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栗原良彰「大きい人」

東京有数のビジネスエリア大手町・丸の内・有楽町地区「大丸有(だいまるゆう)」を舞台にSDGs達成に向けた多様な活動を推進する「大丸有 SDGs」プロジェクト。そして都内のさまざまな場所で作品を展開する民間の国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」。2つの関連企画「⼤丸有SDGs ACT5×東京ビエンナーレ2020/2021」開催中の丸の内を訪れた。

3名のアーティストによる展示のうち、丸ビルの外に設置された栗原良彰による⾼さ3メートルの彫刻作品《大きい人》に目がとまった。人の上半身のような曲線的なフォルムのなかに「クーリングパッド」という樹脂コーティングの紙がつめこまれている。鑑賞者は作品の「顔」に「打ち水」の要領で水をかける。すると気化熱で冷たくなった空気が彫刻のなかの送風機で外に送り出されて「クールスポット」を作り出すという作品だ。

公開初日の8月21日、東京は快晴、気温は35℃超え。うだる暑さのなか、私も柄杓と水の入ったバケツを借りて水かけ体験に参加してみた。水をかけると扇風機の「強」くらいの風がひんやりと感じられ快適だった。

私のあとにも代わる代わる人が訪れて水をかけていた。ひとりが水をかけて一緒にいる人と涼をわかちあう。「⼤丸有SDGs」の5つのアクションのうち、この「ACT5」は「コミュニケーション」がテーマだ。暑い都心にあらわれた「クールスポット」に人が集まりコミュニティの場になっていた。

栗原は作品に水をかける姿がだんだん植物に水を与えているにように見えてきたという。そこから彼は、つくったのは自分だが丸の内の一角に置かれた《大きい人》は通りすがりのみんなに育ててもらっているのだと話す。「なので、すでに私の作品ではないですね」(栗原)。

誰とも知らない人々の行き交う街角に突如あらわれた《大きい人》は水をかけられ育てられることで、涼しい風を送るとともにその場に立ち止まった人と人とのコミュニケーションを育てるのだ。

渡抜貴史


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