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鉄鋼材料の内部組織を覗いてみる

今回は金属材料の中から鉄鋼材料(炭素鋼)の内部構造に迫ります。顕微鏡で見るような微細な世界ですが、その構造を熱処理などを通して制御することで、理想的な金属材料を作る技術が今でも使われています。

金以外の金属は純金属で存在する例は少ないです。多くの元素が混合した状態で使われます。よく言葉としても使われる「鉄鋼」とは、純鉄に比べて機械的特性や化学的特性などを高めた鉄合金を指します。

金属材料の組織変化

金属材料は「熱処理」を施すことで、機械的な性質や化学的な性質、電気・磁気的な性質などが変化することが知られています。例えば、炭素を含んだ鉄鋼材料(炭素鋼)では、熱処理を通して引張強度を意図的に向上させることが可能です。

これは「熱処理」を通して鉄鋼材料の内部組織(ミクロ組織)が大きく変化することに由来します。鉄鋼材料の内部組織の変化をもたらす機構が「相変態」です。

化学組成の決定や熱処理によって内部組織を制御し、求める特性を有する鉄鋼材料を実現するためには、相変態の原理に対する理解が不可欠なのです。 

炭素を含んだ鉄鋼材料(炭素鋼)の温度に対する組織変化は、定性的に観察されており、次のような流れで変化します。

鉄鋼材料の組織構成の基になる結晶構造は、高温相の面心立方構造に相当するオーステナイト、低温相の体心立方構造に相当するフェライト、鉄と炭素の化合物である斜方晶構造に相当するセメンタイトがあります。

鉄鋼材料(炭素鋼)の巨視的な組織構成は結晶構造の集合で決まります。フェライトや焼入れ処理時に生じるマルテンサイト、パーライト、ベイナイトの4種類が主に挙げられます。

結晶構造と組織構成を結びつける相変態は拡散変態、無拡散変態、焼き戻し析出の3種類が知られています。高温相のオーステナイトから冷却する方法が変態形式を主に決めています。

鉄鋼材料の各組織の特徴

先ほど挙げた4種類の組織について、それぞれの特徴を説明します。これらの合成により、鉄鋼材料の物理的な性質が決まります。

フェライト:
純鉄に微量の炭素を固溶したものです。体心立方構造であり、軟らかく延性に優れます。磁気的な性質としては強磁性体です。顕微鏡で見るとオーステナイトと同様に多角形状の集合体であることが分かります。また、構造的に腐食されにくい組織で知られています。

マルテンサイト:
フェライトと同様に炭素を固溶したもので、オーステナイトを急冷したときに得られる組織です。結晶構造は体心立方構造ですが、組織的には麻の葉状または針状をしています。鉄鋼材料の熱処理の内で最も硬くもろい組織です。磁気的な性質としては強磁性です。

パーライト:
フェライトとセメンタイトが極薄の積層で交互に並んだものです。パーライトはオーステナイトの結晶構造から緩やかに冷却することで得られる組織で、冷却速度の相違によって層間隔が異なります。一般的に、冷却速度が早いほど積層構造は細かくなります。

ベイナイト:
オーステナイトを焼入れする際に等温処理することで得られる組織です。処理温度が高い場合は黒色の羽毛状の組織が、低い場合は針状の組織が生成されます。通常の焼入れ・焼戻しをした鉄鋼材料に比べると、粘性に富んでいます。

以上の4種類の組織構成を理解することで、自在に用途に適した性質を有する鉄鋼材料を作ることができるということです。比較的に古典的な方法ではありますが、重要な知識と言えます。

おわりに

今回は鉄鋼材料(炭素鋼)の内部組織について見ていきました。目視できない世界なのでイメージが頼りになりますが、それはそれで面白いです。

純粋な金属から合金化することで、さらに良い性質を有するものを作り、実世界で役立てていくのです。このような取り組みは今後も続いていくことでしょう。私も改めて勉強になりました。

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