろ日の出だろうか。

私はまた置いていかれた。
希望の朝を迎えるには、
決定的に何かが足りなかったようだ。
飲もうとした麦茶、そっと溢す。

途方に暮れて、夜に身を投げ出してみる。
東京。
それはそれで懐かしい心地よさを感じた。
ああ、元来私がいるべき場所はこちらなのだ。
もう夏ではない夜風が教えてくれる。

最後に見えた景色。
逆さに吊るされた新宿の街並みは、
さながらガラスの墓標であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?