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『博士のイヴ』に寄せて。

 『博士のイヴ』という名のクリスマスソングを公開することが近年の念願であったわけですが、数日前になんとかお披露目することができ、今は胸をなでおろしているところですが、みなさんどうですか。

経緯

 この曲の原型は、今から実に12年前―当時同胞とやっていた企画「東京国盗り歌合戦」にて、2011年のクリスマスイヴに、東京は有楽町のカラオケ店の一室で生まれた。

 企画の詳細は上の記事を読んでもらうとして、要はカラオケルームにてその場のノリで作ったのだが、そのわりに気に入る曲となり、いつかちゃんと音源化したいと思い続けて早十余年。

 これが「クリスマスソング」であるという点が、リメイクの遅れた主な原因だ。遅くとも12月24日までには公開しなくてはならないが、計画性とは無縁の創作活動を営んでいる俺にとって、それはなかなか難しかった。
 2019年、そして2022年にもリメイクに挑戦しているが、結局期限までに納得のいくものが作れず、結果、中途半端なデモを悔しまぎれに公開するというていたらく。
※ちなみに前者は現在非公開、後者は以下の投稿より。

 ところで「M3」という同人音楽の即売会が年に2回、春と秋に東京で開催されるのだが、10月の終わりに参加するも今回は新譜が用意できず、ここでも苦い想いをした。
 その自省と、イベント後に高揚するモチベーションを利用し、11月に入ってすぐ、この曲の完成に向けての作業に着手した。
 それが功を奏し、なんとか今年、クリスマス前に公開することができた。

構成

 「東京国盗り歌合戦」での曲作りは、同胞の寿司(ピンキッキ)が作詞、俺が作曲を担当している。
 歌詞がワンフレーズ思い浮かぶと共有され、俺がメロディーを作っているあいだに、ヤツは次の言葉を考える。
 この曲もそんな風にして生まれた。

 寿司の書く詞の雰囲気は非常に独特だが、時にニッチな普遍性を浮き彫りにすることがあるように俺は感じていて、そこが気に入っている。
 「孤独な中年学者のクリスマスイヴの過ごし方」という、一見地味で、やもするともの悲しくなりすぎそうなモチーフだが、ヤツの詞からは比較的軽やかな印象を受ける。
 リメイクでフルコーラスにするにあたり、俺が詞を再構築したことで少し「重さ」が増した気がするし笑、つまり同じモチーフでも最初から俺が書いていたら、ただひたすら切ないだけの曲になった可能性が高い。
 まあもはやどっちの手柄とかいう間柄でもないが、この曲におけるヤツの寄与は手放しに認めざるを得ない。

 2011年版の歌詞は、幼少期~少年期~青年期と、主人公の過去を遡上しサビで現在に至るように、時系列がグラデーションで描かれる。
 ただこれだと過去のウェイトが大きすぎる印象だったので、今回のリメイクでは過去と現在を、視覚表現でいう場面転換的に切り替えるカタチにした。
 ちなみに俺が付け足したフレーズで個人的に気に入ってるのが1番Aメロ最後の「明かり点けて、部屋の外へ」。

 曲の構成は「Aメロ→Bメロ→サビ」を同じように2回繰り返して終わる。
 2019年版ではCメロを作り、それを生かすかどうか悩んだが、結局蛇足として処理した。

MV

 MV(ミュージックビデオ)は静止画でもいいかなと思っていたが、作業を始めるとやはり欲が出てしまい、今回初めてAdobe Firefly=AIで生成した画像を使用した。
 以下の記事にも、この曲のMVについての逡巡を記録してあるので、参考までに。

 AIイラストの是非についての議論に興味はなく、ただ単に「ちょっと気持ち悪い」っていう感覚があり、実際今回自分で生成した画像にもその違和感は拭えなかった。

 しかしそれならばいっそ「ぼかし」て使えばいいのでは?と試してみたところ違和感も軽減されたし、歌詞テキストも浮き上がって見えるし、結果的によかった。

 Adobe Fireflyについては、今後もうちょい掘り下げて使ってみたい。
 今回特に苦労したのが、1番Bメロで使う「いつもの店で博士が夕飯を食べる」シーン。
 俺のイメージとしては、大学(博士の勤め先)の近くにある、古くからやってる蕎麦屋とか定食屋なのだが、Fireflyに「定食屋」と入れてもどこか瀟洒なイタリアンレストランみたいなのしか出てこない。
 「日本の定食屋」と指示を出すと、なんというか―必要以上に「和」な感じというか…。「小江戸」的、「歴史村」的な、ちょっとテーマパーク感のある「日本」が出てきてしまうんだよね。
 採用した以下の画像もちょっとそんなきらいがあるが、やむをえず。

手前の雰囲気は良いが、提灯が多すぎる=奥行が広すぎる。

 目線を変え、店の雰囲気ではなく、食べている料理で店を連想させようと「木の机の上に置かれた蕎麦」という指示を出したところ、あの、茹でる前の、乾麺の束がふたつほど表示されたのが、ちょっと面白かった。
 失敗画像でもなんかのネタにはなるかもしれんから、今度からちゃんと保存しておこう。

 動画編集は、初めてAdobe Premier Proで行った。
 使い方を覚え途中のソフトだけど、まあ習うより慣れろはあるよね。

謝辞

 今日(12/29)で公開からちょうど一週間。
 おかげさまで、多くの視聴と反応をいただきました。
 貴重な時間を、自分の作品に割いてもらえていること。非常に尊いことと、改めて思います。
 どうもありがとうございます。

 それではさようなり。

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